では、今回は二本立てでお送りしている血液ガスの読み方について話していこうと思います。
先に述べておきますが今回の内容は応用編になりますので、ここまでの理解は多くの方には不要です。
興味のある方は部分的にでも構いませんので、自身の診療で役立ててください。
血液ガスの流派
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血液ガスを読む際に、大きく3つの流派が存在することが知られています。
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1つ目はCopenhagen法です。
こちらはデンマークで発案されたもので、BEを基準として考えています。
ですが実際に測定しているのはpHとpCO2のみで、そこからBEを算出しているのです。
このためあくまで計算上のデータに過ぎないのでは?という意見もありました。
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2つ目はみんな大好きなBoston法です。
AGを用いた解釈になりますが、これが一番有名ですかね。
ただ過去にはbig journalを通じて激しくこの2つが争い、大西洋間論争と呼ばれていました。
しかし使いやすさから言っても、現状無理にCopenhagen法を使う必要はなく基本的にはBoston法で良いでしょう。
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ですが、使い勝手の良いBoston法にも弱点があります。
それは乳酸上昇に対するAG感度が低く、乳酸上昇しているのにAG正常なんていうことが起こり得るのです。。。
またアルブミンやリンの影響を受けるので重症患者では使いにくく、代謝性アシドーシスが複数存在するとどちらの影響が大きいか判断出来なくなります。
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ここで考えられた3つ目の方法がStewart法になります。
こちらは考え方が根底から変わり、HCO3-を結果であり原因として考えていません。
ただこの計算式はとても人間に出来るレベルではなく、使用が非現実的であることが指摘されていました。
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そこで産まれたのがこの簡易Stewart法になります。
簡易Stewart法は使われなくなったCopenhagen法に光を当てました。
Copenhagen法でのSBEの考え方を使用することで、余剰塩基がプラスかマイナスかで代謝性の酸塩基平衡異常を同定する考え方になります。
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この計算の内訳は上の表の通りになります。
魅力としては代謝性の酸塩基平衡異常を細かく評価することができ、なおかつこれらを定量的に比較出来る点に強みがあります。
つまり乳酸アシドーシス+高Cl性代謝性アシドーシスが併発していた際に、どちらの方が影響が大きいかを想定することが出来るのです。
では試しに血液ガスを読んでみましょう。
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まず早速、簡易Stewart法を使うとこのようになります。
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続いてこちらがBoston法での評価です。
どうでしょうか?
全く同じ数字なのに少し評価が変わっていますね。
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これが非常に面白いところではありますが、Stewart法の方が代謝性変化に強い特徴があります。
一方で呼吸の評価は甘くなります。
そのため両者を併用して血ガスを評価することが最適と言えるでしょう。
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一般病棟での血ガスのタイミング
しかし、こんな声も聞こえてきそうです。
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血液ガスって救急医や集中治療医は気軽に取りがちですが、一般病棟においては機械が無いので提出の敷居が高いですよね。
どういう時に採れば良いのでしょうか。
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例えば、この検査結果って正常でしょうか?
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実は簡易Stewart法の中のStrong Ion Difference(SID)の概念は非常に優秀で、普段の血液検査からでも評価が可能です。
つまり血液ガスを採らずとも部分的に酸塩基平衡の異常を評価することが可能になります。
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ちなみにさっきの血液ガスはこんな感じで実はとんでもない異常がありました。
今回はSID=138-95=43>>36ということで、大きな異常があることが通常の採血だけでも気が付けます。
まあ、もちろん呼吸様式とか本人見れば只事では無いのに気が付けるのですが。
一般生化だけでも十分きっかけになるというものでした。
PaO2の使い方は?
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血ガスを採った時に肩透かしされた気がする報告で一番多いのがPaO2についてです。
酸素化の指標として教えてくれるのですが、実際にはほとんど意味が無い数値になります。
ここで全身での酸素運搬について考えてましょう。
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まず、おつかいの考え方です。
10000円を持って3000円の買い物をして7000円のお釣りをもらって帰ってくる、というのが通常のお使いですね。
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これを酸素需給バランスの考え方に当てはめると、10000円がDelivery O2(DO2)、3000円がConsumption O2(VO2)、お釣りの7000円がMixed venous O2(SvO2)ということになります。
肝心のDO2の計算は以下のようになります。
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複雑な式ですが、要するに前項がRBCに結合して効率的に運ばれる酸素で、後半の方は単純拡散で運ばれる酸素の意味合いになります。
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気付かれた方もいるかもですが、PaO2の方は係数が極めて小さいです。
これはRBCに結合する方が圧倒的なため、SpO2(SaO2に相関)だけ見ておけば良さそうです。
よって0.003×PaO2の式は棄却されます。
しかし酸素化を表す指標の一つではあります。
一体どのように活用すれば良いのでしょうか。
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臨床研究などではいまだに広くPaO2は使用されていますが、生理学的にはSaO2やSpO2が保たれていること方が本質的で重要になります。
そのためこちらも参考所見として見ていますが、その数字に介入することはほとんどありえないと思います。
A-a DO2の使い方は?
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みなさん、A-a DO2って使っていますか?
医師国家試験でも時折話題になりますが、実臨床で活用していますか?
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計算式はこのようになります。
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実は使える場面は限られています。
そもそもA-a DO2は酸素投与している時には使うことができません。
使う意義としては低酸素血症の4つの原因のうちの肺胞低換気であるかを評価する目的です。
例えば傾眠の方の低酸素血症で、これは寝てるから酸素化が悪いのか分からない場合ってありますよね。
そこでA-a DO2を評価して開大していなければ、肺胞低換気が原因と分かります。
もちろんイコール帰宅で良いという訳ではなく、肺胞低換気になる原因(神経筋疾患など含)を考えなければいけません。
ただ夜間の一時的な酸素化低下の原因として頻度は多いので、こちらを根拠に介入不要とするケースもあるかと思います。
見落とされがちな血ガス注目ポイント
以下の血ガス、何か異常はありますか?
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そうです、読み飛ばされがちですが異常ヘモグロビン(MetHb)が増えていますね!
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喫煙者、非喫煙者でCOHbの値は変わりますし、どこまで介入すべきかは悩ましいです。
一番大事な点としては前述のDO2が保たれているかどうかになります。
多少であればDO2保たれているなら問題ないでしょう、絶対値よりは状態に応じて介入を検討すべきかと思います。
もちろん悪化しないように原因検索は必要不可欠ですが。
では、次はいかがでしょうか?
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異常が多いのですが、今回伝えたかったのは低Ca血症をきたしている点です。
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大事なのは生化学検査でのカルシウム値ではなく、イオン化カルシウムになります。
致死的な害をもたらす場合もありますので、見つけたら必ず補正するようにしましょう。
さて、いかがだったでしょうか。
かなりマニアックな内容もありましたが、こちら参考にしていただけたら幸いです。
本日はここまで。ではでは。
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