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14.原因不明の新たな発熱を伴う重症患者の場合、血液の迅速遺伝子検査を行う場合には血液培養を併用することを提案する。
一部の施設で血液中の細菌を検出するために迅速な遺伝子検査などを開発した。この検査の感度は83%、特異度は96%とされた。結果は3-5時間で得られて、迅速であることが利点。しかし血液培養は感受性を含めた検査が行われるため、依然として必要である。これは抗菌薬の先行投与で偽陰性になる場合でも病原体が明らかにされる場合がある。これは臨床的に役立つ可能性があるが、そうではない面もある。コストもかかるため、今後の知見が待たれる。
15.血液培養を採取する際には異なる解剖学的部位から間隔を開けずに、少なくとも2セット(理想は合計60ml)を採取することを推奨する。
血液培養ボトルは10ml、適切に充填する。結果の解釈を容易にするため、少なくとも2セットを別々の部位からとる必要がある。
発熱したICU患者を対象とした研究集団では、1セットあたり2つの好気性ボトルと1つの嫌気性ボトル(つまり3ボトル)を採取する意見もある。
16.膿尿があり尿路感染症が疑われる発熱しているICU患者の場合、尿道カテーテルを交換し新しく留置したカテーテルから培養を提出することを推奨する。
尿路感染症は尿検査で膿尿(5-10 WBC/hpf)と尿路症状(確認可能な場合)の存在を確認すべきと考えた。無症候性細菌尿は抗菌薬の過剰使用につながる。
17.新たな肺炎の疑い、または上気道症状を伴う場合にはNAATパネルを使用してウイルス病原体を検査することを推奨する。
治療対象を決定し、他者への感染伝播を防ぐために病因を診断することが重要である。ウイルスは細菌と混合感染することもあるため、肺炎が考慮される場合にはウイルス検査も実施する必要がある。ICUで肺炎を引き起こす可能性のあるウイルスは複数あり、インフルエンザ、RSウイルス、アデノウイルス、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)や場合によってはヒトメタニューモウイルス、季節性コロナウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、中東呼吸器症候群コロナウイルスなどがある。
ただこれらが全ての原因を含むわけではなく、検出したウイルスが患者状態に影響を与えているかは分からないことに注意する必要がある。
18.ICUの免疫正常者に対してウイルス病原体(例:ヘルペスウイルス、アデノウイルス)の定期的な血液検査を推奨するには根拠がない。
ICUにおいてこれらのウイルス感染とは関連がないため、ウイルス検査は必要ない。
19.新規の発熱を伴う重症患者については、市中感染の状況に応じてPCRによるSARS-CoV-2検査を推奨する。
院内感染の懸念もあるためいつでもCOVID-19を考慮する必要がある。
20.新たな発熱があり感染のフォーカスが明確でない重症患者において、細菌感染の可能性が低から中程度と考えられる場合ベッドサイドでの臨床評価のみを行うのでなくプロカルシトニン(PCT)を測定することを推奨する。
21.新たな発熱があり感染のフォーカスが明確でない重症患者において、細菌感染の可能性が高度と考えられる場合、細菌感染を除外するためにPCTを測定しないことを推奨する。
22.新たな発熱があり感染のフォーカスが明確でない重症患者において、細菌感染の可能性が低から中程度と考えられる場合ベッドサイドでの臨床評価のみを行うのでなくC反応性タンパク質(CRP)を測定することを推奨する。
23.新たな発熱があり感染のフォーカスが明確でない重症患者において、細菌感染の可能性が高度と考えられる場合、細菌感染を除外するためにCRPを測定しないことを推奨する。
24.新たな発熱があり感染のフォーカスが明確でない重症患者において、細菌感染の可能性が低からと考えられる場合、細菌感染を除外するために血清PCTまたはCRPを測定することを推奨する。
短時間で評価できるPCTやCRPなどのバイオマーカーは培養結果を待つ間の早期診断の補助として使用されてきた。これらのバイオマーカーは臨床評価と組み合わせることで抗菌薬の中止タイミングの指針になり、不必要な抗菌薬暴露を削減できるかもしれない。主要なガイドラインではバイオマーカーをルーチンで使用することを推奨していない。
PCTは甲状腺濾胞傍細胞と肺と神経内分泌腫瘍により産生されるカルシトニンの前駆体ホルモンであり、細菌性の反応とウイルスや非感染性の病因を判別すると考えられている。より最近の研究ではインフルエンザや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含む重篤なウイルス疾患の場合にPCTが上昇する可能性があり、原因微生物の判定にあまり役立たない可能性が示されている。
PCTは細菌暴露後の4時間してから上昇し始め、6-8時間後に最大値となる。血清レベルは感染症の重症度に関連しており、抗生物質による治療で急速に減少する。
CRPは肝臓で合成される急性期タンパク質であり、炎症や感染に反応して上昇する。炎症や感染により12-24時間後に上昇し始め、48時間後に最大値に達する。PCTと異なりCRPは好中球減少、免疫不全、NSAIDsの使用などの影響を受ける可能性がある。
文献的にはどちらかが強く支持されているわけではない。研究にも不均一性があり、PCTやCRPの最適なカットポイントなどには更なる研究が必要である。
中にはPCTベースのアルゴリズムにより、低リスクの呼吸器干感染症患者における抗生物質の使用を安全に減らすことができるという意見もある。
さて、いかがでしたでしょうか。かなりのボリュームで、広く浅くといった内容でしたね。
遺伝子検査は面白いですね。自分も以前に培養陰性の感染性心内膜炎の症例で、遺伝子検査のおかげで原因微生物が同定できたことを経験しました。ちなみに菌はBartonella属でした。培養で生えにくい菌だと特に有効ですね。
血液培養も2×3はたまにやりますが、3×2は自分は初耳でした。確かに大事な好気ボトルを増やすっていうのも良いアイデアですね。
またバイオマーカーの話も頻出ですが、しばしば「CRP(PCT)が高いから」感染が、、、っていう議論になりませんか?
あくまでも臨床所見(喀痰や尿路症状などの臓器特異的症状)と併せて補助的に使うことで、早期に抗菌薬を終了することが一番意義がある使い方です。
今回のガイドラインで記載されている使い方も推奨度は低く、まだcontroversialな一面もあります。
より鋭敏なマーカーや定まった使い方が出ると面白いですね。
本日はこの辺で、ではでは。
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