Sigh Ventilationの有効性

論文関係

本日はJAMAからの「外傷患者におけるSigh Ventilation」についてのRCT(SiVent)です。

Sigh Ventilationって何?から始まったのですが、興味深い内容でした。

Sigh Ventilation in Patients With Trauma: The SiVent Randomized Clinical Trial

Richard K Albert, Gregory J Jurkovich, John Connett, et al.

JAMA. 2023 Nov 28;330(20):1982-1990.

〈本論文の一言まとめ〉

溜め息の意味であるsigh ventilationで定期的に高圧をかけることで、ARDSリスク因子を有する外傷患者の呼吸器離脱を早めることは無かった。

対象患者の問題や解析方法に意見が分かれそう。


Introduction

多くの患者がほぼ一定の1回換気量(tidal volume:TV)で強制換気を受けている。

ただ多くの研究でTVの大きさに関わらず、次第に肺サーファクタントを変化させ表面張力を増やし、無気肺をきたすことで炎症性サイトカインが放出され人工呼吸器関連肺障害(ventilator-induced lung injury:VILI)をきたすことが報告されている。

特に無気肺形成は鍵になる要素であり、定期的な無気肺の解放と形成(atelectrauma)や無気肺による周囲の肺胞の過伸展(volutrauma)により炎症反応やVILIをきたすと考えられてきた(biotrauma)。

肺サーファクタントは時間の経過とともに失活し、無気肺形成を防ぐために重要となる。最もサーファクタント活性を促す刺激は大きなTVによる機械的な肺胞の伸展刺激である。

そのため60年ほど前にあくびや深呼吸は、肺胞虚脱を防ぐための機能があると考えられた。

これにより人工呼吸器でも定期的な高圧設定により、肺胞虚脱を防ぐ事ができると提唱された。

そこで今回のSigh ventilationにより定期的に高圧をかけることで、通常管理と比較して転帰を改善するのではないかと仮説が立てられた。

Methods

対象患者がアメリカの15の外傷センターで、ARDSリスク因子を有する成人の外傷患者。介入群は通常ケアに加えてSigh ventilationを行なわれ、対照群は通常ケアのみであった。アウトカムは28日後までの人工呼吸器離脱期間(ventilator-free days:VFDs)とした。

サンプルサイズは当初は先行研究より916例と見積もった。

Results

患者は2016年から2022年まで、除外され524例が組み込まれた。なお資金の打ち切りにより、研究は目標サンプルサイズに到達する前に終了となった。

患者背景は以下の通りで、男性が多く、酸素化は良くて半数以上がPFr 300以上。また外傷は6割が頭部外傷、肺挫傷はカルテ記載で組入のため程度は分からないが4割で記録されていた。

プライマリーアウトカムはsigh群で18.4日vs通常群で16.1日(p=0.08)で、有意差なし。

Discussion

プライマリーアウトカムに有意差は無かったが、unadjusted mean differenceは1.9日(p=0.04)で有意差があった。

セカンダリーアウトカムではsigh群で死亡率が低かった(p=0.05)。ICU滞在期間や合併症には差はつかなかった。

Conclusion

ARDS発症リスク因子を有する外傷患者に対してsigh ventilationを用いても、VFDは増加しなかった。


sighとは溜め息の意味です。

今回のsigh ventilationですが、機械によっては呼吸器設定できるようです。

残念ながら自分の施設では無理でした。国内でできるところあるのでしょうか?見た事ないです。

ポイントとしては対象患者で、ARDSリスク因子を有する患者たちに無気肺予防をすることでどれだけ意味があるかという内容でした。

確かに理論的に溜め息やあくびにより肺サーファクタントが分泌され、無気肺予防されるというのは面白いと感じました。

ただ印象としては頭部外傷ばかりで、酸素化も悪くない人たちに無気肺予防しても別に変わらないのでは、、、と思ってしまいます。

むしろ抜管の規定因子はARDSを含む酸素化障害ではなく、単純に意識レベルの問題ではないでしょうか。。。

あと高圧の合併症になり得る気胸を含む胸部外傷についての情報が少なかったですね。

一応、lung contusionは両群で4割いますが、カルテ記載のみなので、どの程度かは不明です。

理論的には有効な患者層はいそうですが、外傷でなく普通にARDS患者の治療として行うべきでは無いかと思いました。

本日は以上になります。

また来週、ではでは。

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