昇圧薬の使い分け ~強心薬編~

まとめ

今日は昇圧薬の使い分け、特に強心薬について話していこうと思います

再喝ですが、以下に簡単にまとめた表を上げておきます

順に解説していきます

ドパミン(プレドパ®︎、イノバン®︎、カコージン®︎、カタボン®︎)

特徴は

・投与量で効果が変わる

・以前は敗血症の第一選択

です

以前は敗血症性ショックの第一選択はノルアドレナリンorドパミンでした

具体的にはSSCG 2004/2008ではノルアドレナリンと同列の扱いになっています

しかし2010年のNRJMからのRCTで状況は変わりました

この結果、ショックの治療でドパミン群の方が不整脈の有害事象が有意に増えたことが示されました

そして心原性ショックの群に至っては有意に死亡率が上昇する、ショッキングな結果でした

N Engl J Med. 2010 Mar 4;362(9):779-89.

これを受け、SSCG 2012からはドパミンはあくまでノルアドレナリンの代替薬に留まるという表現で格下げされてしまったのです

Crit Care Med. 2013 Feb;41(2):580-637.

実臨床でショックの時に使うことはもう無いのでしょうか?

ですが、必ずしもそうではないでしょう

例えば看護師が不慣れな場合、ショックがあまり発生しない状況など、すぐにノルアドレナリンが出てこないことがあります

自分も田舎の病院で指示してようやく出てきたら、合計53ml(NAD 3ml+NS 50ml)のやや薄ノルアドの事がありました笑

そんな時にドパミンは最高です

なにせキット製剤(あるいはバッグ製剤)で、あっという間に投与開始できます

しかも体重ごとの目安の投与速度も書いてあります、めっちゃ親切!

避けられたCPAを防止できるかもしれませんね!

元々は「命の番人」という意味で「イノバン®︎」と名付けられたようですが、センスを感じます

一方でRenal dose DOAなんて表現で、低容量だと腎保護作用があるのでは?とも言われていました

こちらに関しても、昨今では否定的な見解が多いです

結論としては腎血流や尿量は確かに増えるかも、という報告があるものの、それが腎機能障害や死亡に影響を与えるかは示されていないというところです

むしろ腎機能障害の原因によっては、近位尿細管の酸素需要を増やすことでより腎障害をきたす可能性もあると言われており良い事をする保証はありません

J Intensive Care Med. 2005 Jul-Aug;20(4):199-211.

位置付けは下がってしまった薬剤ですが、古くからある良い薬だと思います

ただ現実問題、使うとすれば超緊急時や陽性変事作用を期待する徐脈ショックの症例くらいでしょう

ドブタミン(ドブポン®︎、ドブトレックス®︎)

特徴は

・強力なβ1受容体刺激作用

です

ドブタミンはβ1受容体作用をし、強心作用および心拍数増加作用が期待されます

特にドブタミンは陽性変力作用が強く陽性変事作用が弱いため、不整脈を起こさずに心拍出量を増やすことができます

・・・まあ、実際はよく起こるんですが、少ないとされています

効果発現も早く、基本的には強心薬としては第一選択になる薬剤です

PDEⅢ阻害薬(ミルリノンetc)

特徴は

・β受容体を介さない強心作用

・cAMPが増えることで血管拡張、血圧低下する場合も

です

代表的な薬剤にはミルリーラ®︎ (ミルリノン)、コアテック®︎ (オルプリノン)、アムコラル®︎ (アムリノン)があります

この中でアムコラル®︎は製造中止でもう使えません

機序としてはドブタミンが作用するβ受容体の先で、cAMPを分解するPDEⅢを阻害します

それによりドブタミンと同様の強心作用を得る事ができます

これらの使い分けは強心作用と血管拡張作用のバランスです

一般的にミルリノンの方が強心作用が強く血管拡張作用が弱いので、これがPDEⅢ阻害薬の中では第一選択になります

ただミルリノンは虚血心の際にアウトカムを悪くしたデータがあり、やや使用が躊躇われます

とは言っても、使用感もミルリノンとオルプリノンでそんなに差はないという意見が多く、ここの使い分けをこだわる人は少ない印象です

ドブタミンとPDEⅢ阻害薬

ではドブタミンとの使い分けはどこにあるのでしょうか

NEJMで出たDOREMI trial(ミルリノン vs ドブタミン@心原性ショック)が有名ですが、こちらではアウトカムに差は付きませんでした

N Engl J Med. 2021 Aug 5;385(6):516-525.

しかし複合アウトカムである点や、ミルリノンの治療効果を高く見積りすぎというlimitationもあります

一方でPDEⅢ阻害薬に関しては、腎排泄で蓄積しやすく、作用発現が遅い点もドブタミンに劣ります

ただ肺血管抵抗を下げるため右心不全には良いとも言われています

生理学的に考える使い分けポイントとしては

①β受容体遮断薬との兼ね合い

元々内服している場合などで受容体がdown regulation(麻痺して応答しなくなってる状態)している際には、ドブタミンよりPDEⅢ阻害薬の方が良いことを経験します

②腎機能障害

PDEⅢ阻害薬は蓄積し、不整脈イベントを増やすとされ注意が必要です

③右心不全

肺血管抵抗を下げるため、PDEⅢ阻害薬が良いかもしれません

④虚血心

虚血心では有害なデータがあり、ミルリノンの使用は注意が必要です

以上、強心薬についてでした

血管収縮薬と違って、虚血にも関与してくるので難しいですね

特に冠動脈病変が疑われている場合には、ドブタミン開始すると心筋仕事量が増えるので危ない症例もあります

場合によっては循環器の目を入れてからの使用が好ましいので、扱いが大変です

今日はこの辺りで

ではでは

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