今回は医学書を読んでの感想になります。
扱うのは「僕らはまだ、臨床研究論文の本当の読み方を知らない。」です。
はじめに-挫折した過去-
実はこちら2021年に出版されており、当時すぐに購入しました。
しかし勤務の合間に読もうとしたのですが、、、挫折しました。
特に後半で何を言っているのか分からなくなり、晴れて積読リストに回ってしまったわけです。
それから5年も経ち、SPHで学ぶようになり改めて読んでみると、素直に「分かりやすくまとまった一冊」と感じられます。
ただこれだけ読者フレンドリーに書いていても、多くの読者(昔の自分を含む)は挫折してしまうんだろうなあとも思います。
やはり通読するなら「ある程度は分かっている状態で読む」ことで、こういったものは理解が深まるのでしょう。
SPHに入り時間が取れるようになったので、医学統計の勉強をしていますが少しずつ繋がってくる感覚があります。
しかし多くの方はそんな時間が取れないし、よくても「まだ勉強始めたばかり!」という状況でしょう。
そこでまず、「まだ繋がっていない方」にとってこの一冊をどう読めば良いのか、ポイントを挙げていこうと思います。
本当の初学者なら
この本を読む上で大事なのは、「自分が今どの程度の理解度か」「何を学びたいのか」ということかと思います。
もし仮に挫折した5年前の自分に声をかけられるなら、大胆に読む場所を削ることを勧めます。
というのも、まずは研究がどうこうや解析云々ではなく、「論文を読んでみたい」というフェーズだからです。
そのような状態では本書の後半はほとんど不要、あるいは逆効果とも言えます。
大胆に第1章と第2章の冒頭のみ、だいたい100ページくらいまでを読むだけで十分でしょう。
300ページ読むって辛いけど、3分の1ならいけそうな気がしませんか?
もちろん、著者も分かっていて、丁寧に☆マークで難易度を分けてくれています。
そのためその通りに読むでも良いですが、結局☆2つまでで読むとしても後半はほとんど読むとこありません。笑
ですので区切りよく100ページくらいまで読んで、以降は知識が深まった時に残しておく、とかも一つの方法かと思います。
言いたいこととしては決して通読を目標とせず、後半でも気になるところがあればつまみ食いするような辞書的な使い方が良いということです。
逆に言えば、それだけ難解な内容を広く分かりやすく記載してくれています。
素晴らしい本なので、ぜひ敬遠せず分かるところだけ自分のものにしていけると良いかと思います。
少し学んできた方へ
もしある程度の知識が付いている方であれば、この本は冒頭より精読することを強くお勧めします。
豊富な経験を持つ著者のエッセンスが、論文を読む観点でも、研究という観点でも、広く散りばめられているからです。
自分が今回読んで学びになったことを以下に記載していきます。
①Introductionの大事さ
正直、気になっている分野のイントロ(特に冒頭)ってだいたい知ってる内容なので、流し読みしがちです。
ですが「なぜこの研究者はこのテーマを扱ったのか」という根源的な問いがここには詰まっています。
流し読みしてしまっていると、自分の勝手な解釈で読み進め「なんで筆者はこんな解析してるの?」とか感じることもあります。
その疑問への答えは簡単で「今回の筆者の見たいものはこれだから」です。
こんなの当たり前のことですが、意外と盲点になっている人が多い気がします。
逆にイントロを読み飛ばされているなあ、と感じる査読コメントも受けますね。
こんな原点に立った読み方を強く強調してくれており、少し慣れてきた自分にとっては非常に良い気づきのある一冊でした。
②内的妥当性と外的妥当性の混同
「そんなことしません!」って言われそうですが、実臨床ではこんな議論けっこう起きてたなあ、って今なら思います。
この研究の結果を自分の日常診療に外挿できるか、と考えた時にいつの間にかこれらの議論が混同されていること珍しくなかったです。
筆者はこれに対して「まとめて広義の選択バイアスとして一旦考えれば良い」という非常に懐の広い意見を出しています。
これは統計を分かっている人だから言える意見ですが、一理あるように思います。
最も本書でも強調されていましたが、その一個の研究で日常のプラクティスを変えることはあってはいけないですね。
追試などの知見が集まってから、自分の行動に反映させることが大事です。
③研究の背景を4つに分類する
これは研究始めたばかりの自分に聞かせてあげたい内容でした。
本書では記述研究、リスク因子の研究、治療・介入の研究、診断・予測の研究としています。

記述研究はそのままで、分かったことを記述するのみです。
なんだか軽んじられがちですが、まだ知見の乏しい領域とかでは非常に重要な意味を持ちます。
自分もちょうど一本この内容で書き始めており、何とか形にしたいところです。
先行研究もほぼゼロでサンプルサイズも小さいので、まずは記述かなと考えています。
そしてリスク因子の研究ですが、ややこしいのが探索的なのか因果を見に行くのかで違う点です。

探索的な場合はとりあえず関連さえあれば何でも良い、ってスタンスになります。
この時には本書にもあるステップワイズとかがよく使われますね。
この場合は、扱った共変量の全ての係数に意味があります。
ここではステップワイズのように、ランダムな共変量を当て嵌まりの良い順に整理してくれる解析も一つの候補です。
一方で因果の場合は、治療の有無に対する因子の係数のみが見たい項目です。
因果を見ていないのに、因果を語っている時があるのには注意したいです。
こちらの文脈でステップワイズを使っている場合は、ちょっと怪しい可能性があります。
治療介入は因果推論の王道でしょう。
ただの関連ではなく、きちんと因果を示すことが大事になります。
診断予測で見られるのは関連と予測のみです。
本書では「予測性能が高ければハッピー」と表現されていましたが、これくらいのテンションがしっくりきました。
笑ってしまいますが、もう予測性能しか見てないから、他の因果とか機序とかどうでも良いって感じですね。
さていかがだったでしょうか。
初学者にはまだまだ難しいと思いますが、全体がよくまとまった素晴らしい一冊です。
ぜひ時間をかけて少しずつ自分のものとしていくことをお勧めします。
その一助になれば幸いです。
本日はこの辺で、ではでは。

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