日本版敗血症診療ガイドライン2024を読んで⑥DIC診断と治療

まとめ

今回はCQ5.DIC診断と治療についてコメントしていこうと思います。

これ以降は細かい内容が多いので、今回が最終回になります!

CQ5-2:敗血症性DICが疑われる症例での鑑別疾患は?

敗血症患者において凝固異常があると、すぐにDICに飛びつきたくなりますよね。

ただDICというにはやはり根拠が欲しいところです。

病態の本態は、「微小血栓の形成による消費性の血小板減少」です。

だからこそ昔はヘパリン化が効くのでは?とも言われていました。

なので測定できる施設であれば、SFMCやTATといった項目を出してきちんと「凝固亢進」が起きていることを確認することも考慮します。

もちろん全例でルーチン提出は不要かと思いますが。

そして一部だけ異常をきたしている場合(血小板減少、PT-INR延長、APTT延長のいずれか)については、安易にDICとせず原因疾患探しにこだわるべきです。

特にガイドラインでも挙げられていましたが、溶血があるかどうかは大事です。

貧血やビリルビン、LDHの上昇などあれば、強くTMAを疑います。

この場合には血漿交換など特異的な治療があるかもしれませんので、必ず診断にはこだわるようにしたいです。

以下がガイドラインで挙げられていたフローです。

確かにHITなども大事な鑑別ですね。

CQ5-3:敗血症性DICにアンチトロンビンの投与を行うか?

こちらが何故か「投与を弱く推奨」と書かれています。。。

理論としてはアンチトロンビンがトロンビンと活性化第Ⅹ因子を阻害することで抗凝固作用を有し(DICの本態は凝固亢進なので)、抗炎症作用も有することから期待されているようです。

ただこちらは世界的には推奨はされていません。

SSCG2016では投与しないことを推奨し、SSCG2021ではもはや記載自体が消されています。

要するに「論ずるに値しない薬」という認識です。

自分自身も投与しようと思ったことはありません。

しかも高額です、500単位で21098円します。

DICでは1500U/dayとのことで、毎日6万円以上も効果が定かでない薬を使うのです。

流石に無いかな、と思ってしまいます。

メリットがあるとしても迷うレベルで、まして確かな根拠ありませんので。

自分は当面使用しないと思います。

CQ5-4:敗血症性DICにリコンビナント・トロンボモジュリンの投与を行うか?

1個上と同じような議論になります。

機序としてはリコンビナント・トロンボモジュリン(リコモジュリン®︎)はトロンビンに結合しプロテインCを活性化することで、抗凝固作用を有するだけでなく抗炎症作用も有する点に期待されています。

なおこちらもSSCG2016では投与しないことを推奨し、SSCG2021で記載自体が消されています。

そしてやっぱり問題になるのが費用面です。

成人に1日1回380 U/㎏を約30分かけて点滴静注して使うそうです。

リコモジュリン点滴静注用12800U/ 33,347円です。

つまり50kgなら19000U使うので、ほぼ1.5セットですね。

よって約5万円ほどになります。

はい、使うわけないですね。笑

ただし自分も詳しくありませんが、血液腫瘍患者においては少し位置付けが違うようです。

血液内科の先生が投与したいと言ってきた時には、自分は同意してその通りにしています。

FRQ5-1:敗血症性DICに対して、アンチトロンビンとトロンボモジュリンを併用投与するか?

自分からしたら恐ろしすぎる発想ですが、、、笑

機序を考えればどちらもトロンビンに結合しますので、競合しますよね・・・

それが答えでは無いでしょうか・・・

効果が明らかなら相乗効果、と表現できますが、こういう扱いの薬剤ですので。

流石に併用したがる医者には幸いまだ出会ったことがありません。


さて、いかがでしょうか。

個人的に敗血症DICに特別な治療は不要で、原疾患の改善に努めるのみと思っています。

そのためやや毒のある言い回しが多くなってしまい、申し訳ありません。

ぜひご意見あれば教えてください。

次回からは敗血症ガイドラインとは違ったテーマを扱っていこうと思います。

本日はこの辺で、ではでは。

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