今回はガイドライン解説をしていこうと思います。
扱うのは肺動脈血栓塞栓症(Acute Pulmonary Embolism:PE)です。
Writing Committee Members*; Creager MA, Barnes GD, Giri J, Mukherjee D, Jones WS, Burnett AE, Carman T, Casanegra AI, Castellucci LA, Clark SM, Cushman M, de Wit K, Eaves JM, Fang MC, Goldberg JB, Henkin S, Johnston-Cox H, Kadavath S, Kadian-Dodov D, Keeling WB, Klein AJP, Li J, McDaniel MC, Moores LK, Piazza G, Prenger KS, Pugliese SC, Ranade M, Rosovsky RP, Russo F, Secemsky EA, Sista AK, Tefera L, Weinberg I, Westafer LM, Young MN.
2026 AHA/ACC/ACCP/ACEP/CHEST/SCAI/SHM/SIR/SVM/SVN Guideline for the Evaluation and Management of Acute Pulmonary Embolism in Adults: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Joint Committee on Clinical Practice Guidelines.
Circulation. 2026 Feb 19. PMID: 41712677.
救急する上では避けて通れない疾患であり、何度も煮湯を飲まされてきた宿敵でもあります。
ERを主にしていた身としては診断学が非常に興味深いところですが、今回どのようになっているか楽しみです。
直近のガイドラインではメジャーなものだと2019 ESCからのガイドラインがあるかと思います。
今回はAHA主体のもので、アメリカ産ですね。
そのため前回出たLow,Intermediate-Low, Intermediate-High,Highという区分は使わないかなあ、と思っていましたがはてさて。。。
それでは早速解説していきますが、85ページあるので変更点のみに留めようと思います。
臨床分類
前回はGrade 1の推奨で4分類を割り当てることが書かれていました。
今回は推奨の記載が無くなり、分類も5段階で大きく変更になっています。
心原性ショックのSCAI分類を想定しているのでしょうね。

元のLow-Riskに相当するところは、カテゴリーAとBに細分化されました。
そして前回のESC2019で心筋傷害と右心負荷所見で細分化されたIntermediate-Low/Highですが、今回まとめてカテゴリーCに分類されました。
確かに今までの分類だと、心筋傷害と右心負荷のどちらがあるのか分からないので今回の変更はリーズナブルかもしれません。
もっとも煩雑になるので覚えられるかが問題ですが。。。
そして一番の変更点は重症の扱いが変わったことかと思います。

後述しますが、これが治療方針に大きく変わってくることになりそうです。
PERTsの推奨
世の中の流れを受けてか、PERTs(PE response teams)という多職種チームが推奨されるようになりました。
一応前回もGrade 2aで記載されていましたが、今回は一気にGrade 1になっています。

こちらに示したような色々なメンバーの協力が、良いアウトカムには必要不可欠ということでしょう。
死亡率の改善は示せていないけれども、様々な場面でアウトカム改善に寄与しているとのことで、かなり前のめりな記載ではありますね。
ただ時代のトレンドでもあるので、この記載自体には非常に納得です。
血栓溶解療法
ここは個人的にかなりの変更に感じました。

以前はHigh-RiskのみGrade 1の推奨でしたが、最重症のカテゴリーEでも出血リスクを考えながらのGrade 2aになりました。
でもこれは現場は元々出血気にしながら使っていたので、あまりプラクティスを変えることはなさそうです。
一方でかつてのIntermediate-Highでは血栓溶解を使いにくかったですが、今回の改訂ではかなり変わりましたね!
カテゴリーDでも血栓溶解を考慮するように明記されました。
こちらはガイドライン通りに投与しないこととする施設も多かったと思うので、現場のプラクティスを変えうるものですね。
ちなみに自分がいた施設はIntermediate-Highでも比較的血栓溶解療法を行なっていました。
カテーテル治療(血栓溶解+機械的血栓除去)

こちらも血栓溶解療法と同じようにHigh-Riskに限らず、症例に応じてカテゴリーD以上にはカテーテル治療も考慮して良いとのことです。
施設によっては治療戦略が大きく変わる可能性がありますね。
外科的治療

こちらも変更点としてはGrade 1がGrade 2a以下に細分化され、大きなポイントになります。
・・・とは言っても、正直いうと血栓溶解療法が禁忌だったり失敗したりした症例で外科的に血栓除去して助かった人を見たことありません。
大抵は好ましい状況ではないけどやむなくオペになった、、、というものでしょう。
特にカテ室のアクセスの良い日本においては、このガイドラインの変更以上に後ろ向きにさせられるような印象を受けました。
そういう意味では大きく日常診療は変わらないかもしれませんね。
さて、いかがだったでしょうか。
分類と治療法とPERTsという多職種チームの増設、という非常にシンプルながらも重要な変更点であり、PEに関わる医療者は必読の一本かと思われます。
PERTsをどうやって日本で普及していくかは難しいですね。
また今回は割愛しましたが、診断についてのD-dimerとCPR(Clinical Prediction Rule)の使い方なども強調されていました。
ぜひ正しく診断できるようになると良いですが、Eliser法のD-dimer(本文中のspesifically D-dimer)が使える病院ってほとんど無いのが泣きどころですね。
本日はこの辺で、ではでは。

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