補助循環〜Impella〜

まとめ

さて今回は補助循環シリーズ最終回のImpellaについてです

後半は少し難しい内容もあります、ゆっくり読んでみてください

Impellaとは

Impellaは経皮的な左室補助人工心臓(LVAD:Left Ventricular Assist Device)です

海外には右心用もありますが、本邦で使えるのは現状はLVADのみです

カテーテル操作で留置することが出来るので、非常に低侵襲ながらも強力な左心サポート機能を有することが魅力になります

メカニズム

仕組みはシンプルで左心室内からポンプでくみ出した血液を順行性に大動脈へ駆出します

これにより心拍出量を増やし臓器灌流を改善させ、なおかつ心仕事量を減らしつつ冠血流を増やす作用が期待できます

また特徴として「パージシステム」があります

こちらはモータの血栓化を防ぐために血流と逆方向に圧でバリアを作っています

このパージ液はメーカー推奨ではブドウ糖液+ヘパリンになりますが、これがクセ者です

もちろんヘパリンが入るので凝固異常があると、凝固延長につながることもあります

また対交流でモータもあるので破砕による溶血がとても多いのも特徴です

ただ意外と使用期間が終わって抜去しても血栓ほとんど付いていない症例もあり、ヘパリン入れずのパージ液にしている施設もあるようです

まあ大抵は抜去時にみると血栓でデロデロになってるイメージですが、、、

適応

基本的な適応は治療抵抗性の心原性ショックです

欠点として右心機能サポートや呼吸サポートはありませんので、心原性ショックでも右心不全の場合には使えませんし呼吸が悪い場合にはVA-ECMOの方が良いcaseが多いです

また何よりも大事なのが、、、とにかく高価です

一応、CABGの術中サポートに使ったり、ハイリスクPCIで併用したりという報告もありますが、特に適正利用について考えなければいけないデバイスになります

おそらくImpella認定施設では各々でプロトコルが存在していると思われます

海外の有名な導入プロトコルにDETROIT CSIプロトコルがあります

まず速やかに心原性ショックを認知し、LVEDPを計測します

そしてLVEDP≧15mmHgであればImpellaを考慮します

大事なのはSTEMIでもPCIを先にするのでなく、ImpellaによるLV unloading(左室の減圧により心仕事量を減らす事)を優先する事です

モニタリング

Impella管理の肝は位置異常です

モニター波形をみて、モーター波形がフラットになっていると異常な可能性があります

こちらは吸入部と吐出部の圧較差をみているので、同じ腔にいる(=脱落して落ち込んでるか、深すぎるかのどちらか)という可能性が考えられます

特殊な管理ではこう見える事もあるので、後述します

もちろん波形も大事ですが、エコーも重要です

Impellaのサイズに応じて先端からの位置と先あたりしていないかを評価する必要があります

例えば乳頭筋を噛んでしまい断裂し、Acute MRをきたした報告もあります

そのためサクションアラームの時には上記の位置異常を考えつつ、volumeの問題や右心不全で右から左に周っていない可能性を想定しつつ介入します

Impellaの最大の魅力(心仕事量の観点から)

Impellaの最大の魅力は?と聞かれれば、やはり究極的な心保護に尽きると思います

こちらは心仕事量のイメージ図でPV loopという概念です

SW(stroke work)=心外部仕事量、PE(potential energy)=心内部仕事量の略です

これらを足したものがPVA(pressure volume area)(SW+PE)で心筋酸素消費量に相関します

こちらについてはまた後日に別記事で解説しようと思いますが、これが小さければ心臓の負担は少ないと理解していてください

Impellaの管理にはおおまかに3段階あります

見分け方は上の図の通りです

何もしていなければPartial support止まりで、脈圧が消えていればTotal support以上にはなります

ではどう違ってくるのでしょうか

このImpellaのサポートですが、度合いに応じて心仕事量を大きく減らすことが出来ます

少しのPartial supportでも多少は減りますが、Total supportやTotal unloadingでは劇的に心仕事量を減少させます

この研究は動物実験でイヌを利用し、病理で心筋梗塞範囲を検出していますが、理論通りに有意にサイズを減少させています

なぜここまでの違いが出るか、その理由の一つは冠血流の担保にあります

Total support以上では収縮期にも冠血流が流れるので、心臓にとってはとても良い管理になります

ただこの管理は十分なflowが必要で、原則Impella単独では難しくVA-ECMO+Impella(通称Ecpella)でなければ達成は出来ないと思われます

ではとりあえず脈圧を消せば良いのかといわれると、それも誤りです

きちんとMAPを下げなければLVEDPが高く左室がパンパンに張っている可能性もあります

さて、以上がImpellaについてのざっくりとした説明でした

厳密にはもっと難しい内容もありますが、自分の理解としてはここまでです

またup dateして記事にしていこうと思います!

最後に 〜補助循環の使い分け〜

さて3回にわたりIABP、VA-ECMO、Impellaと補助循環について扱ってきました

使い分けを表にしましたので供覧いたします

どれも素晴らしいデバイスではありますが、使い分けと適正利用を心がけることが重要です

IABPとVA-ECMOについては過去記事を参照ください

IABPについて

VA-ECMOについて

本日はこの辺りで、ではでは

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