菌血症の治療期間は7日?それとも14日?(BALANCE trial)

論文関係

今回は菌血症に対する抗菌薬投与期間について、NEJMに発表された7日vs14日で比較したBALANCE trialについてまとめました。

簡単ですがジャーナルクラブ風にまとめてみましたので、ぜひご参照ください。

Antibiotic Treatment for 7 versus 14 Days in Patients with Bloodstream Infections

BALANCE Investigators, for the Canadian Critical Care Trials Group, the Association of Medical Microbiology and Infectious Disease Canada Clinical Research Network, the Australian and New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group, and the Australasian Society for Infectious Diseases Clinical Research Network

N Engl J Med. 2024 Nov 20.

PMID: 39565030

一言まとめ

ICUに入室するような重症の菌血症でも、7日間の治療で14日と比べて非劣性であった。

ほとんどがGNRの尿路感染症なので、一般化には注意が必要そう。

Introduction

今回の論文です。

菌血症は非常に一般的ですが、意外と定まった治療期間は分かっていません。

短期投与は不十分な治療により感染症の再燃や菌の耐性化(菌トレ、などとも呼ばれますね)を引き起こします。

一方で不必要な長期投与(現場はこればっかりです)は、Clostridioides difficile感染症や関係ない菌の耐性化、余計な医療コスト(ここには費用だけでなく看護業務なども含みます)を産む。

過去の研究で治療期間を短縮するものはあるが、菌血症に特化したものは無い。

そこで今回、重症の菌血症患者に絞り7日間で非劣性にならないかを検討した。

PICOはこの通り。

Primary Outcomeを90日後全死亡にしている。

Methods

デザインはこの通り。

ほとんどがカナダ(36施設)なのが特徴。

Inclusion/Exclusionはこの通り。

入院中の血培陽性患者を対象、免疫抑制がある患者などを除外した。

ランダム化や介入は記載の通り。

治療が担当医の裁量になるのはポイントか。

Primary OutcomeとSecondary Outcomeも記載の通り。

サンプルサイズ計算では、今までの非劣性試験では10%としていたところを4%に厳しくしたことが特徴。

解析はper protocol、修正ITT解析、サブグループ解析も行なっている。

Results

36,637人が組み入れられ、23,040人+9,966人が除外となっている。

患者背景としては中央値70歳で男性がやや多い。

ICU入室中は半数ほど。

感染は市中由来で尿路、GNRが最多。

Primary Outcomeでは短期治療群は長期治療群に非劣性(Difference -1.6(95.7% CI:-4.0 to 0.8))であった。

ITT解析、Per-protocol解析、修正ITT解析も施行しているが、それらもいずれも非劣性。

Secondary Outcomeでは28日までの抗菌薬未投与期間は短期治療群で長く(当たり前ですが)、他の項目では非劣性。

Subgroup解析でも多くの項目で非劣性が示されている。

Resultのまとめ。

Discussion

過去の試験と比較して大規模で非劣性マージンも小さく取っている。

今回は半数がICU症例で検討できている。

S.aureusは高頻度の菌血症の原因菌で、耐性菌についても評価は不十分な点はこの研究の限界。

内的妥当性はあまりに選択バイアスが大きすぎる印象。

ICU症例とは言っても少しでも懸念がある場合には、担当医判断で除外されてしまっている。

外的妥当性は患者層は本邦に近いが、アジア人は少なそう。

呼吸器使用も少なく、SOFAも低めでそのまま外挿はできないだろう。

今回の研究は今まで対象にされていなかった重症患者を含む菌血症への短期治療の提案で、非常に意義深い。

しかし選択バイアスも大きく、懸念の少ない尿路感染症が集まった印象。

またSource controlを要した症例も多く、相対的に抗菌薬の必要性が下がる病態が多かった可能性はある。

今後の短期間投与の一つの基準になるが、まだ一般化するほどでは無いだろう。

と言った具合に、今回の研究を自分は解釈しました。

コメント頂けると幸いです。

本日はこの辺で、ではでは。

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