今日はJACCより、CCUにおける人工呼吸器離脱についてのreviewです
基本戦略は通常のSATやSBTを行い、挿管管理となった原因が解除されているタイミングで早期に抜管で良いと思います
ただ背景に心疾患がある場合には、特にPEEPの影響など大きくなるのでその辺りの評価がポイントでしょうか
〈本論文の一言まとめ〉
循環器疾患でも基本的な抜管戦略は同じ
PEEPが影響している病態が多いので、エコーなども併用してE/Aやe’なども評価すると良いかも
JACC Adv. 2023 Jan, 2 (1) 100173
Andi Shahu, Soumya Banna, Willard Applefeld,et al.
Liberation From Mechanical Ventilation in the Cardiac Intensive Care Unit
CCUにおける呼吸不全症例はより一般的になっています
そして人工呼吸器管理は患者を救命する可能性がある一方で呼吸器関連障害、感染症、筋力低下といったデメリットも伴います
そのため可能な限り早く呼吸器から離脱することが求められるのです
抜管に向けてはまずSpontaneous Awakening Trial(SAT)を行い、鎮静薬を減らした状態で落ち着いて過ごせるか確認します
続いてSpontaneous Breathing Trial(SBT)を行い、呼吸器のサポートを減らしても問題が無いかを評価します
このあたりの手順はCCUだから特別変わりがあるわけでは無いですね
このSBTの手法についても色々な意見がありますが、SBTの厳しさを感度と特異度で表現しています
つまりは厳しい順にTピース、CPAP(PEEPのみ)、Pressure Supportとなります
Tピースまで行なってSBTクリアすれば、高率に抜管できるでしょう
ただ感度が落ちているので、クリアしていない人たちにも問題なく抜管できた人が混ざっている可能性があるのが注意点ですね
Pressure SupportでのSBTで十分という報告もあり、「厳しめSBT」をどこまで行うかは意見の分かれるところでしょう
本レビューでもそこの使い分けには言及されていませんでした
実臨床ではPEEPの影響が大きそうな症例では、試しにPEEP外してみるというpracticeになることが多いですね
それで失敗したときが悩ましいのですが、成功すればある程度の根拠を持って抜管に進めるという形です
面白いというかCCUらしいと思ったのは、SBTと拡張機能障害(左室内圧上昇)の関連について触れているところです
E波、e’波がSBT失敗に関連していたという報告は後述するPEEPの意義にも関係していそうです
ただこちらは多くが後ろ向きの小規模な研究で、前向きの研究結果が待たれる領域のようです
特に心疾患で人工呼吸器から離脱する際に気になるのがPEEPが外れる事ですね
Tピースと比べてPEEPとPSを追加することで、患者仕事量を30-40%軽減した報告もあります
またPEEPが外れることで前負荷および後負荷が増大し、PCWPの上昇や肺水腫の発症に繋がることが懸念になります
PEEPにより右室および左室への前負荷、静脈灌流を減らし、左室の張力、酸素消費量、後負荷を減らすことで左室仕事量を軽減することが示されています
実臨床でも特にlow EFの方ではPEEPの影響を強く感じることがありますね
逆に面白いのは左室流出路狭窄がある病態ではむしろPEEPを外す事で後負荷が増えるため、圧較差が減り血行動態が改善することや前負荷依存状態(右心不全、タンポナーデ、HOCMなど)でもPEEPを減らす事で循環が改善したりすることです
また鎮静薬についてもICU領域でベンゾジアゼピンを避けるのは広く知られていますが、循環という観点では心拍出量を落とさず心室内圧を下げる可能性があり、心原性ショックでは特に利益があるかもしれないようです
ただその点を加味した上でも、アルコールやけいれん発作などを除けば可能な限り使用は避けるべきとしています
あとはMCS症例での抜管についても触れていました
確かにECMO管理中などは挿管チューブも不要なデバイスになるので、抜去することも理論上は可能です
ただほぼ100%再挿管にはなるので、喉頭展開をもう一度することを考えると挿管したままの施設が多い印象ですね
まとめると多くの戦略は普通の疾患と同じですが、特にPEEP管理についてはより慎重になる方が良いということでしょう
また別記事で抜管や挿管について扱おうと思います
ではでは
コメント