今回は趣向を変えて学会参加の報告をさせて頂こうと思います。
人生で初めて国際学会への演題提出および後輩指導を行いました。
参加したのは韓国集中治療医学会(Korean Society of Critical Care Medicine:KSCCM)の第44回総会です。
たまたまアジア圏でしか使われていない薬剤に関連するネタがあったので、こちらを狙って発表して参りました。
研修医問題などで大変そうな韓国でしたが、学会は無事に開催され一安心です。
講演もたくさん聴講出来て、とても充実しておりました。
簡単に概要と感想を共有しておきます。
Respiratory & MV
・A Long Journey of Development of MV
・Beyond Guidelines of MV management in ARDS
・Recent Updates of NIV in the ICU
やはり話題の中心は2023 ESICMのARDSガイドラインで、Low Tidal VentilationからΔPへの移り変わりの話などがシンプルにまとまっていました。
EITの話もあり、全体を網羅的に話してくれていて知識の整理に役立つ内容でした。
臨床でどう使うかいつも悩んでいたMechanical powerについても、いかにシンプルにして現場で活用するかが提示されていて面白かったです。
最初のテーマは韓国の呼吸器メーカーのお話だったので、ちょっと余計だったかもですね。笑
☆気になった引用文献
①PMID: 33784486
ARDSでのMPに関する基本論文
②PMID: 30291378
MPを使いやすくするためのSimplified formulaについて
Neurocritical Care for Intensivists
・Seeing is Believing : Clinical Decision Making
・Altered Mentality due to Non-neurologic Causes
・Neurologic Rapid Response Team
「意識が悪いって何?」っていう根本的なところを、awareness/arousalという二つの軸から解説してくれました。
その後は会場参加型の症例ベースのクイズが中心で退屈しませんでした。
正直、細かな脳波や眼球異常運動(ocular dippingなど)は理解が難しかったので、また復習かなあという感じです。
また大事な非神経疾患以外の意識障害についても症例ベースの解説があり、大変勉強になるセッションでした。
☆気になった引用文献
①PMID: 31003899
awareness/arousalという二つの軸での意識障害への介入について
②PMID: 32295508
Hoover’s兆候をはじめとする機能的な神経障害の評価方法について、figureが見やすく後輩には今後「コレ見て」でも良さそうです
Cardiology&Hemodynamics:Cornerstones of Acute Heart Failure Treatment:Small is the Seed of Every Greatness
・Effective Decongestion strategies in AHF
・Hemodynamic Changes in Various Conditions combined with HF
・Manegement of Electrical Instability in AHF
怒涛の勢いでうっ血の機序とコンセンサスのある治療、その根拠となった研究などが列挙されていきました。
基本的な内容ですがラシックスの反応性の評価としての尿中ナトリウムや尿量など、軽く流してしまっていたので反省しました。
当時は当院循環器の先生方もかなり盛り上がっていましたが、やはりADVOR trialはepoch makingだったのか時間を割いて話していたのが印象的でした。
何よりも複雑な心不全管理においての血行動態の評価が面白かったです。
きちんとCOとSVRを考えた上での循環管理は、普段意識している内容が世界標準なんだなあと確認できた感じでした。
心不全背景の腎機能障害については引用している文献もRonco先生のもので、目線が循環器内科医ではなくcardiovascular intensivistだなあと感動しました。
最後の不整脈の話はアミオダロンを愛しているのが伝わってきて微笑ましかったです。
実際のCaseの対応も普段の自分のpracticeとどれも同じで安心しました。
☆気になった引用文献
①PMID: 32897746
心不全管理のキモになるLAP/LVEDPについて
Anesthesiology:Updated Difficult Airway Algorithm
・Difficult Airway Management in Adult Patient:What’s New in the Guidelines?
・Difficult Airway Management in Pediatric Patient:How is it different from Adults?
・All about Endotracheal Intubation:How can I successfully perform Endotracheal intubation in one go?
こちらはガイドラインを提示しつつ症例ベースのクイズ形式になっていて、会場も和やかに(時折笑いもあり)聞いていました。
どう気道管理する?という冒頭症例のオチが、「別に自然気道で行けるんだけどね」、ってのが一本とられた感じで悔しかったです。
つい上気道腫瘍とか見せられると挿管管理に結びつけてしまいがちなので反省ですね。
あとはエコーの活用なども出てきており、今度やってみたいと感じさせてくれる内容でした。
他にはデバイス進化の中でビデオ付きスタイレットもあるんですね。
使用どころか見たことも聞いたことも無かったので、また調べてみようと思います。
他にも声門上デバイスからの挿管チューブ入れ替えワザが小児だと少し勝手が違っていて、初耳でした。
他にもポスターセッションや企業展示ブースなど刺激を受けるものが多く、初めてながらも大満足の国際学会でした。
「旅の恥は掻き捨て」マインドでneuroとcardiologyのセッションで質問してみました。
終わってから演者の先生と個別でお話もさせて頂き、拙い英語ながらも内容は届いていたようで安心しました。
KSCCM自体がdeveloping countryに向けてのメッセージも出していて門戸の広そうな国際学会だったのでトライしてみたのですが、内容も若手向けのものが多く特に救急後期研修医とかにはちょうど良い内容なんじゃないかなあと感じました。
逆に言うと規模もやや小さく上級医からすると学びのポイントは限られてくるような気がします。
それでも当然海外学会のセッションですし、面白いし知らない内容あるので勉強にはなりますけどね。
韓国自体も楽しかったので、また良い演題があれば狙ってみようかと思います。
そのためにも、まずは日々の日常診療を頑張っていこうと思います。
それが基本ですし、その先に学術活動はあるはずですからね。
本日はこの辺で、ではでは。
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