不整脈③ ~心室性不整脈~

まとめ

不整脈シリーズ、今回は心室性不整脈についてです

①VT(Ventricular Tachycardia)

まずVTですが、こちらは大きく単形性と多形性に分けられます

単形性の場合、異常自動能や撃発活動の影響だったり、瘢痕化した梗塞部の影響だったりします

一方で多形性の場合には心筋虚血との関連性が示唆されることから、少しギアを上げる感覚です

血行再建後にVTが出ると気持ち悪いなあと思っていたのですが、上級医から「昔はカテした後に単形性VT出ると良かった良かった、って安心してたよ」と昔言われてよく覚えています

感覚的には気持ち悪いですが、機序的には多くは虚血と関連しないので経過をみて良いのですね

そのため対応についても多形性か単形性かで対応が変わります

多形性VTやVFの場合には基本的に何かしらの根本的な原因を想定し、血行再建を考えることが多いです

一方で単形性VTの場合にはそもそもsustain VT(持続性VT)であることが介入の条件となり、その方法としてもアブレーション治療になります

両者は似て非なるものになりますね

VTやVFの予防についてですが、ACSにおいてはβ遮断薬の恩恵が大きいです

もっともβ遮断薬の恩恵は不整脈予防以外にも、心筋酸素需要の低下や拡張期を増やす事での冠血流維持なども指摘されています

また重要な点としてはKが低値で発作リスクが高くなる事は報告されています

K 3.6mEq/Lって十分な気がしませんか?実は心疾患で不整脈リスクがある患者さんの場合には、それって低くて良くないです

目標としてK 4.0mEq/L以上を目指して管理しましょう

またMgは比較的気軽に補正しています

正直、頻脈性の不整脈が気になるときに高Mgでの害なんてほぼ無いですからね、、、

②VF(Ventricular Fibrillation)

さて、ここでVFにおける電気的除細動についてお話しします

DSEDという処置が話題になっていますが、やはり二刀流が良いのでしょうか?

DSEDが広く話題になったのは2022年のNEJMからの報告がきっかけです

標準的な除細動に比べてVC(Vector Change)群とDSED群が退院時生存率を改善したと示されました

では何故標準群よりもVCやDSEDの方が良いのでしょうか?

VC群が良かったという根拠としては左室を通電することが指摘されています

VFなどのshockable波形は左室由来であり、そこを通電する意義が大きいのでは無いかというものでした

確かに標準群では表層のみなので、その差は大きそうです

またDSED群については高エネルギーである事や連続的なDCを行えた事が良かったとする意見があるようですが、この辺りはまだはっきりしていません

では全例でDSEDを行うべきなのでしょうか

結論から言えば「No」だと思います

まず除細動器を2台用意することが非現実的であり、メーカーは安全性について保証していません

そして今回の研究はカナダのものであり、こちらは救急隊の特定行為により抗不整脈薬の投与が可能であり日本とは大きく状況が異なります

ガイドラインでの推奨も無い以上は積極的に行う根拠は乏しいと思います

一方でVCには可能性を感じます

特に追加で必要なものもなく、ただパッドを貼る位置を変えるだけで良いので実現可能性は高いですね

パドルでは出来ないので、必ずパッドを使う事が難点ではありますが

以上、本日は致死性の心室性不整脈についてでした

また次回、ではでは

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