本日は昨今話題になっている多職種連携についてです
多職種連携とは医師、看護師、薬剤師、臨床工学技士などの多様な職種が協力して、より良い医療を患者に提供するものです
一言で言ってしまうとシンプルですがとても奥深い概念であり、昨今は働き方改革が抱える課題に対する一つの答えになりうる可能性から注目されています
多岐にわたる内容のため、2回に分けての内容にしたいと思います
多職種連携の提言
1969年に米国集中治療学会(Society of Critical Care Medicine:SCCM)が創設されました
この創設メンバーの一人であるAke Grenvikが残した言葉に以下のものがあります
“重症患者への最適なケアは医師や看護師たちが共に問題解決に取り組む事で与えられる”
Crit Care Med. 1974 Jan-Feb;2(1):6-10.
実は既にこの頃から多職種連携の重要性は認識されていました
そして2001年になりようやく出た「ICUチームメンバーの役割に関するガイドライン」でも、6つの信条が提示されました
Crit Care Med. 2001 Oct;29(10):2007-19.
しかし当時はこれらの恩恵がエビデンスとして示されておらず、根拠が乏しい状態でした
ICU構造モデル
巷ではよく「Open ICU」「Closed ICU」なんて言ったり、あるいは「semi-closed ICU」なんて表現をする場合があります
実は他にもHigh intensityやLow intensityといった分類もあります
これらを図で分けるとこのようになります
J Intensive Care Med. 2010 Jul;25(4):233-9.
それぞれの定義は以下の通りになります
Closed | 専任のICUチームがケアする |
Open | 各科の担当チームがケアする |
High Intensity | 日勤帯で集中治療医との相談が必須 |
Low Intensity | 日勤帯で集中治療医との相談が任意 |
つまりColsed ICUは必ずHigh intensity ICUであり、Low intensity ICUは必ずOpen ICUになります
・・・ややこしいですね笑
古くはClosed ICUが良いと言われ、実際High Intensity ICUがLow intensity ICUより死亡率が低かったという報告もありました
Crit Care Med. 2013 Oct;41(10):2253-74.
しかし2013年に発表されたRCTが界隈に大きな衝撃を与えました
それは夜間も集中治療医を常駐した群と日中のみの配置でICU死亡率に差がなかったというものです
N Engl J Med. 2013 Jun 6;368(23):2201-9.
むしろ毎日のケアプランの見直しや看護師配置の増加が予後に影響を与えました
集中治療医はいらないのでしょうか。。。
もちろんそんなことはなく、日中にガイドラインやバンドル遵守できているか介入することによる恩恵が極めて大きく、一方で夜間にまでそのような介入は求められていないという意味合いになります
そのため「Closed」である必要はありませんが、「High intensity」であることが求められるのが現在のトレンドです
High intensityの中で、Openが良いのかClosedが良いのかはまだ答えが出ていない分野になります
これらのエビデンスを受け、2015年にはSCCMタスクフォースも
『集中治療医主導のHigh Intensity Teamは、ICUで効果的にケアを提供するうえで必要不可欠』
と結論付けています
Crit Care Med 2015;43:1520-5.
あるべきリーダー像とは
では「集中治療医主導」とありますが、具体的にはどのようなリーダーであれば良いのでしょうか
リーダーシップ像には以下の3種類があります
支配型リーダーシップは古典的なリーダーがぐいぐい組織を引っ張っていくもので、多職種連携という観点からはあまり薦められていません
しかし未熟な組織の創成期にはこのような形にもメリットがあると言われています
次にサーバントリーダーシップですが、これはメンバーに支援的に介入しファシリテーターとして振る舞うものです
最後にシェアドリーダーシップという概念もあり、こちらはリーダーを受け渡すことで個人の能力を最大限に発揮できるよう促す姿勢です
今後の集中治療医に求められていくのは「積極的に意見を出しやすいサーバントリーダーシップ」と「リーダーシップを引き出すシェアドリーダーシップを併せ持つ」ことと言えるでしょう
さて、いかがでしたでしょうか
後半では
・多職種連携と患者転帰
・多職種連携による経済効果
について話をしようと思います
ではでは
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