今回はショッキングなタイトルですが、日本の法医学の闇について扱おうと思います。
歴史的背景もあり難しい部分も多いのですが、改善の余地はたくさんあります。
法医学の先生方は必死に啓蒙活動していますが、なかなか国は変わりません。
少しでも社会が良くなるように、そのお手伝いの意味も込めて記事にしていこうと思います。
法医学とは
みなさん、法医学と言われると何を思い浮かべますか?
恥ずかしながら自分は窪田正孝さんです。
ドラマのアンナチュラルが好きだったので、そのイメージが根強くあります。
あとは監察医朝顔とかも最近だと有名ですかね。
ですが、これらが実際の法医学者と全く乖離しているって知っている人は少ないと思います。
ここで2つのクイズです。

こちらの答えは、、、×です。
法医学者は体を治す医者と違って、体を調べて起きたことを解明するスペシャリストです。
もちろん死者でもその力は発揮されますが、生きている人も対象とします。
例えば交通事故での骨折の評価(本当にしているの?)、子供の虐待評価(虐待じゃないって親は言うけど本当?)などです。
海外ではメジャーで法医学者が外来を開いていますが、日本で同様の取り組みは千葉大学くらいかと思われます。

続いてこちらの答えは、、、なんと×です。
これが特に誤解の多いところですね、ドラマの功罪かと思います。
実は日本の法医学者がドラマのように、積極的に犯罪死体を解剖することはできません。
実はアメリカの制度と大きな差があるためです。
こちらは後述しようと思います。
日本の死因究明システム
こちらが日本の死因究明システムのフローです。

まず異状死かどうかが判断されます。
仮に警察でしか対応されていなければ、ここは問答無用で異状死と同列の扱いになりますね。
あくまで医療機関に搬送されたり入院中の死亡など、一部の例外を異状死でないと弾くための仕組みです。
では異状死の定義ってなんでしょうか?
・・・ここが問題点の一つ目で、実は決まっていません!
1994年に法医学会が異状死ガイドラインを作成しました。
ですがそこに含まれていた「診療行為に関連した予期しない死亡、およびその疑いがあるもの」という文言が非常に物議を醸したのです。
と言うのも、当然事件性を踏まえてなのですが、医療事故やミスもここに含まれてしまいます。
そして都立広尾病院や大野病院事件において、この異状死届出がなかったことにより医師が有罪になってしまったのです!!!
ここで医療者は萎縮するようになってしまい、最終的に死亡診断書作成マニュアルから削除されています。
大事な異状死が定義を消され、曖昧なものになってしまっているのです。

そして異状死扱い(定義もありませんが)されたらどうなるかと言うと、警察通報されそこで死体を3つに区分します。
これは犯罪性の度合いに応じて変わります。
・・・これが二つ目の大きすぎる問題点です。
どうやって警察が犯罪性を評価するのでしょう。
見た目で明らかなら良いですが、毒殺とか分かるわけないですよね。。。
これははるか昔に中国の制度を真似て作った死体三分説によるようです。
しかも警察らしく速やかな作業になるので、初動から数時間で振り分けられるようです。
よって図にした通りですが、最初の警察評価が間違っていると犯罪性の評価が行われにくいフローに乗ってしまいます。。。
過去には実際に警察判断が誤っていて事件が見逃されていた件も複数報告されており、一時は社会問題になりました。
有名どころをいくつかあげておきます。
①17歳の力士暴行死事件
17歳の力士が亡くなるってただ事ではありません。
海外なら国によっては全例解剖している地域もありますが、少なくともこのような健康な若者の突然死に対して原因究明がされないのは日本くらいでしょう。
②パロマ湯沸かし器事故
こちらも同様で、18歳が亡くなって心不全は通常あり得ません。
きちんと原因検索すれば機械の不備に気がつき、他の一酸化炭素中毒は防げただけに残念です。
③トリカブト殺人事件

旅行で沖縄に行き、アリバイ工作をして毒殺し保険金を狙った事件です。
これも事件性が当初は無いとされ(周りでこれだけ死んでれば、普通気がつきそうですが、、、)、司法解剖は無しになりました。
しかし犯人の夫の同意も得られて承諾解剖をしたことで急転直下、トリカブト中毒が判明したのです!
これは監察医制度の無い沖縄だったので、本当に奇跡的なケースといえます。
むしろ犯人の夫はなぜ承諾解剖に同意したのかが謎ですが。
ちなみに調査法解剖はこのような事件を受けて新設されたのですが、費用の問題もありまだ十分に機能しているとは言い難いのが実情です。
ドラマと現実の違い
さてドラマの監察医ですが、海外では実際に犯罪死体を扱っています。
ですが日本は違っています。
これは戦後に餓死者がたくさん倒れている中に、結核などの感染症も混ざっている可能性を危惧したGHQが監察医制度を導入したことがきっかけです。
本来、全国に広めようとしたのですが、朝鮮戦争で忙しくなり、特需景気で餓死者も減り、そうこうしているうちに日本はあっという間に独立してしまいました。
なので日本の監察医制度は名ばかりで、東京23区、大阪、神戸にしかありません。
そして彼らが行うのは行政解剖であり、「非犯罪死体」の対応なのです。
いかに実際の現場とドラマの内容が違うかが驚きですよね。
終わりに
根本的にはどうすれば良いのでしょうか。
おそらく「基本は解剖」というスタンスにすべきなのでしょう。
特に千葉大学の岩瀬教授がこのような内容を暴露し続け、国を変えようと頑張っていられます。
ですが古くからの警察文化もあり、費用の問題もあり、なかなか話は容易ではなさそうです。
ぜひ少しずつでも制度が変わっていくと良いものです。
本日はこの辺で、ではでは。
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