昇圧薬の使い分け ~血管収縮薬編~

まとめ

今日は昇圧薬の使い分けについて話していこうと思います

以下に簡単に表にまとめてみました

順に解説していきます

今回は血管収縮薬について扱います

フェニレフリン(ネオシネジン®︎)

特徴は

・力価が他の薬剤より弱い

・純粋なα1受容体刺激作用

です

まず力価が弱いことですが、デメリットに聞こえますが調節性が良いという意味でメリットにもなります

例えば、循環が極端に悪いわけではなく、処置時の鎮静で少し下がる、などといった場合にノルアドレナリンなどでは強すぎて血圧が高くなりすぎます

その時に少量ずつ微調整をする際に、ネオシネジンはとても便利です

以前も記事にしましたが、ノルアドレナリン換算の概念があります

これはMAPで見ているだけなので、COやSVRの要素が大きくその限りではありませんが

ノルアドレナリン 1ml(3mg/50ml組成)=ネオシネジン 10ml(1mg/10ml組成)

と言われています

Crit Care. 2023 Jan 20;27(1):29.

また純粋なα1受容体刺激作用という点も大きな特徴です

例えばノルアドレナリンのβ作用が害になるかもしれない症例では、ネオシネジンの方が良いかもしれません

例としてrate controlが必要なショック状態です

AF with RVRのSepsisで有意にrate controlまでの時間が短くなったと報告されています

ただこの研究では死亡率やICU滞在期間は変えませんでした

J Intensive Care Med. 2021 Feb;36(2):191-196.

また、たこつぼ症候群で後負荷を保つ目的にネオシネジンを選択することはありますね

理論的には使うことも検討されますが、予後は改善せず、むしろノルアドレナリン不足時にネオシネジンを使用したところ院内死亡率が増えたとする研究もあります

JAMA. 2017 Apr 11;317(14):1433-1442.

やはり現状は持続投与することはかなり限られた状況になりそうです

ノルアドレナリン(ノルアドレナリン®︎)

特徴は

・強力なα1受容体刺激作用

・β1受容体刺激作用も持つ

です

SSCG 2008までは敗血症性ショックの第一選択はノルアドレナリンorドパミンでした

しかしRCTで多くの不整脈イベントをきたし、特に心原性ショックの患者では死亡率を増加させたというドパミンの有害事象が指摘されました

N Engl J Med. 2010 Mar 4;362(9):779-89.

そのためSSCG 2012以降はノルアドレナリンが第一選択となっています

Crit Care Med. 2021 Nov 1;49(11):e1063-e1143.

かなりの力価なので基本的には持続投与ですが、慣れているのでショットで使いたい状況もあります

特にネオシネジンだとSVR上がった末梢締まった症例では昇圧できないので、β作用も欲しいところです

その場合には100倍に希釈すると、おおよそネオシネジンと同じように使用することができます

Crit Care. 2023 Jan 20;27(1):29.

例外的な使い方ですが、緊急時にはすぐ出てきて便利かもしれませんね

アドレナリン(ボスミン®︎)

特徴は

・最強のα1+β1受容体刺激作用

・筋注でも相当の効果

です

一言で表現すれば、最強のカテコラミンです

よく使うのは心肺蘇生、アナフィラキシーショックの際などでしょう

あまりに強すぎるので基本的に持続投与することはありませんが、リソースの限られた途上国などではノルアドレナリンの代用として持続投与も行うようです

バソプレシン(ピトレシン®︎)

特徴は

・強力な血管収縮作用

です

カテコラミンではありませんが、昇圧薬として使われます

Crit Care Med. 2003 Jun;31(6):1752-8.

ショックが遷延するとバソプレシンが枯渇することが表のように示されており、ホルモンの補充というニュアンスで投与します

特にVASST trialでNAD vs NAD+ピトレシンで死亡率に差が付かず、NADの必要量を減らせる可能性が示されました

N Engl J Med. 2008 Feb 28;358(9):877-87.

SSCG 2021でも推奨されており、敗血症性ショックではNADに追加して投与します

Crit Care Med. 2021 Nov 1;49(11):e1063-e1143.

その際にはバソプレシンの減量が循環をより不安定にするため、NADから先に減量していくのがポイントです

なお敗血症doseの0.03U/minはNAD 0.075γ相当になるようですね

古典的にはこの10倍量(0.1-0.4U/min)で食道静脈瘤出血に対して使用していたようですが、心筋虚血や腸管虚血イベントも多かったようです

敗血症の時には0.03U/minで開始し、そこからは増量せず減らしていくのが正しい使い方になります

さて今回は昇圧薬の中でも、血管収縮作用のあるものをメインに扱いました

次回は強心作用のある薬剤についてお話していこうと思います

ではでは

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