補助循環〜VA-ECMO〜

まとめ

今日は簡単にですが、補助循環シリーズでVA-ECMOについて扱います

VA-ECMOのメカニズム

まずメカニズムについてです

上の図のように太い脱血管で静脈から血液を引き抜き、送血管で動脈に酸素化された血液を戻しています

緊急時には図のような大腿動静脈を使ったVA-ECMOが確立されることが多いです

他には右の内頸静脈も脱血に際しては使用頻度が高いです

これ以外にも人工血管など併用すれば、比較的いろいろなところからアプローチすることが出来ます

VA-ECMOの適応

効果として特徴的な点に「高用量のフローがとれる事」が挙げられます

これは他のMCSと大きく差別化される点であり、さらに左心不全だけでなく右心不全や呼吸不全の合併にも対処できることがメリットです

そのため適応疾患としては治療抵抗性の心原性ショックや可逆性の高い病態が背景にある(肺動脈血栓塞栓症、薬物中毒、偶発性低体温など)高度の循環不全が挙げられます

ただ実際には症例に応じて考えることが多く、これら以外の適応でもECMO管理が導入される症例もたまにみます

VA-ECMOの管理

簡単な総論的な内容について以下に順番に記載します

①フローや圧

まずは肝心要のフローが十分とれているかを確認します

体格や自己心の拍出量にも依存しますが、ECMOに完全に依存するなら60ml/kg/minは維持することが目標です

現場では3-4L/minを目安にすることが多いですね

この時にいくら回転数を上げてもフローが取れないことがあります

その場合には圧モニタリングを確認します

例えば脱血圧が低すぎるなら血管内volumeが足りないと考えて輸液負荷をしたり、膜前が高すぎるなら膜の劣化を疑ったり、膜後が高すぎるなら送血管の閉塞や圧迫、折れなどを想定したりします

これが担保されていないとECMOを入れて満足しているけれど、本質的な臓器補助が出来ていなかったということになりかねませんので注意が必要です

②ブレンダー

ブレンダーはCO2調整になるので、最初はECMO flowと同量にしてそこからCO2の値みながら微調整していきます

③人工呼吸器

基本的には人工呼吸器に依存していないことが多いので、「rest lung」と呼ばれる設定で肺を休ませることが慣例です

その際には駆動圧はかけすぎず、高濃度酸素も控えます

ただ無気肺は可能なら避けたいので、必要なPEEPのみはかけておく設定が多いです

ですが注意が必要で、仮に自己心が立ち上がってくると自己の血流が肺を回ってしまいます

この時になんとなくrest lung設定のままだと酷いことになり、酸素化が全く維持されなくなります

なのでその予兆に気付けるよう、SpO2モニターやAラインを右上肢に留置することで酸素化の変化をすぐに確認できます

これはmixing zoneと言い、最初に自己拍出が増えたときに流れてくるのが解剖学的に右上肢になることが理由です

④DO2担保

DO2:VO2が健常人では5:1程度と言われています

ECMOでの目標は最低でも3:1以上であり、2:1を下回るとcritical DO2と呼ばれ嫌気代謝が回り始めてしまいます

目安としてはSvO2を指標にすることが多いです

⑤血液検査

ECMO中には血栓との戦いですので、抗凝固は基本的には必須です

しかし目標値はガイドラインや出血状況、施設により大きく異なります

目安はこのようなものと考え、自施設の知見と合わせて確認してみてください

⑥心エコー

昨今の集中治療室では必須の機材です

VA-ECMO中には心エコーを必ず当てる必要があります

それは自己心がどれくらい立ち上がってきたかということや、大動脈弁がきちんと開放しているかの確認を行うからです

大動脈弁が開放している(通称LV vent)と血栓形成するリスクが低く、逆にECMOフローに押されていると大動脈弁が開かなくなりLV内で血流が淀み血栓化する可能性があります

またそれらの血栓の確認やデバイスの位置確認という役割もあります

⑦下肢の色調

続いて頻度の高い合併症に下肢虚血があります

これは送血管の穿刺が低位であったり、ルーメンが太すぎたりすると起こります

当然この先には血液が流れていかないため虚血になります

そのためリスクが高い症例や症候性の症例は逆向きに末梢側に向けて細めのシースを留置し、ECMOからの血流を順行性に送ります

ただこちらの留置の意義難しかったり、血管に対して送血管が太すぎるわけでなければ様子をみてしまうことが多いです


さていかがだったでしょうか

今回はVA-ECMOの導入から基本管理までお話しました

本当はもっと細かい話がいろいろあり、肝心の離脱についても触れていません

また落ち着いたら補足しようと思います

なお、今回の内容はほとんどがThe ELSO Red Book 6th Editionより引用しております

Extracorporeal Life Support: ELSO Red Book, 6th ed.: 洋書/南江堂
Extracorporeal Life Support: ELSO Red Book /Brogan, 6th

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今日はこの辺で、ではでは

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