ヨーロッパにおける癌の不平等性

論文関係

今回からは自分が今年度に公衆衛生大学院を受験することを予定しているため、公衆衛生ネタの論文も読んでいこうと思います。

初回は癌における不平等についてです。

Inequalities in cancer: a major public health concern

Lancet Public Health. 2024 Mar;9(3):e147.

The Lancet Public Health

PMID: 38368902

〈一言まとめ〉

ヨーロッパでも癌による死亡率の差は地域により大きい。

重要な点は十分な教育を与え、まずリスク因子を減らすための行動を広めること。


最新のガンに関する統計によると、2022年には2000万人の新規のガン患者が発生し、970万人がガンにより亡くなった。最多は肺癌の250万人で全体の12.4%におよび、以下は乳癌(230万人、11.6%)、直腸癌(190万人、9.6%)、前立腺癌(150万人、7.3%)と続く。

高齢化やリスク因子への曝露の変化も踏まえて、2050年には新規の癌は3500万人に増えると予想される。

このような恐ろしい数字が示される一方で、大きな不平等性が国毎だけでなく国内においても発生している。

癌はヨーロッパにおける主要な公衆衛生での関心事項であり、より良い癌の管理と不平等性の是正が求められる。

癌の死亡率は国だけでなく、国内地域においても差が出る。ルーマニア、フランス、ドイツ、ポーランド、スペインにおいては、地域によって30%以上も死亡率に差がつく。

これらの集団は年齢や性別、教育、貧困によっても変わる。

OECDはこれらの不平等性が癌に対する生存に関連したかを報告した。

まず40%以上の癌が防ぎ得たリスク因子によるものの影響を受けており、特に低所得者層、低教育レベル層で多かった。

具体的には喫煙、肥満、果物や野菜の消費量の少なさ、低い身体活動性が、低い教育レベルでは多かった。

なお教育レベルが低いことの定義は「中等教育まで終えていない」、教育レベルが高いことの定義は「大学教育まで終えている」とされた。

これらを受けて多くのヨーロッパ諸国では過去何10年にわたり喫煙率を低下させ、リスク因子を下げられている。だが全ての国で同様ではない。

次にアウトカムを改善させたのは、癌のスクリーニングだ。

だが乳癌、直腸癌、子宮頸癌において、50%以上の受診率であったのは、たった5カ国であった。

特に低教育レベル層ではマンモグラフィーによる検診を受ける機会が少なかった。

健康教育をすることと、より低教育レベル層では特に癌対策の重要性を伝えることが重要だろう。

教育は極めて重要な位置付けを担っていて、無視することはできない。

教育期間が1年増えるごとに2%の死亡リスクを減らすことが出来るとする報告もある。


ヨーロッパといえば一般的には先進国と言われていますが、意外と地域差があるようですね。

あるいは昨今の移民問題などで、昔よりも状況が変わっているのかもしれません。

今回の内容からはそこまでは読み取れませんが。

教育が大事、というのは納得の内容ですね。

それをどのように社会に還元していけるのか、考えていくのが面白いところでしょう。

本日はこの辺で、ではでは。

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