「熱中症診療ガイドライン2024」が出ました!

医学日常

毎年聞いている気もしますが、今年は本当に暑すぎますね。

おかげで熱中症症例も増えており、コロナの再流行もあって発熱患者対応に日々追われています。

さてそんな中で今回は2024年7月末に9年ぶりに更新された熱中症診療ガイドラインの変更点と重要ポイントについてお話していこうと思います。

なお以下から本文も読めますのでご参照ください。

熱中症診療ガイドライン2024 公表のお知らせ

変更点①:重症度分類にⅣ度(qⅣ度)の追加

まずは重症度分類の定義が変わる経緯を確認しましょう。

古典的なBouchamaによる熱中症の分類は以下の通りです。

熱射病(heat stroke):体温40度以上、皮膚乾燥、中枢神経症状(せん妄、痙攣、昏睡)あり。

熱疲労(heat exhaustion):汗による塩分と水分の大量喪失により細胞外液減少、そして悪心、嘔吐、頭痛、めまい、血圧低下、直腸温(38-39度)の状態。

熱痙攣(heat cramp):四肢や腹部の筋痙攣、こむら返り、水分補給のみで塩分を補給しないことで起こる。熱は38度以下。

熱失神(heat syncope):血管拡張により脳血流が減少して立ちくらみ、失神。体温は正常。

そのため、今までは「熱射病」「熱疲労」「その他」と分類していました。

しかしこの定義では熱射病を過小評価してしまう可能性があるため、体温に固執せず臓器障害で分類し直すようにしました。

そこで熱中症診療ガイドライン2015において、以下の分類に改められました。

Ⅲ度:中枢神経系(C:consciousness)、肝臓(H:hepatic dysfunction)、腎臓(K:kidney disfunction)、DIC(D:DIC score)のいずれかの臓器障害を含む。重症度スコアは4-6点。

Ⅱ度:頭痛や嘔吐、倦怠感、集中力や判断力の低下(JCS≦1)。重症度スコアは1-3点。

Ⅰ度:めまい、立ちくらみ、大量の汗、こむら返り。意識障害は認めない。重症度スコアは0点。

しかしこの分類では、軽度の意識障害のみが該当する場合から昏睡・DIC などの多臓器不全を呈した致死的状況まで、一律にⅢ度としていました。

昨今の増加する熱中症者及び死亡者(例年1000人超え!)を受け、重症群をより層別化することになったようです。

その最重症群を「Ⅳ度」として拾い上げ、Active Cooling (後述)を含めた集学的治療を早急に開始することを提唱しています。

IV度の定義は膀胱温や直腸温などの深部体温を用いて「深部体温40.0℃以上かつGCS≦8」とされています。

そしてIV度の可能性がある患者を現場や搬送中、あるいは来院直後に把握する基準として、qIV度(quick IV度)「表面体温40.0℃以上(もしくは皮膚に明らかな熱感あり)かつGCS≦8(もしくはJCS≧100)も定められました。

要するに「レベルがちゃんと落ちてる人は暫定qIV度と呼び、深部温次第でⅢ度かⅣ度と判断しつつActive Coolingしろ」って意味合いですね!

以下に新たな診断基準と治療方法をまとめましたので、ご参照ください。

・qIV度(quick IV度)

「表面体温40.0℃以上(もしくは皮膚に明らかな熱感あり)かつGCS≦8(もしくはJCS≧100)【深部体温の測定不要】」

・I度

めまい、失神(立ちくらみ)、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)があるも意識障害を認めないもの。

Passive Coolingを行い、不十分であればActive Cooling、経口的に水分と電解質の補給を行う。

・II度 

頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下(JCS1)を認める。

医療機関での診察を必要とし、Passive Cooling、不十分ならActive Cooling、十分な水分と電解質の補給(経口摂取が困難なときは点滴)を行う。

・III度 

(1)中枢神経症状(意識障害JCS2、小脳症状、痙攣発作)、(2)肝・腎機能障害(入院経過観察、入院加療が必要な程度の肝または腎障害)、(3)血液凝固異常(急性DIC診断基準[日本救急医学会]にてDICと診断)の3つのうちいずれかを含む場合、入院治療の上、Active Coolingを含めた集学的治療を考慮する。

・IV度 

深部体温40.0℃以上かつGCS≦8の場合、Active Coolingを含めた集学的治療を行う。

ややこしいですが、改めて診断フローをまとめると以下の通りです。

まずqⅣ度か確認します。

そして該当すればⅢ度以上なのですぐ冷やしつつ、深部体温を測定することが大事ですね。

変更点②:Active Coolingの定義変更

2015では体内冷却、体外冷却、血管内冷却など使い分けていましたが、何らかの方法で熱中症患者を冷やすことをActive Coolingと呼称するようになりました。

ただ冷やした輸液製剤の投与やクーラー効いた部屋で休むことなどはPassive Coolingとするようです。

つまり軽症例はPassive Cooling、重症例はActive Coolingという使い分けになりますね。

冷やした輸液製剤はActive Coolingでしかない気がしますが、メーカー推奨の投与方法でもなく有効性示すエビデンスも無いことから推奨度を落としている様子です。

さて、いかがだったでしょうか。

定義はややこしいですが、きちんと使えないと知識がup date出来ておらず恥ずかしい思いをします。

特に今までは最重症という意味でⅢ度と言っていましたが、今後は大きく変わりますので知らないとかっこ悪いですね。

日々の勉強を頑張るしかなさそうです。

今日はこの辺で、ではでは。

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