今回はコロナワクチンに対する臨床試験でのプラセボ群における有害事象の頻度についてのシステマティックレビューおよびメタ解析です。
プラセボってことは偽の薬なのに、なぜ副作用が出るのでしょうか。
そこについて踏み込んで考えてる、意義深い一本です。
Frequency of Adverse Events in the Placebo Arms of COVID-19 Vaccine Trials: A Systematic Review and Meta-analysis
Julia W Haas, Friederike L Bender, Sarah Ballou, et al.
JAMA Netw Open. 2022 Jan 4;5(1):e2143955.
PMID: 35040967
《本論文の一言まとめ》
コロナワクチンは恩恵が大きいが、副作用報告も多い。
しかし、その多くは有害事象に伴う不安によるノセボ効果のためかもしれない。
起こりうる有害事象を正しく伝えるだけでなく、それがノセボ群でも頻回に起こっていることまで伝える姿勢が重要である。
COVID-19パンデミックにより世界中で500万人以上が死亡し、身体・精神・経済的に苦しむ人が少なくない。
その中でワクチンが早急に作成され、新規感染者数を減らすことに成功している。
一方で国際的には約20%もの人がワクチン接種を拒否している。
そのワクチン拒否の理由としては有害事象が最も大きい。
だが臨床試験において健常者でも有害事象が出現する。
これをノセボ効果と呼び、元々の症状や不安、有害事象への予期から起こると考えられる。
正しく有害事象の可能性を提示することで、有害事象に関連した不安やノセボ効果を減らすことができるだろう。
今回16歳以上を対象とした英語文献で、注射後7日以内の有害事象についてワクチンとプラセボで別々に比較した研究を集めた。
12本の文献、45,380人の参加者が解析された。
初回投与によりプラセボ群の35.2%が全身副作用を、16.2%が局所症状を訴えた。
ワクチン群では46.3%が全身副作用を、66.7%が局所症状を訴えた。
2回目の投与ではプラセボ群の31.8%が全身副作用を、11.8%が局所症状を訴え、初回と比較し優位に減っていた。
しかしワクチン群では2回目で61.4%が全身副作用を、72.8%が局所症状を訴え、こちらは初回と比較し優位に増加していた。
プラセボ群では初回に比べ二回目で有害事象の頻度は減ったが、ワクチン群では逆であった。
筆者は仮説として二回目の方がより強い免疫応答が起こり有害事象が増えた可能性や彼らが二回目の方が有害事象が少ないと期待していた可能性を挙げた。
公衆衛生の視点から考えると、今回ノセボ群で見られた症状は頭痛や倦怠感などが多く、いずれもワクチンのリーフレットに記載されている内容である。
このような情報が有害事象に伴う不安や予想などのノセボ効果に繋がるかもしれないという知見もある。
そのため現在のリーフレットやメディアを通じたワクチン情報は、ノセボ効果を促進しているかもしれない。
ただ情報を秘匿することは倫理的に誤っている。
正しいのは起こりうる有害事象を伝えるだけでなく、それがノセボ群でも心配や不安を契機に起こっていると言うことだろう。
いかがだったでしょうか。
特にコロナワクチンは世の中が不安定であったこともあり、社会サービスが不足していたようにも感じます。
社会との繋がりが乏しく、スピード感を持って作られたワクチンが、皮肉なことに不安感をより招く要素もあったのかもしれませんね。
日常臨床でも「喘息発作と言われた」「薬Aにはアレルギーがあるかも」とか、不安を訴えてくる方はいます。
もちろん注意しつつそれらを避けるのが基本ですが、時折エピソードを掘り下げて聞いてみると明らかに違和感を覚える時もあります。
結局、違うのにアレルギー認定されていると、後で不利益を被るのは患者さん自身になりますよね。
なので評価のため必要な時には、自分はお話を聞いた上で「おそらく発作は出ないと思います」と言い切ってしまいます。
もちろんゼロでは無いですが、現状は薬を使って評価するしかありませんともお伝えすると多くの方は理解してくれますね。
そしてそれで実際にアレルギー反応を起こしたことは一度もありません。
これこそ自分はノセボ効果だと思っていて、「アレルギーかも」と思っているとそれらしい症状が出るんですよね。
はっきり「無い」と言われていると、みなさんケロッと検査を終えちゃいます。
もちろん話を聞いて本物っぽい人もいるので、その時はなるべく投薬しないよう頑張りますけれども。
と言うことで、日常臨床においても考えさせられる一本でした。
ではでは。
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