今回はお勧め書籍シリーズの第二弾で救急科後期研修医の先生に向けて、紹介していこうと思います。
前回お勧めした初期研修医向けのものは必読の上で、重複しないように挙げていきます。
かなり厳選したのですが、最後は絞りきれず11選となっていますがご容赦ください。
それだけ甲乙付け難い名著が並んでいるということです。
- 必勝!気道管理術 ABCははずさない
- こういうことだったのか!! 一般医療者の生き残りの気管挿管
- 救急検査ケースファイル:Clinical Prediction Ruleのオモテウラ
- 外傷初期診療ガイドラインJATEC/外傷専門診療ガイドラインJETEC
- 周産期初期診療アルゴリズム:PC3ピーシーキューブ公式コースガイド
- 明日のアクションが変わる 循環器救急の真髄 教えます
- Hospitalist Vol.6 No.4 2018(特集:心不全)
- ERでの創処置 縫合・治療のスタンダード
- 救急/プライマリ・ケアの骨折診療スタンダード
- 緊急ACP 悪い知らせの伝え方、大切なことの決め方
- 終末期ディスカッション 外来から急性期医療まで 現場でともに考える
必勝!気道管理術 ABCははずさない
まずは救急医なら必須スキルの一つと言える気道に関する古くからの名著です。
これ一冊で気道管理の戦略から詳細な手技の実際まで、すべてが網羅されています。
初めて読むならこれが一番シンプルで分かりやすいですね。
カラーで写真が多いのも、初学者向けに高ポイントです。
声門上デバイスや喉頭鏡も複数種類挙げてくれているので自分の病院に採用がないものも学べます。
一方で少し内容が古くなってきている点もありますね。
ですがほとんどが変わらない内容ですので、依然として素晴らしい一冊であることに異論はないでしょう。
こういうことだったのか!! 一般医療者の生き残りの気管挿管
迷いましたが気道系からもう一冊。
この間出版されたばかりの新著ですが、これは今後相当に読まれると思います。
圧倒的な良著です。
別途感想記事を作りますが、特に少し気管挿管に慣れてきた頃合いで読むと感動すると思います。
ここ最近で一番衝撃を受けた素晴らしい一冊なので、繰り返し読むことを強くお勧めします。
救急検査ケースファイル:Clinical Prediction Ruleのオモテウラ
これは少しニッチな一冊です。
初期研修医向けで推奨した「考えるER」にも記載されていますが、臨床推論ってとても大事です。
適当にオーダーしてコンサルして入院、ってAIで良いですよね。
そうならないためにも過去の知見から臨床推論することが大事ですし、それが無いと面白くありません。
そこで便利なのがClinical Prediction Rule(CPR、CRPじゃないですよ)です。
でもこれを正しく使うってすごく難しいです。
例えばLRINECスコアとかできた経緯とか、どう臨床で活用すべきかとかきちんと話せますか?
そしてこの知識を持った上で専門科と喧嘩しないように建設的に議論するスキルも求められます。
何気なく使っているCPRについて深く考えさせられる一冊です。
外傷初期診療ガイドラインJATEC/外傷専門診療ガイドラインJETEC
こちらは有名ですかね。
救急医として外傷診療の基本は知らなければいけませんので、この二冊は必読でしょう。
実はJATECについては初期研修医の方で挙げようか迷いました。
もちろん全員ができる必要は無いのですが、JATECにおけるPrimary SurveyとSecondary Surveyの考え方ってすべての診療の基本になります。
そして他の勉強会コースでも類似の概念はあるのですが、ここまで完成度の高いものは無いと思います。
自分は初期研修医の時に実際にJATECを受講しましたが、丸二日間で今までで一番有意義な勉強会だったと記憶しています。
JATECの動きがどんな外傷でも落ち着いてできれば、非外傷においても慌てずに対応する第一歩になるでしょう。
自分も不慣れな頃は自宅で枕を相手に1人イメトレをしていました。
ぜひ外傷は得意!と言えるようになり、そこからJETECも理解を深めて頂けると良いかと思います。
周産期初期診療アルゴリズム:PC3ピーシーキューブ公式コースガイド
「ピーシーキューブ」と読みます。
こちらは産科救急のシミュレーションコースの公認テキストになります。
イラストが漫画「コウノトリ」をモチーフにしているので、原作を知っている人からすると親しみやすいです。
こんな親しみやすそうなイラストですが、りんくう総合医療センターの先生方が監修されている事もあり内容は極めて充実しています!
特に非専門医で産科の急変ってほんと難しいし、何していいか分からなくなります。
自分も後期研修を始めるにあたり、とても不安を感じていました。
しかし、実は産科救急と外傷ってとても似ています。
特に既往の無い若年者に起こる出血および凝固障害による病態ですからね。
もちろん胎児の問題はありますが、蘇生に関しては似ているところが多いのです。
そして非専門医で産科救急を学ぶべきなのは誰でしょうか?
