今日は忘れた頃にやってくるスポーク外傷について、まとめてみようと思います。
政府広報オンラインが分かりやすい記事を出しているので、こちらを読むと概要は掴めると思います。
簡単にいうと「足首が自転車のスポークに巻き込まれることで起こる外傷」です。
スポークとは車輪の中心から放射線状に伸びる金属の棒の事です。
この疾患のポイントとしては
①予防可能である
きちんと自転車ガードを装着したり、そもそも二人乗りをしなければ起こりません。
公衆衛生学的にはゼロにしたい疾患ですね。
日本小児科学会もInjury Alertで報告をあげて注意喚起をしています。
②見た目の割に重症
見た目はそうでもなくても、スポークにより加わる力は大きく骨傷に至ることも珍しくありません。
またこの部位は血流が乏しい領域なので、治癒が悪く時間がかかるため感染合併症などに悩まされることも特徴です。
少し調べてみましたが意外と良い文献もなく、古いものばかりでした。
今回はその中でも2本の文献を見てみようと思います。
Bicycle-spoke injuries: a prospective study
Injury. 1997 May;28(4):267-9.
M J Segers, D Wink, G J Clevers
PMID: 9282179
スポーク外傷とは、足関節をスポークとフレームの間に挟むことで生じ、挫創や打撲傷をきたす。
当初は所見は乏しいが、数日後に真の重症度を反映して所見が悪化することがある。
今回は59人の子供のスポーク外傷を前向きに経過みた。
見た目のため軽症扱いされがちだが、17例で骨傷を伴っており全例での画像評価が好ましいだろう。
Bicycle-spoke injuries of the foot in children
J Orthop Surg. 2010 Dec;18(3):338-41.
Anil Agarwal, Manish Pruthi
PMID: 21187547
インドでは自転車は一般的な移動手段であり、52%のスポーク外傷は3-5歳の子供に起こる。
この時、大抵は右側が車輪に近いため多くは右足を怪我する。
傷は軟部組織の裂創や足部の圧外傷となる。
41人の前向き研究で、創部をgrade 0-3の4段階に分類した。
いずれの重症度も48時間後には再評価とした。
やはり37/41例で右足を怪我しており、踵後ろのアキレス腱付近が最も受傷部位としては多かった。
重症度は0-3の4段階で順に10、13、14、4例であったが、再評価により8例がさらに重症の扱いになった。
それは軟部組織の壊死や感染完成による。
予防のためにはスポークガードや足置きが求められる。
そして乗る子供は、適切な靴を履くことも重要だろう。
いかがだったでしょうか。
まとめると
・見た目の割に意外と重症
骨折もあり得るので、必ずレントゲン撮っておく。
傷自体も軽症と思っても、48時間を目安に再評価する。
進展あれば適切に壊死組織のデブリなど介入する。
・予防を指導する
現状の本邦制度では子供については自転車二人乗りは禁止はされていません。
足の保護やヘルメット装着など、生活指導を行うことで再発予防やさらなる大きな事故を防ぐ必要がありますね。
傷の見た目だけに騙されて安易に帰宅にすると痛い目を見る外傷です。
十分に注意しましょう。
本日はこの辺で、ではでは。
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