本日はBMJより誤嚥性肺炎に対する英国胸部医学会(British Thoracic Society:BTS)の声明についてです
〈本論文の一言まとめ〉
誤嚥性肺炎には予防がとにかく大事、口腔ケアや体交前の吸引、ACE阻害薬など
嫌気性菌カバーはリスクに応じて検討すると良い
A John Simpson, Jamie-Leigh Allen, Michelle Chatwin, et al.
BTS clinical statement on aspiration pneumonia
Thorax. 2023 Feb;78(Suppl 1):s3-s21.
この声明では誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia:AP)に対して、疫学、病因、予防、診断、管理について述べている
・総論
APは細菌が豊富な口腔咽頭または腸管分泌物が、肺に微量の誤嚥(microaspiration)を起こすことが原因
高齢化が進むにつれて、より大きな問題になってきている
全ての医療施設に口腔ケアのスペシャリストが最低でも1人は必要とされる
特にこの声明では嚥下障害は栄養失調、脱水、死亡につながるリスクが高いため、予防に重点をおくべきとされている
・予防
予防については良好な口腔衛生環境がAPの発生率を低下させることが示されている
病院や介護施設の患者の場合、少なくとも1日2回は泡立たない歯磨きを使用して柔らかい歯ブラシで歯、舌、口蓋を磨くことが必要
APリスクがある患者は口腔検査を行い、感染症、歯列評価、食物残渣、粘膜の清潔さなどを確認する
クロルヘキシジンでのうがいは病原菌の定着は減らしたが、患者転帰を改善させはしなかった
ただ心外術後の患者層ではVAPを減らした報告があり、これらの患者層にのみはクロルヘキシジンうがいは利点があるかもしれない
嚥下障害があれば言語聴覚士に介入してもらう
嚥下障害があるが終末期の患者でなければ、早期に経鼻胃管での栄養により転帰が改善する
脳卒中後にAPリスクのある中国人と日本人患者では、APリスクを低減するためにACE阻害薬を処方する
この研究ではサブグループの白人では、明確な利点は示せず他の民族で行うにはエビデンスが乏しいが、ACE阻害薬によるサブスタンスPレベルの回復が治療目標になる報告もある
挿管チューブは効果的にAPを引き起こし、VAPに至る
体交前の吸引がVAPと死亡率に良い影響を与える可能性が小規模な研究で示唆されている
・診断
胸部X線ではCTと比較して最大25%の症例でAPを検出できない
年配の患者は若い患者と比較して全身の炎症反応が鈍くなる可能性がある
・管理
最近の抗菌薬投与歴、微生物学検査結果、患者状況などから抗菌薬レジメンを決定する
APは5日間の抗菌薬投与が適切
嫌気性菌が転帰に悪影響を与えることが証明されておらず、次第に重要性の低い病原菌となってきておりルーチンでの嫌気性菌カバーは行う必要がない
嫌気性菌リスクが高い場合、例えば歯周病、汚い喀痰、肺膿瘍や膿胸が疑われるなどでカバーを検討する
その際には嫌気性菌カバーの薬剤(TAZ/PIPC etc)にするか、MTZを併用するか
大きく驚くような内容はありませんでしたね
嫌気性菌カバーっていつも悩むところですが、本当は不要なんでしょうね
ただ口腔衛生環境が悪い症例とかでは入れたくなるので、結局使っていることが多いと思います
体感で嫌気性菌カバーしてる方が良かった、というexpert opinionを聞いたこともありますがどうなんでしょう
書いてある通り、症例に応じてが良いんでしょうかね
あと脳卒中後の場合には特にACE阻害薬入れるのが良いみたいですね、意識して入れていくようにします
今度、嫌気性菌の話を少し調べてみようと思います
ではでは
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