本日は臓器灌流の評価に有用な指標の一つと言われるCO2 gapについて扱ってみようと思います
CO2 gapはCOの不足により、組織の低還流をきたしている所見
基本は乳酸値やエコー所見でCOは評価、それらに乖離あれば併用するのが良いだろう
Understanding the carbon dioxide gaps
Thomas W L Scheeren, Jannis N Wicke, Jean-Louis Teboul
Curr Opin Crit Care. 2018 Jun;24(3):181-189.
CO2 gapとは動脈血のCO2と静脈血のCO2の差で、Pv-aCO2などとも表記されます
正常の状況ならΔ2-5mmHg程度になります
CO2はO2と比較して20倍以上も可溶性で拡散能力が高い物質です
そのため組織が低還流の領域ではよりCO2拡散の影響を受け、高CO2血症になりCO2 gapが開大します(これをCO2をwash outできない、と表現します)
これによりCO2 gapは組織低酸素の鋭敏なマーカーとして利用できるのです
仮に酸素の拡散障害も起こる場合(血流障害、浮腫など)でも、CO2は高い拡散能力を持つので影響を受けることなくCO2 gapは上昇します
ではこの静脈血はどこから採血すべきなのでしょう
古典的には混合静脈血(肺動脈)での評価とされています
しかしそのためには肺動脈カテーテルを留置しなければなりません
果たしてそこまでの侵襲を与える必要があるのでしょうか?
結論としては混合静脈血までいかずとも、十分に中心静脈血でも相関することが示されています
もし留置されていれば混合静脈血が好ましいですが、無い場合には中心静脈血でも十分に代替できるでしょう
特に集中治療室に入室することの多い敗血症性ショックにおいて、CO2 gap=6をカットオフとして院内死亡率やSOFAスコアをアウトカムにした研究は多く報告されています
例にしてその使用を考えてみます
こちらが論文に載っていたfigureです
まずCO2 gapの開大が何を示しているかですが、「組織低還流」の指標になります
そのため心拍出量(Cardiac Output:CO)の介入を行うわけです
では、全例でCO2 gapを見る必要があるかというとその限りではありません
基本的には通常の循環管理を行います
それはMAP 65mmHgを目安として、病態に応じて輸液負荷やカテコラミンを調整します
その中で組織低還流の所見が出てこないかを確認するため、身体所見やエコー所見、乳酸値を評価します
身体所見では「ショックの窓」と呼ばれる意識レベル、尿量、皮膚所見に特に注意します
CRTは末梢循環を評価する上で有用な指標の一つと言われています
そしてエコー所見で重要なのはLVOT-VTIです
左室の流出路を筒に見立てて、そこから拍出される量を積分して1回拍出量を概算します
これと流出路径、心拍数により心拍出量が計算されます
そして、乳酸のクリアランスをみることが、大まかな循環管理の基本です
しかし、このように上手くいかない症例も多いです
例えば術後でエコーが入らない、エコーではVTI保たれていそうなのに乳酸が上がり続けているなどなど
このように一元的に病態が掴めていない時に、CO2 gapという別のモダリティを追加することに意義があるのです
そのため再掲になりますが、乳酸値をベースに使用することを本論文でも強調しています
そしてScvO2に応じて低酸素の要素を判断しつつ、COを評価するflowになります
一つの因子に依存しすぎて評価を歪ませてはいけないので、このようなflowが一番しっくりくるかと思います
ぜひ、日常臨床で役立ててください
こちらの内容は「Intensivist 生理学2」にもう少し詳しく書かれているので、気になる方は是非どうぞ!
ではでは
コメント