今回はネタ論文を毎年投稿してくれるBMJのクリスマス企画からです。
もう年も明けているのにすみません。。。
筆が遅いもので、お許しください。。。
Bug in a mug: are hospital coffee machines transmitting pathogens?
Sarah Victoria Walker, Alessa Lalinka Boschert, Martina Wolke, et al.
BMJ. 2023 Dec 18:383:p2564.
〈本論文の一言まとめ〉
今回の研究でコーヒーメーカーが感染リスクとは言えないかも。
ただ菌が出ている場合もあり、素手で触ることがほとんどなので注意が必要かもしれない。
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コーヒーは職場でしばしば用意され、作業へ取り組む刺激を与えてくれる。そしてコーヒーメーカーは休憩室や自宅に置かれ、通常は素手で操作されている。
WHOは院内感染の運び手となりうるものを選別することを推奨している。
個人の物品や医師の服装、特にイギリスではMRSAの伝播につながる可能性が指摘されネクタイの着用が禁止された。
では、コーヒーメーカーはどうだろうか?
多剤耐性菌は食器を洗った水などから同定されているが、大抵はキッチンに限られている。
そして医療従事者の手は病原体の運び手となる可能性があり、院内感染のアウトブレイクや院内死亡率の上昇と関連する。
(今のところはスタッフの手をなくすことは出来ないので、手洗いや手袋で対応することで十分とされている。)
一方でコーヒーメーカーに微生物が存在することは既に示されているが、まだ院内感染との関連は研究されていない。
そこでこの研究ではWHOが重要視している”ESCAPE(Enterococcus faecium, Staphylococcus aureus, Klebsiella pneumoniae, Acinetobacter baumannii, Pseudomonas aeruginosa, and Enterobacter species)”に焦点をあてて、医療関連コーヒーメーカーの病原体を調べた。
これらの病原菌は血流感染症やカテーテル感染症のような院内感染の原因菌となりうる脅威である。
(全てでは無いが)多くの治療第一選択となる抗菌薬に対して耐性を示しており、治療が難しいことがある。
2022年10月31日から12月31日かけて、同意の上で25個のコーヒーメーカーを拭った。
17個は大学病院の集中治療部および麻酔科などの部署のもの、残り8個はスタッフの自宅のものを選んだ。全ての機械は最低でも1年は使用されており、事前に特別な清掃は受けていない。また特定の疾患のアウトブレイクは起きていない環境下であった。
機械はいずれも特定の5ヶ所(受け皿、排出孔、ボタン、ウォータータンクの持ち手、ウォータータンクの内側)を拭われていた。
病院検体は72/85本のスワブが陽性になり合計360の菌が、自宅検体からは34/40本のスワブが陽性になり合計135の菌が同定された。
次にこれらの菌を医療関連の病原菌かを検討した。
結果は表の通りで、特に有意な差は無かった。
多くの機械から細菌が同定されたが、それ自体は驚くべきことではないだろう。ただ病院のコーヒーメーカーは3倍も多く菌が常在していた。
興味深いことにcoli, K pneumoniae, P aeruginosaが一株ずつしか培養されなかったが、P aeruginosaは院内から出たものの残り二種は家庭から同定された。これは病院での手指消毒と同様に家庭での指導も必要な可能性を示唆しているかもしれない。
今回の結果よりコーヒーメーカーそのものを禁止する必要はなさそうだろう。ただこの研究により、メーカーを洗浄したり新しく描い直したりという効果もみられたのだった。
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さて、今回もユニークな切り口でしたね。
どこからスワブで拭うかの説明写真に、サンタのぬいぐるみ置いてるのとか完全にふざけてますよね笑
こういう遊び心のある仕事、自分もいつかしてみたいものです。
ただ一方でドキッとするアイデアではあって、確かに病院に置いてある私物って相当汚いですよね。
自宅に変な菌を持ち込んで無いか不安になりました。
今日はこの辺で。
ではでは。
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