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免疫チェックポイント阻害薬による心筋傷害 | Dr.Azukii's Blog

免疫チェックポイント阻害薬による心筋傷害

論文関係

本日は先日経験した免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)による心機能低下について話そうと思います。

いわゆるirAE(immune-related Adverese Events)と呼ばれる疾患概念の一つで、主にICI投与により引き起こされる副作用を指します。

神経、呼吸、心臓、内分泌、腎臓、皮膚、消化器、血液凝固などなど、irAEの対象臓器は様々なものがあります。

中には生命予後を規定する致死的なものもあるため、ICI投与中の方では常に鑑別に入れておくことが重要でしょう。

今回はESC 2022のガイドラインに一部記載があったので、そちらを読んだ内容を共有致します。

2022 ESC Guidelines on cardio-oncology developed in collaboration with the European Hematology Association (EHA), the European Society for Therapeutic Radiology and Oncology (ESTRO) and the International Cardio-Oncology Society (IC-OS)

Alexander R Lyon, Teresa López-Fernández, Liam S Couch, et al.

Eur Heart J. 2022 Nov 1;43(41):4229-4361. 


免疫チェックポイントはT細胞が他の細胞に接触した際に、T細胞の活性化を抑制するために放出されるタンパク質のことである。ICIはこれらのチェックポイント結合を阻害することにより、「オフ」のシグナルを抑制してT細胞を活性化することで癌細胞を殺傷する。

時にICIは合併症をきたし、その中でも心血管系のものであると致死的になることもある。

心血管系の合併症として記載されているものは以下の通り。

早期に発症した最大の症例報告は122例のケースシリーズで、初回投与から中央値で30日で発症し50%が死亡した。

一方で90日以降の晩期合併の場合にも、心不全や死亡のリスクが高いとされている。

心血管系の合併症としては心筋虚血、房室ブロックなどの不整脈、タコツボ症候群、心不全、心筋炎、DVTなどがある。

複数のICI使用、ICIと心毒性のある薬剤使用、心血管系以外の合併症、過去の心血管系疾患の既往がある場合にはハイリスクとなり、投与前のTTEまで行うことが推奨されている。

具体的な有害事象として、心筋炎が致死的になりうる。多くは初回投与の12週以内に起こるが、20週以降で発症することもある。

診断自体は心筋傷害(トロポニン)や心電図変化を確認し、虚血性心疾患の除外を行う。

治療としては循環動態が不安定(致死性不整脈や完全房室ブロックなどを含む)ならば、高容量のメチルプレドニゾロンを投与すべきである。

詳細は以下のフローの通りになる。

具体的には500-1000mgのメチルプレドニゾロンを1日1回静注し、3-5日間は投与を行う。なるべく早期に投与することで、死亡を含むMACE(Major Adverse Cardiovascular Events)を減らすことができる。

もし臨床的に改善が見られれば内服のプレドニゾロン1mg/kg(最大80mg/day)に切り替えることが推奨される。

臨床的な改善とは24-72時間のうちにピークから50%以上トロポニンが低下することや房室ブロックや心機能低下が改善することを指す。

ステロイドの漸減は臨床的な改善を確認しながら、10mg/週ずつの減量が考慮される。

プレドニンが20mgまで減らせれば左室機能やトロポニンを再検した上で、5mg/週ずつ減量していく。

そして5mgからは1mg/週ずつ減量していく。

もし仮に臨床的な改善が見られなければ、ステロイド治療抵抗性のICI関連心筋炎の可能性がある。この場合にはセカンドラインの免疫抑制薬が考慮されるべきである。


いかがでしたでしょうか。

頻度は少なく自分も経験するのは初めてでしたが、重度の心原性ショックをきたしておりかなり危険な状態でした。

幸いIABPやDOBなどを使用し、代償性の頻脈が次第に改善して1回拍出量も担保されるようになった症例でした。

DOB使って頻脈が改善するってたまにありますが、良いことしている感が分かりやすくあって気持ちいいですね。

本日はここまでです。ではでは。

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