今回は言わずと知れた名著の「臨床研究の道標」を読んだ感想を書いていきます。
初版は昔読んだことがあったのですが、後期研修中だったのであまり覚えておらず(理解も出来ていなかった)。。。
第2版になっていたこともあり、改めて読み直してみました。
評判の通り、初学者がまず手に取るべき一冊だと思いました。
研究の御法度
まず御法度が挙げられていましたが、その中でも「臨床疑問を考えてすぐにデータを集めること」がありました。
これは本当によく見かけます。。。
さらに酷いと「サンプルサイズ(母数)が多いデータが使えるから、とりあえず何か解析してみよう。」なんてパターンもいました。
サンプルサイズが多いと統計学的有意差が付きやすくなり、「見栄え」が良くなります。
ここが大事であくまで見栄えだけであり、p値というのは欠陥指標(言い過ぎ?笑)なのでそこだけに執着するのは誤っています。
きちんと自分が抱いた疑問を真摯に解決していくための手順を、忘れずにいて欲しいものですね。
大まかな臨床研究の流れ
本来のおおまかな流れは以下です。
①クリニカルクエスチョン(Clinical Question)を考える
臨床の現場で気になっていることを列挙します。
例えば「重症患者にアセトアミノフェンを投与すると血圧下がるのは何故?」など。
②クリニカルクエスチョンをリサーチクエスチョン(Research Question)に昇華させる
この本では「構造化」という言葉を強調しています。
研究で明らかにしたいことを短くまとめた文章にすることですね。
例えば「ICUにおけるアセトアミノフェン投与前後の血行動態の変化」などです。
ここでは実際に良いRQなのかを考えるため、FIRM2NESSというゴロを使っています。
他にはFINERとかもよく知られていますね。
現実的に実施できる(Feasible)
興味深い(Interesting)
独自性がある(Novel)
倫理的である(Ethical)
切実な問題である(Relevant)
特にRelevantが大事ですね。
やる意味ない研究(例えば血圧を1mmHg下げる降圧薬とか、別にいらないですよね?)を走らせないように事前に下調べすることが重要です。
このような過程はよく調理に例えられます。
良い食材(CQ)を持ち寄り、良い下ごしらえ(RQへの構造化)をして、美味しい料理(質の高い研究)になるというニュアンスです。
③先行研究を調べる
ここも超大切です。
実は過去にやられている研究のこともあります。
いわゆるknowledge gapを把握することが大事です。
knowledge gapとは既に分かっていることと、まだ分かっていないことの線引きをするということです。
例えば「アセトアミノフェンが熱を下げたり、痛みをとったりすること」は分かっています。
そして「血圧を下げる報告がある」ことも分かっていそうです。
しかし「なぜ下がるのか」「ICU患者でより下がるのか」といったことは、文献調べた限り見当たりませんでした。
するとこの辺りが対象にしやすくなりますね。
④対象を考える
ここで先行研究を参考に、PICO(介入研究)/PECO(観察研究)を考えます。
Patients:標的患者集団
Intervention:介入
Exposure:要因
Comparison:対照
Outcome:アウトカム
といった具合です。
ここからモデルを考えたり、交絡因子などを考えたりというフェーズに移っていきます。
個人的にはここまでが特に重要かな、と思います。
効果の指標
ここは自分も非常に学びになったのですが、どうしても効果を「比」でみることが多いように思います。
例えばリスクの比較であれば要因がある人のリスクとない人のリスクの比をとる感じです。
あるいはこれがケースコントロール研究であれば、オッズ比を出してリスク比と近似することもできます。
一方で軽視されがちなのが効果を「差」でみることです。
2群のリスクの差や発生率の差を比較する方法です。
なんとなく割り算の方が引き算より優れているような気がしていましたが、誤りでした。
例えばat riskな集団で病気の発症リスクを1%として、治療を行うと発症が0.7%に下がったとします。
この時にリスク比にすると0.007/0.01=0.7で、リスクは10分の7に減ったことになります。
こう言われると超効果のある治療に聞こえます。
ですがリスク差で考えると0.01-0.007 = 0.003であり、治療により恩恵を受けるのは1000人中3人という解釈です。
どちらも誤ったことは言っていませんが、大きく印象が変わりますね。
恣意的にしようと思えばどちらか都合の良い方を見せることもできます。
読み手に回った時にもこの結果の解釈について、しっかり理解している必要があると感じさせられました。
さて、いかがでしたでしょうか。
今回は臨床研究を始めるにあたっての注意点や結果の見せ方について部分的に解説しました。
研究って歪めようと思えばいくらでもねじ曲げられます。
他にも色々な例が書かれていたので、ぜひご覧になってみてください。
そして騙す側でも騙される側でもなく、正しく発信する側になれるように努力していきたいですね。
本日はこの辺で、ではでは。

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