『気管切開 包括的ケアマニュアル』を読んで

勉強関係

今回は書籍紹介をしていこうと思います。

気管切開 包括的ケアマニュアル

気管切開患者・喉頭摘出患者の標準的ケア普及を目的とした団体 National Tracheostomy Safety Project (NTSP)が作成した包括的マニュアル。気管切開術の方法、デバイスの種類、緊急時の対応、施設の体制、医療安全など気管切開ケアに関連するを項目を、要点を踏まえ解説。
術後の短期的気管切開ケアだけでなく、永久気管孔を有する患者の長期的ケア、小児の気管切開ケアにも言及。
解剖図や手技のイラスト、各デバイスの写真、急変時対応のアルゴリズム等、ビジュアル面も充実。
当該領域の看護師、救急・集中治療系の医師をはじめ、呼吸ケアサポートチームに属する多職種メンバーにもおすすめ。

著監訳:藤澤 美智子(横浜市立みなと赤十字病院 集中治療部)・髙田 順子(東京ベイ・浦安市川医療センター 呼吸療法チーム)・武居 哲洋(横浜市立みなと赤十字病院 救命救急センター)

気管切開とは?喉頭摘出とは?

耳鼻科領域では常識なのかもですが、救急医として関わるのは気管切開ばかりです。

そのため気切孔を見た時に、喉頭摘出を考えることを忘れてしまいそうですね。

喉頭は口腔癌、咽頭癌、喉頭癌により浸潤される可能性があり、その場合には喉頭摘出が選択されます。

有名なのは喉頭癌で喉頭摘出をしたつんくさんでしょうか。

この場合には気管は切断され、断端は前頸部に縫着されます。

すると2度と上気道を介して呼吸することは出来ません。

気管切開と喉頭摘出をベッドサイドで見分けるのは困難です。

そのため喉頭摘出後なのに、通常通り顔面から酸素投与されて気道管理に失敗した症例は多いようです。

自分はそのリスクを今まで全然考えていませんでした。

今後は気を付けたいと思います。

気管切開を行う理由と方法

気管切開は通常では第2-第3気管輪間を目標とします。

緊急時には血管が比較的少ないため、輪状甲状間膜からのアプローチもありです。

甲状腺が大きい場合や血管からの出血が出た場合の止血という意味では、外科的手技の方が適しています。

一方で経皮的手技は組織損傷や出血は少ないとされるものの、出血してしまった場合にはカニューレによる圧迫効果での止血を期待するしかありません。

そのため出血リスクが高かったり、創部の近くを太い血管が走っている場合には止血の手段(結紮や電気メスでの焼灼)を用意するため外科的気管切開が好ましいです。

このあたりは一般的にどちらを選ぶかでよく指摘される内容ですね。

気管切開患者、喉頭摘出患者の日常管理

加湿

酸素投与をする場合には必ず加湿する必要があります。

通常の呼吸では鼻と上気道の線毛上皮細胞により吸気は温められ保湿されます。

冷たく乾燥した空気では、痰の粘稠度が上がり、線毛細胞の障害、炎症性変化、肺機能の低下、細菌侵入リスクの増加などをきたします。

・カフ管理

人工呼吸器管理が必要であったり誤嚥リスクが高い患者の場合にはカフ付きカニューレが必要になります。

その際、気管毛細血管圧は20-30mmHgであり、22-37mmHgで加圧すると血流障害をきたします。

そのためカフを過剰に膨らませて使用すると、気管狭窄症、気管軟化症、気管食道瘻、気管腕頭動脈瘻などの可能性があります。

許容される圧は空気の漏れを防ぐ最小限の圧であるが、35cmH20を超えてはいけません。

カフ圧は15-25cmH2O(10-18mmHg)とすることが推奨されています。

・カニューレ交換

カニューレ留置の最長期間として、内筒が取り外し可能なカニューレは30日(大半の製造業者が推奨)、単管カニューレなら7-10日とされています。

交換歴があるような場合は単純な入れ替えで良いです。

ブジーを用いる場合には、本来カニューレ交換のために設計されたものではないので注意が必要となります。

挿入中は極めて不快であるため、事前に固定バンドなどを外しておき最短時間の挿入とするよう心がけます。

また入らなかった際には新しい気管カニューレを無理に挿入しないことが重要です。

誤った経路を作り、出血をきたす可能性もあります。

入らない際の最も一般的な解決策は、ひと周り小さい新しいカニューレを挿入することになります。

・離脱

離脱を試みる際の最初のステップはカフ付き気管カニューレのカフを抜くことになります。

これで上気道の開存や分泌物の自己喀出を評価します。

クリアした場合には、カフ無しに変更することも可能だが状況次第になります。

患者が短時間のカフ脱気にしか耐えられなかったり、夜間や定期的に人工呼吸器が必要ならば、カフ付きを残す必要があります。

またスピーキングバルブを使用することもできます。

これは一方向弁であり、吸入はできるが呼気時にはバルブが閉まり上気道からガスが抜けます。

閉塞キャップの場合には全ての気流を遮断します。

気管切開の気管が短ければ、必ずしもスピーキングバルブと閉塞キャップを使用したプロセスは必要ありません。

気切カニューレ抜去後は気管切開孔が乾燥して感染していなければ、ほとんどは良好に治癒します。

切開孔の直径はカニューレ抜去後12時間で約50%縮小します。

3-4日で完全治癒することもあれば、数週間かかる場合もあります。

気管切開患者、喉頭摘出患者の緊急時対応

・気管切開患者の場合

“グリーンアルゴリズム”として記載されています。

この場合には上気道が開存していることがポイント。ダメな時には標準的な経口からの気道管理を行います。

・喉頭摘出患者の場合

“レッドアルゴリズム”として記載されています。

この場合は肺に繋がる上気道が無いです。

そのため上からの換気は出来ないが、誤嚥するリスクはありません。

違いとしては閉塞あるいは逸脱したカニューレはもはや最後の手段にならないので、判明次第抜去すること。

そして永久気管孔からの気道管理をトライします。

これらの情報はこの団体のHPに記載ありますので、ぜひご参照ください。


さていかがだったでしょうか。

自分が読んでいて勉強になったのは

①喉頭摘出患者の可能性を考えること

気切トラブル=上からの気道管理となりがちですが、摘出している人は無意味です。

よく気切直後のトラブルは、経口挿管し直すというフレーズがありますが、これもあくまで気管切開患者の場合ですね。

喉頭摘出しているなら、術直後だろうと必ず気切孔からアプローチしなければなりませんね。

普段意識していなかったので、アルゴリズムも含めて学びになりました。

②管理や離脱の過程を学べたこと

急性期ではカフ付きの単管カニューレを入れて終わってしまいますが、その後の離脱に際してカフをまず抜くこと。カニューレを入れ替えて離脱へ進んでいくことなど、分かりやすく記載されていました。

これで今後はより自信をもって気切患者に対応できそうです。

素晴らしい一冊でしたので、ぜひご一読ください。

本日はこの辺で、ではでは。

コメント

タイトルとURLをコピーしました