「経済学を知らずに医療ができるか!?」を読んで

勉強関係

今回も書籍レビューです。

面白そうと思って手に取ったのですが、今回はかなり濃厚で骨太な内容でした。

自分には1回読んだだけでは、到底理解できないレベルでしたね。。。

医療経済学の真骨頂!

今、医療サイドに求められているのは、将来の医療財政危機と医療体制崩壊を回避するための医療の無駄、守るべき医療を明らかにすることです。医療の質を維持つつ医療体制をスリム化し、国民の命と健康をあずかる医療を死守す るための方策を考え、実践しましょう。それらを実行するためにはまず医療従事者こそ医療経済学を学ぶべきではないでしょうか。ただ、ほとんどの医療従事者は経済学について学ぶ機会に恵まれていません。本書では、経済学の予備知識がゼロでも、通読できるように書かれています。医療従事者が知っておくべき医療経済学の基礎知識を、今こそ身につけて、日常臨床を医療経済の視点から再考してみてください。

冒頭で「何故医療経済学を学ぶのか」という根源的な問いを投げかけています。

実際、著者も指摘していますが、医療者で経済の話をすると嫌がる人は一定数います。

若い人は少ないですが、特に年長者で多いですね。

医療は仁の道なのであって、そこに金儲けを持ち込むなど言語道断。

寝食を医学と共にして、患者に向き合うべきである。

・・・なんていう昭和のスポ根漫画みたいな考えの人、意外とまだいるみたいです。

働き方改革に代表されるように、少しずつ世の中は変わってきていますがまだまだ医療業界は昔気質ですね。

一方で、少子高齢化が進み日本の円安も止まらず、なんとなく国内には閉塞感が漂っています。

やはり医療経済を考えないと、日本の保険診療制度は崩壊しそうですし、避けては通れません。

そのためには医療の質を保ちつつ、余分な物を削ぎ落とし、医療を守る事が求められるのでしょう。

一般的な世の中の通説とは違う切り口からの、筆者の私見も多くありとても面白い内容でした。

例えば救急車の適正利用は救急医としては看過できない問題です。

やはり不適切と言わざるをえない利用も一定数ある以上は、有料化とするしか無いと自分も思います。

個人的には重症者は減免すれば良いと思っていましたが、医療者に判断を委ねるのは患者トラブルになりそうで難しいですかね。

全例徴収として所得に応じて減免や還付するのが妥当でしょうか。

実際、日本の松坂市でも救急車の有料化を開始して話題になっていましたが、どんどん進めていくべきだと思います。

日本の手厚すぎる医療サービスも部分的には再考すべき転換点を迎えているのでしょう。

また考えさせられたのは時間外選定療養費についてです。

一定数の重症者が受診しなくなる可能性を考えていましたが、逆に軽症が減り重症患者に専念出来るのでは?という筆者の考えは目から鱗でした。

ただそこを防ぐためのトリアージ制度もあるわけで、ここは議論が分かれそうですね。

もちろん気持ちとしては筆者の言う通りなのですが。

そして夜の不適切受診を減らし、日中を手厚くすることで医療者の夜勤も軽減させることができるというのは納得でした。

では臨床現場の自分たちはどうすれば良いのでしょうか?

1番心に響いたのは「正しい医療を行うこと」でした。

台数の多すぎるCTのせいで増える余計な画像評価、過剰な治療および医療介入、根拠のない治療や新薬への飛びつきなど。。。

新しい治療や新薬は大事にしなければいけません。

それにより救われる命があるかもしれないからです。

ただそれに飛びついて無闇に使用したり、不要な治療を始めることは間違っています。

特に「choosing wisely」や「less is more」という言葉でも有名になりつつありますが、無駄な医療を減らすことがまず第一歩になるのでしょう。

そのためには目の前の診療がエビデンスに即している正しいものなのか、常に考えて動く必要があるはずです。

あとは乱立する医療機関の集約化などマクロな視点は行政に任せるしかありませんが、日々の臨床の質を上げることは誰にでも出来るはずです。

ひいてはそれが早期退院にも繋がりますし、早い社会復帰は経済活動にも好影響を与えるはずです。

粛々とできることをやっていこうと、改めて考えさせられる名著でした。

今年度で1番勉強になりました。

また日を置いて改めて読み直そうと思います。

皆様も是非、手にとってみてください。

本日はこの辺で。ではでは。

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