内科医ではないですよね。
そうです、救急医なのです。
よって外傷と関連づけて頂けると非常に理解しやすくなります。
そこでこのコースはJATECに似た概念を並べており、一見しただけスッと頭に入ってきます。
もちろん細かいABCの評価で独特なものはありましたが、大枠を抑えていれば良いので気になりませんでした。
正直、他のコースだとイマイチ身になった感じがしませんでしたが、これのおかげで一気に自信を持てるようになります。
まあ、実際に症例にあたると何もできず凹むのですが。。。笑
Off the Jobとして産科救急を学ぶには最適の一冊だと思います!
ぜひコースも合わせて受講してみてください。
明日のアクションが変わる 循環器救急の真髄 教えます
救急をやる上でやはり循環についてはある程度以上の知識が必要だと思います。
特に虚血関連では循環器と対等に議論できるようになりたいです。
そこでオススメの一冊はこちらです。
自分が研修医の頃に第一版が出て、これは本当に何度も読みました。
それくらい過去から今への知見がよくまとまった書籍です。
難しい部分もありますが、救急科後期研修医にとってはちょうどいい難易度かと思います。
姉妹書の「補助循環の極意教えます」もとても良い本ですが、こちらは少し難しめなので優先度は下がりますかね。
Hospitalist Vol.6 No.4 2018(特集:心不全)
虚血の知識も大事ですが、時代の流れは心不全です。
昨今、緊急PCIができる施設が維持できないというニュースもありますが、世の中のニーズとしても緊急PCIよりは心不全管理です。
そこでこの一冊は本当にオススメです。
なぜ血管拡張薬を使うのか、なぜ利尿薬を使うのか、普段大雑把に行われている(施設も正直あります)心不全管理が一気にクリアに見えてきます。
やはりベースの心臓特性を考え、なぜ降圧するのか、利尿する根拠がどこにあるのかを考えなければいけません。
血圧だけみて「クリニカルシナリオ○なので、、、」みたいなプレゼンはとても残念に聞こえます。
ぜひこれを読んで内科と対等に話せる循環動態の理解を得ましょう。
ERでの創処置 縫合・治療のスタンダード
こちらも初期研修医編で挙げるか迷いました。
救急医に限らず縫合を行う機会は多いでしょう。
もちろん外科系医師はそちらの成書に倣えば良いと思います。
しかし救急現場での縫合は、手術室のものとは訳が違います。
綺麗なメスの傷ではなく、挫滅していたり異物が入っていたり、、、あるいは感染症の懸念もあります。
これらの疑問に全て答えてくれる一冊です。
昔は和訳が無かったのですが、今では日本語訳もされているため非常に手に取りやすくなっています。
縫合って意外と独学で、系統だてて教えてくれる人っていないですよね。
辞書的に使うのも良いですが、ぜひ通読することを強くオススメします。
自分の中できちんとした理論が出来上がる一冊です。
救急/プライマリ・ケアの骨折診療スタンダード
こちらは初期研修医編で挙げた骨折ハンターとセットで使って頂ければと思います。
骨折のバイブルと言われたFracture Managementの監訳ということで、出版時には相当話題になりました。
実際、手にとってみると小児成人問わず全ての骨折について圧倒的な網羅性です。
これ一冊で書かれていない骨折はないと言っても過言ではありません。
骨折も意外とマニアックなものは、なかなか知らないと正しい対応できません。
そんな時に頼りになる指導医代わりの一冊です。
こちらも通読できれば理想ですが、実際は辞書的に使うだけでも十分かもしれません。
緊急ACP 悪い知らせの伝え方、大切なことの決め方
こちらは当ブログではお馴染みの一冊ですね。
急性期病院で勤務する医療者全員が読むべき必読書かと思います。
2-3時間程度で読破できてしまう内容ながらも、とても濃密です。
過去の記事(緊急ACPの実際)で書いてある内容がこの書籍にかなり近しい内容になっています。
この辺りの知識に自信がない方は、是非お手にとってみることをお勧めします。
絶対に読んで後悔しない一冊です。
終末期ディスカッション 外来から急性期医療まで 現場でともに考える
こちらも終末期ケアについての考え方をまとめた一冊です。
前述の書籍よりは少し内容が難しくなっており、読み応えがあります。
読むとすれば後期研修の後半でも良いかもしれません。
過去にこの内容に関連した記事(ICUでの終末期ケア)を書いていますので、ご参照ください。
今後の医師人生を考えると、どこかでは手に取りたい名著です。
さていかがだったでしょうか。
どれも名著ばかりですので、是非皆様の学習のサポートになれば幸いです。
次は集中治療科フェロー向けというテーマで書いてみようかと思いますが、これもかなり悩ましくなってくるので来週は違う内容にするかもしれません。
いずれにしてもどこかでは扱おうと思っていますので、どうぞお楽しみに!
本日はこの辺で、ではでは。
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