本日は苦手な人も多いと思われます、ペースメーカーについて話していこうと思います。
総論的な内容と、細かい内容で2回に分けてお送りします。
初回の今回は、まずそもそもの基礎的な内容からまとめていきますので、是非ゆっくり読んでみてくださいね。
架空の症例です。
このややこしい専門用語の数々の意味が理解できるようになることが、今回の講義の目標です。
さて、そもそもペースメーカーが適応になるのはどのような疾患でしょうか。
以下に示した3疾患が適応疾患となります。
もちろん介入可能(treatable)な原因を解除してからになりますので、原因もきちんと考えることが大事です。
最も余裕がない全身状態であれば、まずは対症療法としてペーシング開始になりますね。
まず洞不全症候群(sick sinus syndrome:SSS)の場合です。
ある程度のpauseが無いとペースメーカー適応にならないですよね。
何秒以上で留置適応になるでしょうか??
実はこちらは昔は秒数によって定められていましたが、昨今ではそれよりも症状に重きをおいて留置を決めるようになってきています。
そのため必ずしもpauseの時間だけでなく、症候性かどうかも含めて循環器にコンサルすることが出来ると良いですね。
続いて房室ブロック(atrialventricular block:AV block)の場合です。
こちらは3度房室ブロック(complete AV block)は絶対適応として、症候性の2度ブロックも適応になります。
SSSと同様に特に症状があるときは、閾値を下げて循環器へ相談すると良いでしょう。
さて心臓血管外科術後の症例をみていると、術後の伝導障害をきたししばらくは自己脈が出ないという症例を経験します。
これって戻るのでしょうか?
やはり伝導路を障害する可能性のある大動脈弁や三尖弁領域の操作がハイリスクになるようですね。
自己脈が戻ってくるデッドラインというか目安は7日程度とされていますので、そのあたりが諦めどころで循環器へ永久ペースメーカーの相談をするケースが多そうです。
ところでペースメーカーの仕組みはどのようになっているでしょうか。
すごくシンプルにしたのが、下の図になります。
まず電気刺激がないかを聞いています。
そして決まった時間内に音がしたなら待機し、音がしなければ音を鳴らすのがペースメーカーの大雑把な仕事です。
続いてペースメーカーのモードについてです。
基本的には3文字か5文字で記載されています。
ただ4-5文字目は植え込み型での話になりますので、こちらは非専門医向けとして割愛します。
最初の3文字で順に、①刺激する部位②感知する部位③反応様式を表現しています。
テンポラリーペースメーカーの設定として頻度の高いものがVVIモードです。
きちんと自己を検知した際には打たないようにしないと危ないので、VVOモードにすることはほぼありません。
完全に自己脈が飛んでしまっていれば構わないと思いますが。。。
万が一、自己のT波で刺激してしまうとR on Tをおこす可能性もありますので。
続いて、難しい概念に移ります。
このセンシングの理解が、なかなか頭がこんがらがると思います。
・自己に気付かない状態=センスの閾値が高すぎて届いていない
・ノイズを自己と勘違いしている状態=センスの閾値が低すぎて全部該当している
一言で表現するとこのようになります。
そのため「センス(感度)を上げて!」と指示された場合には、ややこしいのですが「センシングは下げます」。
全然自己を拾ってないから、閾値を下げないと分からないという状態だからです。
言葉だけで考えるとややこしいですよね。
またAAIモードもあります。
こちらはVVIの心房版です。
房室伝導に異常が無ければ生理的な心拍出を期待することが出来るのが、VVIと比較したメリットです。
また施設によってはAF予防のためにAAIでペーシングに乗せておく、というところもあるようです。
続いてDDDモードです。
こちらはAもVもペーシングして擬似的に、生理的な拍出を再現しようとしているものです。
ただこれはAV delayという、P波をセンスしてからどれくらいQRS波を待つかという設定があります。
これが難しいので、非専門医としては無理に使わなくてよいのではないかと思います。
これらの使い分けをまとめるとこのようになります。
理論的にはSSSならAAIで良いはずなんですが、たいてい房室伝導も悪いことが多く上手くいかないケースを経験します。
なかなか難しいところですね。。。
続いて特殊なペースメーカーについても少し触れておきます。
大きくは不整脈治療だけではなく、心不全治療としての側面も目立ちます。
まずICDですが、大きく一次予防と二次予防での適応があります。
今までは二次予防が中心でしたが、最近は一次予防が注目を集めています。
またCRTの適応についても説明します。
心筋障害により伝導障害をきたすとwide QRSの左脚ブロック波形をきたします。
するとこれは左室収縮の協調性を損なうことで、心拍出量が低下します。
このような条件下では機械的に刺激した方が良い場合もあり、CRTが考慮されます。
これらの違いをまとめるとこのようになります。
さて、いかがだったでしょうか。
初回はこの辺りにしておこうと思います。
次回はトラブルシューティングから順に説明していきますので、楽しみにしていてください。
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