今回から2週にわたり人工呼吸器の離脱について話していこうと思います。
今回の人工呼吸器離脱とは、すなわち抜管を意味すると考えてください。
今週は挿管の適応からSATやSBTという基本的な離脱評価項目までを扱っていきます。
そもそも論ではありますが、なぜ抜管を急ぐ必要があるのでしょうか。
ちなみに「最速で抜管する」ことと「絶対余裕だろうというところまで待って抜管する」というのは、どちらが正しいのでしょうか。
まず挿管期間が長引くとどうなるかですが、基本的には害しかありません。もちろんまだ状態が上向かず、挿管しているしかない状況はやむを得ません。その場合は挿管管理の恩恵が大きく、これらのデメリットを上回っているはずだからです。
しかし、「抜けなくはないけど念の為に待つ」というプラクティスは実は間違っています。
まず圧倒的に患者に害です。VAPのリスクも上がりますし、気道トラブル(喉頭浮腫や肉芽、声帯機能不全など)を増やします。
そして当然ICU管理が必要になるため、余計にICU滞在が増えてしまい患者負担および医療費の増大に繋がります。
では、いつ抜管を考慮すれば良いのでしょうか。
やはり少し良くなってきてから狙っていく、という施設が多いと思います。
ですが、大事なことは「常に抜管できないか」を考えることです。
例えばCVを留置している患者がいれば、どうすればそのCVを抜いてあげられるか毎日考えるはずです。考えていないと漫然と残されてしまい、抜去は確実に遅くなるでしょう。
人工呼吸器も全く同じで、スケールは違いますが「単なる一つの医療デバイス」に過ぎません。
本当に必要なのか毎日評価し、いらなくなれば最速で抜くべきです。
そして、実は自己抜管した症例のうち半数ほどは再挿管なしで経過しています。つまり医療者の想定より早く抜管できた＝無駄な挿管管理が行われていた、と言えます。
ですが、患者単位で考えると再挿管ははっきりと害です。
臨床現場でみていても再挿管になってしまうと、やはり一段階状態が落ち込んでしまうことをよく経験します。あるいは抜管が難しく、気管切開へシフトすることを考える場合もあります。
早く抜きたいけど、再挿管は避けたい。。。
そんな中で理想の再挿管率ってどれくらいなのでしょうか。
患者に害になるんだから、当然0％！というのが自然な答えになると思います。
ですが、再挿管率0%のICUって正しいのでしょうか？？
先ほどの理論だと、抜けるまで待ってからでは遅過ぎて、むしろ医療者が思っているよりも早く抜けることの方が多いと言われています。
そして再挿管0にするのは簡単で、本当に抜ける人以外は気管切開にしてしまえば良い訳です。
まあ、さすがにそこまで不健全なことはしませんが、、、
有名な論文で虫垂炎のオペの話があります。
虫垂炎疑いで正常虫垂を摘出するのは誤っているでしょう。確実に虫垂炎と言われるものだけオペしていれば正常虫垂は摘出しません。ですが、これでは本当に悩ましい症例たちが闇に伏されて、オペされていない可能性があります。
つまり「適度に失敗するくらいの頻度で、踏み込んで抜管をすること」が、ICUという組織全体でみれば健全という意味合いです。
繰り返しですが、再挿管自体は患者に害で避けるべきです。
ただ型通りの呼吸器離脱評価項目をクリアしているにも関わらず、
「レントゲンが良くなりきっていない」
「体重がまだ戻りきっていない」
などの不確かな指標で抜管を先送りにすることは、厳に慎むべきと言えるでしょう。
もっとも自分が今まで勤めてきたICUでも、これらのプラクティスで抜管が先送りにされていることはままありましたが、、、
では、何も考えずとりあえず抜管すれば良いのでしょうか。
大事なことはまず、「なぜ挿管したのか」を考えることです。
挿管の適応はMOVESという語呂で覚えられます。
当然ですが、これらをクリアしていることを確認して離脱評価へ向かいます。
ということで、まずはSATです。
まずは起こしても問題ない人であれば、鎮静を中断し覚醒して落ち着いて過ごせるか評価します。
よく「喉頭蓋炎とかでまだ抜管は絶対不可能な人って寝かせておけば良いんじゃない？」って言われます。
これは誤りで、SAT自体がせん妄の予防やICU早期退室に向けて重要なステップです。我々は1日中寝ていることはありませんから、なるべく生理的な活動が出来るようにしてあげたいですね。
ではSATをクリアしたら、みんな大好きなSBTで良いでしょうか？
SBTにも開始基準があり、起こした後にある程度安定していることを確認してから施行する必要があります。
注意点としては不必要に長い時間SBTを行わないことでしょう。30-120分の評価にとどめて、この設定でみるべきと言われています。
さて無事にSBTまでクリアしました。ではすぐに抜管！で本当に良いのでしょうか？？
ここまでは評価されていることが多いですが、この先の細かい項目について次回お話していこうと思います。
ではでは。
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