今回は続けて上室性不整脈シリーズで、narrow QRS tachycardiaについて扱っていきます
まず重要な点としてnarrowかwideかの評価です
wide QRSは上室性頻脈のこともありますし、致死的な心室性不整脈の場合もあり、基本的には専門医の評価が必要になります
しかし逆にいえばnarrow QRS tachycardiaは必ず上室性ですので、非専門医でもある程度は対応出来なければいけません
鑑別で重要なのは、脈が整か不整か(regular or irregular)です
irregularの場合はほぼAFなので問題になることは少ないですが、regularの場合には様々な不整脈があり得るため鑑別が難しくなります
鑑別としてはこの4つが挙げられます
①心房粗動(Atrial Flutter:AFL)
通称「フラッター」ですね
これは心房拍数240-440bpmほどのマクロリエントリー性の頻拍です
AFに移行することもありますし、移行せずとも抗凝固を検討することが必要です
②心房頻拍(Atrial Tachycardia:AT)
続いてATですが、こちら定義がとても曖昧です
狭義のATは心房から規則正しく興奮が波及していくものを指しますが、広義のATでは”心房”の”頻拍”であれば大抵を含むためAFまで内包することがあります
イメージはこんな感じです
実臨床では流石にAFは明確にAFと区別していますが、この辺の鑑別に苦慮する症例をなんとなく「AT」と呼称しているケースは散見されますね
ではどのように鑑別するかですが、AFLがマクロリエントリーなのに対してATは同心円状に広がっていくイメージです
波形で言うと等電位線がみられていれば、ATの可能性が高くなります
心房拍数も異なるのですが、脈拍としては判断出来ないのでこちらでの鑑別は困難でしょう
また等電位線も頻脈発作時には正直見えないことがほとんどです。。。
そのため区別が曖昧であることから、専門医でも心房頻拍・粗動(AT/AFL)と表記することもあります
③発作性上室性頻拍(Paroxysmal SVT:PSVT)
正常での伝導では房室結節においてslow pathwayとfast pathwayがある中で、slow pathwayは戻ってきたfast pathwayの伝導と相殺され消えます
そのため結局fast pathwayの伝導のみが伝達されるのです
しかしPSVTでは先にslow pathwayを通ることでfast pathwayも逆行性に伝導します
これが逆行性P波といわれるサインになります
またリエントリーの部分によってAVNRTとAVRTと分けることができます
ただいずれにしてもnarrow QRSでの発作波なら治療は変わりませんので、鑑別する必要はありません
注意が必要なのはnarrow QRSでは無い時です
例えばAVRTの1形態であるWPW症候群においては、AF rhythmと相まってKent束を順行伝導してPseudo VTをきたすことがあります
この場合に房室伝導を止めてしまうとVT/VFに移行するため、プロカインアミドかcardiovergionのどちらかが治療選択肢となります
禁忌といわれる薬剤はABCDで覚えることができます
まとめると、鑑別は以下のflowになります
まずはregularかどうか、続いてATP投与を行います
これで房室伝導を止めるため、PSVTなら止まる可能性があります
もし頓挫すれば100%PSVTです
止まらなかったとしても延びた時の波形でP波が間欠的で頻回でなければPSVTと考えられます
さて、いかがでしたでしょうか
頻度の高い疾患ですので、きちんと対応できるようにしたいですね
本日はこのあたりで、ではでは
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