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2050年の集中治療ってどうなってる? | Dr.Azukii's Blog

2050年の集中治療ってどうなってる?

論文関係

本日はCritical Careより2050年の集中治療についてです。

未来(25年後)のICUはどのように変わっているのでしょうか。

筆者が2050年に夢から覚めるところから始まります。

普段あまり無い詩的な出だしですね。

そこから30年前の2020年のICUに想いを馳せている訳です。

Reflections of an intensivist in 2050: three decades of clinical practice, research, and human connection

Maurizio Cecconi

Crit Care. 2023 Oct 9;27(1):391. 

〈本論文の一言まとめ〉

人工知能が発展し医療の質はより個別化され高度になる。

その結果、医療の中心は機械に取って代わられてしまうかと思ったが、意外なことに患者や家族との関係性はより深まる方向に向かっていくだろう。


その時代(2020年)は世界はパンデミックに直面し、医療者は世界に試される状況でした。

ただ当時の基本的な原則は2050年になっても変わらず重要なままであった。

当初、集中治療は人間の生理学、技術、人間らしさの縮図であった。集中治療医は細かな臓器の相互作用、精神の回復といった人間の体における最も困難な問題を理解していることに誇りをもっていた。

しかしその後には人工知能や個別化医療という波が世界を席巻した。これにより患者へのアプローチ方法が大きく変化した。

個々の患者の複雑さを考え、全てを画一的なアプローチで治療するのではなく、小規模で均質な集団に合わせた優れたランダム化試験に基づいた治療になった。人工知能は医療者の直感を強化し、膨大なデータで洞察力を底上げした。

そして前例のないレベルで人体を深く理解すると驚くべきことが起きた。

患者およびその家族との関係が深まったのだ。

それは人間の生理機能の個性を理解すればするほど、かけがえの無い人間の魂を大切にするようになるかのようだった。

2050年までにICUは未来化していく。今の乱雑な小さなモニターから大型の画面に変わる。自動のfluid challengeシステムにより、これまでに無い精度で患者の血行動態を最適化することが出来る。

注意のいる患者には自動でオレンジ色のランプが点滅する。

例えば敗血症性ショックで入院した女性がいたとする。オレンジのランプが点滅し、P.aeruginosa菌血症が判明しそれを報告する。私はすぐに感染症専門医のアバターに相談し、協力して彼女専用の抗菌薬を調整する。もはや専門家はその場にいる必要は無い。

この技術のおかげで私は彼女の家族と貴重な時間を過ごし、彼女の状態について話し合い、恐怖を和らげる。このように以前には出来なかった方法で、家族の質問に答えることが出来るようになった。

テクノロジーの進歩により、人間との繋がりが機械やアルゴリズムにとって代わられると想定していた。だが実際には逆のことが起こった。

最新テクノロジーにより患者との距離を縮めることができた。

2020年にチームをもっと大切に出来ていれば良かったと思う。多くのスタッフが精神的負担、バーンアウト、意欲の喪失に苦しんでいた。離職した者もいる。幸いなことに時間が経ち、医師や看護師たちは熱意を取り戻しICUで働くことにやりがいを見出すようになった。

集中治療チームの重要性は増している。年を追うごとに膨大な知識と思いやりを兼ね備えていく。患者の家族との素朴で心のこもった会話は、チューブやワイヤー、機械に囲まれた中で最も大事な瞬間だった。

最後に若い集中治療医たちに以下のメッセージを送りたい。

・好奇心を持ち続ける

テクノロジーは進化し続けるが、人間の生理学的機能や治療の基本は変わらない。

・テクノロジーは依存せず、活用する

あくまで専門知識を補助するために使用する。

・繋がる

家族やその家族と繋がるために、時間を費やす。人と人との関わりはかけがえの無いもの。

・覚えておく

機械は計算はできるが、悲しむ母親を慰めたり冗談で患者の心を軽くしたり、恐怖する家族を安心させたりすることはできない。


いかがでしたでしょうか。

最近、こういう心に響く系の論文ばかり手にとってしまいます。笑

小難しい機械の使い方とか聞いたこともない新薬とかも興味は惹かれますが、やはり大事なのは普遍的な生理学的知識と人と人との繋がりですよね。

今のAIが進歩してルーチンワークを処理してくれた先に、コミュニケーションに時間を取ることが出来るようになる未来が待っているならとてもとても素敵ですね。

そんな未来ですが同時に医師が取捨選択もされているはずです。その時に切られる側に回らないよう、日々自身の鍛錬を怠らないようにしていこうと思います。

本日はここまでです。ではでは。

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