救急外来での蕁麻疹対応「点滴する?しない?」

論文関係

今回は初期研修医の先生より率直な疑問をぶつけられたので、それについて考えていこうと思います。

それは「蕁麻疹に点滴って必要ですか?」という問いかけです。

救急外来においては頻度の高い蕁麻疹で、患者さんも辛いので楽にしてあげたい気持ちに駆られますね。

では、どうすべきなのでしょうか。

実を言うと今まで普通の蕁麻疹に自分は点滴や血液検査したことがありません。

それは点滴処置に伴う痛みや病院滞在時間の延長が、点滴治療の効果に見合わないと考えるからです。

アナフィラキシーと血管浮腫っぽくさえなければ、内服の抗ヒスタミン薬を処方して帰宅にしてました。

本当にそれで合ってるのか聞かれてみると根拠はすぐに示せなかったので少しまとめておきます。

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蕁麻疹の病変は、境界がはっきりした隆起した紅斑で、中央部が蒼白になることが多い。

多くは強い掻痒感を伴う。

個々の病変は一過性で、通常は数分から数時間かけ拡大し、24 時間以内に消える。

生理学的な機序は肥満細胞や好塩基球により、炎症性メディエーター(ヒスタミンなど)が放出されることによる。

原因は感染症や薬剤、虫、ラテックス、食品などのアレルゲンによるIgEを経由したアレルギー反応や、一部の薬剤はIgEを介さず直接肥満細胞を刺激することで発症する。

確認すべきことは以下が大事。

①アナフィラキシーとしての対応が必要か

これは皆やってそうですね。

細かいですがアナフィラキシーの治療はアドレナリンです。

アナフィラキシーの初期治療に対しては抗ヒスタミンの投与は推奨しない風潮になってきています。

理由は血圧低下や傾眠がショック兆候なのか薬剤性なのか分かりにくくするからです。

Emergency treatment of anaphylaxis Guidelines for healthcare providers(Resuscitation Council UK’s Anaphylaxis Working Group developed the 2021)

②原因因子の確認

先行感染、アレルゲンの病歴(旅行も含む)などの聴取。

③その他の全身症状から鑑別を深める

例えば、、、

鱗屑および乾燥肌→アトピー

水疱形成→水疱性類天疱瘡や多形紅斑の可能性

色素沈着や紫斑形成→血管炎など

といった具合。

血管炎が考慮されない新規発症の蕁麻疹は検査適応ないとされている。

Br J Dermatol. 2007 Dec;157(6):1116-23.

Allergy. 2009 Oct;64(10):1417-1426.

治療は抗ヒスタミン、副作用が強いので可能なら第一世代は避けた方が無難。

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と言うことで、やはり世界的にも検査の適応は無いという風潮でした。

ですが自分の思考過程は少し違います。

どちらかというとHospitalist アレルギーの「血管性浮腫」というコラムにまとまっているのが近いです。

「普通ではない」蕁麻疹って、やっぱり気が付きますし、紫斑伴う人に抗ヒスタミンは出さないと思うので、あえて意識はしていません。

アナフィラキシーか考えてから、多くはメディエーターがヒスタミンなので抗ヒスタミンを入れます。

皮疹の分布がおかしい時には、ブラジキニンなど違うメディエーターの関与を考えて補体関連項目(C4,C3,CH50,C1インアクチベータ活性など)を提出するか検討しています。

少なくとも蕁麻疹=点滴治療(ガスポラ)ってやると、それだけで余計な時間かかってER混雑に繋がります。

看護師さんの業務もちりつもで増えます。

しかも患者さんも無駄に点滴刺されて痛いし時間かかるし、待合でコロナ感染してる人からうつされたりしたら目も当てられませんね。。。

検査要らなそうな人はシンプルに抗ヒスタミン処方でも大丈夫そう、ってお話でした。

注意点は「普通の蕁麻疹」だったら、ですね。

全身状態が悪く皮疹が出ていることを「蕁麻疹」といって来院する患者さんもいるので、その場合にはきちんとした治療が必要です。

その辺りを評価して点滴まで入れるかどうか考えるのが、救急医の腕の見せ所かと思っています。

本日はこの辺で、ではでは。

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