はい、今回も前回に引き続いてペースメーカーについて説明していこうと思います。
まずはトラブルシューティングについてです。
しゃっくりを起こすのはtwitchingと呼ばれる、横隔膜刺激による影響です。
続いて自己脈の中にペーシングが混ざってしまう状態です。
これはアンダーセンシングですね。
自己の波形を認識できていない、要は閾値が高すぎるためセンスを下げることで改善します。
それではこちらはどうでしょうか。
これは先ほどと逆で些細な筋電図を全て自己脈と勘違いしてしまっている状態です。
今度は閾値が低すぎるのが問題なので、センスを上げることで回避されます。
あるいは根本的ですがペーシング不全という状態もあります。
これは出力がされていない場合と、されているのに届いていない場合に分かれます。
ペースメーカーに特有な電池の消耗やリードの断線、位置異常などに加えて、通常の徐脈の原因を考える必要があります。
こちらのレントゲンでは大きく抜けて浅くなってしまってますね。。。
またペースメーカーが入っているのに、そのせいで頻脈になってしまうことがあります。
機序としてはDDDで発生しますが、PVCなどの逆行性の伝導によりVPが始まりそこからASとして認識してしまうことが知られています。
このような負の連鎖をきたした際には、アデホスも効果があるとされています。
さてこのような複雑な合併症もあるペースメーカー、入れずに済んだら一番でしょうか。
脈拍を上げる薬剤、って聞いたことありますか?
シロスタゾールで脈拍が上がります。
本来の機序としては抗血小板作用や血管拡張作用が知られており、本邦での適応疾患も脳梗塞の二次予防やPADです。
しかし副作用として冠血流を増やすためなのか、cAMPが増えて房室結節内のCa濃度が上がるからなのか、頻脈をきたします。
後ろ向き研究では、シロスタゾールを服用した群でペースメーカー埋め込みは減ったとする報告もあります。
では問題は「脈拍を上げさえすれば良いのか」ということです。
テオフィリンも同様の理由で使われることがありますが、無理やり頻脈にさせているわけなので利点ばかりではないと思います。
交感神経系を賦活化しているので心負荷にもなりますし、そもそも抗血小板作用もあるので出血リスクにも繋がります。
無理な人には粘らずにペースメーカーを入れた方がよい症例もあるのは間違いないでしょう。
次のテーマは自己脈とペーシング脈とどちらが良好な心拍出量に繋がるかです。
ここでおつかいの考え方を振り返りましょう。
すると、これが酸素需給バランスの考え方と同じだとわかるかと思います。
このDelivery O2を構成するのはCOとCaO2になります。
ということはHRを上げ続ければ、COが増えるのでDO2は無限大になるのでしょうか??
もちろんそんなうまくはいかず、HRを上げるとSVが下がってしまいます。
ある程度まではCOが上昇しますが、エコーやSGCの指標によって評価して最適値を探すことになるでしょう。
多くはset rate 70-90/minになると思います。
もちろん肥大心とかなら別ですが。
続いてペーシングが入っている人の胸痛って分かりますか?
例えばこんな心電図の時です。
左脚ブロックでの虚血における心電図変化はSgarbossa criteriaが有名ですが、感度が低いことが問題です。
そのためこちらを改変したmodified sgarbossa criteriaがあり、より高い感度と特異度を誇ります。
こちらに準拠して先ほどの心電図をみると、実はV4-6でST上昇がありました。
PCIをしたことにより正常化して分かりやすくなっていますね。
やはりペーシング波形だと分かりにくいですが、左脚ブロックパターンと考えての読影がポイントになりそうです。
さて、これで前回の冒頭で示した架空の症例の意味は分かりましたか?
せっかくなので再掲しておきます。
ややこしい内容でしたが、循環器集中治療領域では必須の知識になります。
是非、読み込んで理解してみてください。
本日はここまで。ではでは。
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