ERとICUでのエコー③

まとめ

今回はエコーについて、3本構成の最終回です。

内容としては主にプロトコル関連と、最後におまけの話をしようと思います。

RUSH exam

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RUSH(rapid ultrasound in shock)の略で、ショック患者を目の前にした時にショックの血行動態を掴むために行うPoCUSです。

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大きくpump、tank、pipeの3つに分かれます。

つまりは

pump→心臓に問題が無いか

tank→容器、つまりは体腔内に液体が無いか

pipe→管、つまりは血管に問題が無いか

を評価するプロトコルです。

pipeのDVT自体は直接ショックの原因にならないので、割愛してしまうことも多いですね。

ただDVTを除いても30秒以内に評価する事が求められており、これをマスター出来ると明らかに重症患者の蘇生の質が上がります。

ただし何点かpitfallsがあるので以下に挙げていきます。

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まずはACSの機械的合併症やIEで起こるacute MRです。

MRは時間がかけて出来るので左房が大きくなり代償出来ますが、急性に起きた場合は外科的治療が必要になショックになります。

こちらはvEF、要は見た目のEFは凄く良くなってしまうのでカラードップラーを乗せないと容易に見逃します。

末梢冷たくて心拍出量少なそうなのに、、、動きめっちゃ良いなぁ、、、って時はボリュームが足りないかacute MRきたしていることを考える必要があります。

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またRUSHは素晴らしいプロトコルですが、絶対では無い事を知っておく必要があります。

特に臨床的に閉塞性ショックを疑う状況がある場合(例えば右心圧やCVP上昇、脈圧の低下)には、心外術後なら血腫の評価をします。

その際に経胸壁エコーでは限界があり、右房の血腫は見えない事がほとんどです。

この場合には決してエコーのみで否定せず、経食道エコーやCTできちんと評価することや、時間的に余裕が無ければ開胸することも考える必要があります。

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最後にみんな大好きなIVCについてです。

とても頻用されている指標ですが、大きさは全く参考になりません。

それは術者により当てる場所も違うし、切り方も斜めになる場合があるからです。

唯一言えるのは高度虚脱の場合にのみ、CVPが低いと使える程度です。

多くはそれって見なくても分かるくらいなので、実臨床であまりIVCに依存する機会は少なくなっていますね。

個人的にはCRPと同じで、「見ても全然良いけど正しく使えますか?」ってとこに問題が集約する指標だと思っています。

CASA exam

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続いては心停止の際に行うCASA(Cardiac Arrest Sonographic Assessment) examについてです。

心停止のバタバタの中でエコーって大変ですが、とても有益なものになります。

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基本的には蘇生時において絶え間の無いCPRが最も重要とされています。

そのためエコーを必要以上に長く行いCPRが中断されてしまうと本末転倒になるため、RUSH以上に最小限の時間での評価介入が求められます。

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実際の評価は1つの項目につき10秒以内(!!)と、かなり時間的にシビアです。

波形確認の合間に頸動脈を触知しながら並行して行うことでCPR中断時間を最小限にすることができます。

原則はCPAの中でも何か原因があるはずなPEAに対して行います。

まず初回で心襲水を確認し、タンポナーデの有無を評価します。

見つかればPEAのtreatableな原因であり、他よりは予後が良いと言われています。

続いて2分間のACLS後に右心負荷を確認します。

心停止中なので本当に見た目の評価でD shapeがあるかどうか程度ですが、仮にPEらしさがあるなら他のPEAよりは打つ手があるので予後は良いとされます。

そして次のタイミングで壁運動をチェックします。

PEAも二種類あり、心拍動(cardiac activity)があるかどうかが重要です。

心拍動すら無い場合にはEtCO2の値なども含めて、蘇生中止のタイミングを考えることも必要です。

そしてこれらの合間にEFASTも施行しましょう。

EFASTはCPRの横からでもできますね。

最後に

エコーの進化は凄まじいです。

パッチ型で貼っておくだけで持続的に見てくれるものや、deep learningによりAIが「時計回りに回せ」などと指示を出すことで最適なviewを出すことが出来る機械も出ています。

詳しくはこちらから動画が見れますので、ご参照ください。

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ただ一番伝えたいこととしては、「超音波」の時代では無いということです。

あくまで超音波は病歴や身体所見があって力を発揮します。

「聴診器を超えた身体診察tool」という意味で「超診器」という表現が自分は好きです。

どうか身体所見をおざなりにせず、エコーの力を存分に使ってみてください。


さて、これで3回に分けてのエコーシリーズは終了です。

他にもこんなことに使えるの?!っていうネタは色々ありますが、機会があればまとめてみようかと思います。

本日はこの辺で、ではでは。

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