今日からは補助循環についてまとめていこうと思います
まず初回はIABP(intra aortic balloon pumping)についてです
IABPとは大動脈内にバルーンを留置し、心拍出に合わせてバルーンが収縮するものです
ガスは分子量が小さく抵抗が少ないことからヘリウムガスを使用しています
・・・水素はもっと軽いのですが、危ないから使用しません
なおヘリウムは血液に溶解しませんので、バルーン損傷があると空気塞栓を起こす可能性があります
禁忌はModerate AR以上では逆流を増やすのでダメ、大動脈瘤や蛇行、狭窄でも破裂のリスクあり避けた方が良いでしょう
心原性ショック、心室中隔破裂、乳頭筋断裂によるMR、ハイリスク症例でのPCIサポートなどが良い適応とされています
IABPの効果を1枚で表すと次の図になります
効果は大きく2つに分けられます
①拡張期に拡張
左の図にある通りで、拡張期に拡張することで冠動脈に血流が増えます
すなわち大動脈拡張末期圧を上げて、冠血流を増やす(diastolic augmentation)作用が期待できます
②収縮期に収縮
右の図にある通りで、後負荷を下げて心拍出を増やす(systolic unloading)作用も期待できます
これらを踏まえてIABPが”効いている”状態というのは、
このようにバルーンが入る前後の圧波形を比べることにより、前述のdiastolic augmentationとsystolic unloading作用が視覚的に確認出来ます
IABPは生理学的には良いことをしてくれるのが分かっており、とても良いMCSと言えるでしょう
しかし、、、臨床試験の結果は全く異なっています
多くの人がショックを受けた臨床研究にIABP-SHOCK Ⅱtrialがあります
こちらの研究により、IABPは薬物治療に優位性を示すことが出来ませんでした
そのためガイドラインの推奨も下げられてしまっています
ではもう役立たずの古いデバイスなのでしょうか??
・・・そんなことはなく、生理学的には有用なのは既出の通りです
重要なのは効果をよく考えることです
IABPのサポート力はほとんどは圧補助で、単に冠血流を増やすだけです
流量補助はたったの0.3-0.5L/minとされ、ECMOの1/10程度で微々たるものです
そのためハイリスクPCIなど冠血流の問題がある人には劇的に効果を感じる症例にも出逢います
ただ確かにパワー不足となってしまうこともあるので、症例を選んで使うことが大事になるでしょう
本日はこの辺で、次回はECMOを扱います
ではでは
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