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特発性細菌性腹膜炎で腹水穿刺を繰り返すのって意味ある? | Dr.Azukii's Blog

特発性細菌性腹膜炎で腹水穿刺を繰り返すのって意味ある?

論文関係

今日は特発性細菌性腹膜炎における抗菌薬投与後の腹水細胞数の変化が死亡率にどう関連するかの研究です。

調べようと思った動機は少し違ったのですが、興味深い内容でした。

Changes in Ascitic Fluid Polymorphonuclear Cell Count After Antibiotics Are Associated With Mortality in Spontaneous Bacterial Peritonitis

Saad Saffo, Uyen K To, Phillip P Santoiemma, et al.

Clin Gastroenterol Hepatol. 2022 May;20(5):e1201-e1204.

〈本論文の一言まとめ〉

SBPで治療が順調なら腹水細胞数は48時間後で下がっていることが多い。

80%以上下がっていると、生存退院の予測因子となる。


特発性細菌性腹膜炎(Spontaneous Bacterial Peritonitis:SBP)は死亡率が20%ほどもある腹水に付随する合併症である。SBPの死亡率を予測する因子に興味が持たれている。

最近の研究では年齢、院内感染、MELD score高値、腹水培養陽性、初回からの広域抗生物質の使用は院内あるいは30日死亡率を上昇させると示されている。

一方で治療開始2日後の腹水多核球(polymorphonuclear:PMN)細胞は院内死亡率を予測し、また抗菌薬治療が奏効していれば48時間後のPMN細胞数が70-75%まで低下しているとする報告もある。

ガイドラインでも治療開始後に2日経ってからPMN細胞数を再評価することを推奨する記載があるが、議論の余地がある内容である。

そのため今回の研究でSBP患者での抗菌薬投与後のPMN細胞数と死亡率の関連を調べることを目的としている。

対象はYale-New Haven Hospital(New York)、Columbia University、Northwestern Memorial Hospitalの3施設で、期間は2006年から2016年。

患者は腹水中のPMN細胞数≧250/μLでSBPと診断され抗菌薬治療が開始になり、2日後に腹水穿刺がフォローされている。二次性の細菌性腹膜炎が疑われる患者は除外された。

primary outcomeは院内死亡率として、最適な変化幅のカットオフを算出した。

患者は426人、進行性の肝硬変、臓器障害があった。40%はアルコール性肝硬変、15%はSBPの既往があった。30%の患者で腹水培養が陽性になり、42%で初回から広域抗菌薬が投与された。

2日後のPMN細胞数と院内死亡率は図の通り。

細胞数の約80%の減少が生存の強い予測因子となった。一方で年齢、MELD-Na scoreの高値、腹水培養陽性、広域抗菌薬投与は死亡率を増加させた。


いかがだったでしょうか。

実はこの論文に行き着いたclinical questionは少し違っていて、「治療開始後の腹水検体で細胞数をみる意義があるか」という内容でした。

そこで治療してしまうと、細胞数ってどれくらい下がってしまうんだろう?と疑問に思い調べたところ、こんな論文が出ていたわけです。

引用されているガイドラインも目を通しましたが、「The total protein, LDH, and glucose criteria are only 50% sensitive in detecting nonperforation secondary peritonitis; the follow-up PMN count after 48 hours of treatment assists in detecting these patients. The 48-hour PMN count is essentially always below the pretreatment value in SBP when an appropriate antibiotic is used; in contrast, the PMN count rises despite treatment in nonperforation secondary peritonitis.」と記載されていました。

Hepatology. 2009 Jun;49(6):2087-107.

つまり48時間後に腹水再検すると、通常は大きく細胞数は下がっているはず(今回の研究では80%減と言っていますが)。なので二次性の細菌性腹膜炎を否定できていない時に、再検すると気が付くきっかけになるかもね!というニュアンスでした。

確かに二次性の細菌性腹膜炎なら治療も奏効しないでしょうし、診断をつけるきっかけにもなるのでもう一度腹水穿刺をする意義はあるのでしょうね。

なので「治療が順調に進んでいて循環も立ち上がり傾向のSBP疑いなら、初回に検体が取れてなくても無理してもう一度刺す必要は無い。ただ立ち上がりや改善がイマイチならば、もう一度穿刺する意義はあるかもしれない。」というところでしょうか。

こうまとめてみると、まあ普通ですね。上手くいかなかったら検体取りにいくしか無いと思うので。

ただ見る意義が低いというのはless is moreに通ずる考え方で面白いと感じました。

ガイドラインを流し読みすると、過去のSBP診断基準は細胞数≧500/μLだったと記載があり知らなかったので勉強になりました。

やはり論文やガイドラインまで立ち返って読むと学びが多いですね。

今回の研究はどこまで二次性の細菌性腹膜炎を否定しているのかとか広域抗菌薬の定義とか、気になるところはありましたが面白かったです。

本日はこの辺で、ではでは。

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