誤嚥性肺炎に嫌気性菌カバーって必要?

論文関係

本日は誤嚥性肺炎に対する抗菌薬の嫌気性菌カバーの意義についてのメタ解析です

いつもとりあえずSBT/ABPC行ってませんか??

〈本論文の一言まとめ〉

誤嚥性肺炎での嫌気性菌カバーはルーチンでは不要

現在は口腔ケアも改善しており、患者背景も違うため、必要な患者を見極めて投与することが好ましい

The Clinical Significance of Anaerobic Coverage in the Antibiotic Treatment of Aspiration Pneumonia: A Systematic Review and Meta-Analysis

Yuki Yoshimatsu, Masaharu Aga, Kosaku Komiya, et al.

J Clin Med. 2023 Mar 2;12(5):1992. 

歴史的には1970年代に嫌気性菌が誤嚥性肺炎の起因菌であるとして、ルーチンに誤嚥性肺炎疑いの患者に嫌気性菌カバーをすることが一般的になった

しかし最近の研究では必ずしも臨床転帰を改善するわけではないことが示唆されている

むしろ不要なカバーにより耐性菌の増加や医療費の増大につながりかねないとも

今回のメタ解析では3つの研究が組み込まれ、1つはRCT、2つは前向き観察研究で合計941人の患者、研究はすべて日本で行われたものであった

全体として死亡率は低く、嫌気性菌カバー群で有意な死亡率の改善は得られなかった

以前は検体に嫌気性菌が多く含まれていたため、治療のためにカバーすることが一般的であった

しかし1970年代の嫌気性菌が多いと示すデータは、治療経過の後半で提出された検体から出たものだった

より急性期の肺炎では嫌気性菌の影響が少ないことが示されている

また考えなければいけないことは、ここ数十年での口腔衛生レベルの改善である

一般的な口腔状態、抜けた歯の数、歯磨きの頻度が長年にわたり改善してきており、口腔内微生物叢に変化を与えている

しかし嫌気性菌は培養で同定が難しいことが言われており、同定されないことが起因菌でないとするのは危険である

そのためATS/IDSAガイドラインでも肺膿瘍か膿胸が疑われている場合を除き、誤嚥性肺炎が疑われる場合にルーチンに嫌気性菌カバーを行わないことを推奨している

現状は明確な根拠はないが、嫌気性菌カバーを推奨する根拠は無いだろう


ついつい嫌気性菌までとりあえずカバーして、とやりたくなりますが症例を選ぶ必要がありますね

やはり個別化というところになるのでしょう

単なる誤嚥性肺炎であればCTRXなどから始めれば良いことも多いですね

一方で口腔内環境が極めて不良であったり、重症度から後が無いような場合については当初からの嫌気性菌カバーが考慮されるというところでしょうか

expert opinionですが一定数、嫌気カバーに変更して劇的に良くなった症例もあるとも聞きます

おそらく必要な症例は存在しているのでしょうが、全例では無いですね

やはりどんな選択でも何も考えずに行うのでなく、医療経済や耐性菌などマクロな視点から目の前の患者以外のことも考えることが重要です

今回はこの辺で、ではでは

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