腹臥位療法と循環動態の関係

論文関係

今日は腹臥位療法と循環動態への影響についてです

〈本論文の一言まとめ〉

腹臥位療法は肺血管抵抗を下げるので右心には良い

循環不全の原因が右心不全かどうかで、腹臥位療法の影響は変わる

Antoine Vieillard-Baron, Florence Boissier, Antonio Pesenti

Hemodynamic impact of prone position. Let’s protect the lung and its circulation to improve prognosis

Intensive Care Med. 2023 Feb 23.

血行動態の崩れているARDS患者の約半数は、右室機能障害が原因

その理由は微小血栓、肺血管収縮、内皮機能障害などによる肺血管床の喪失による肺血管抵抗の急激な増加

残りの半数は過度の経肺圧による換気の影響や、ARDSに伴う敗血症により循環不全をきたしている

またhigh PEEP戦略が推奨されているが、ガイドラインでもPEEPにより血行動態の悪化が疑われる場合には過度のhigh PEEPを避けることを推奨している

腹臥位療法はPF比<150mmHgのARDSの予後を顕著に改善させることが指摘されているが、血行動態との関連はあまり考慮されていなかった

腹臥位療法は人工呼吸器誘発性肺損傷(ventilator-induced lung injury:VILI)を減らし、右室不全の危険因子を減らすことで血行動態も改善させる

Proseva trialでは腹臥位療法群で心停止の発生率が低い事が報告されたが、右心機能に関する情報は無かった

その後に肺血管抵抗が全ての症例で低下し、半分の症例では心係数が上昇したという報告もあった

特に腹臥位療法前に、右室が拡張しており右心の後負荷が既に高めである事が示唆されていた

他にも重症ARDS患者でAcute core pulmonale(ACP)を発症した患者の腹臥位療法で、右心負荷が改善した報告もみられた

なおACPとは突然の肺血管抵抗の上昇に伴い生じた、急性の右心不全の事を指す

Curr Opin Crit Care. 2009 Feb;15(1):67-70.

特にPF比が150mmHg未満であることがACPの発症に関連しているとされる

また腹臥位療法でPaCO2も改善するが、PaCO2>48mmHgの換気不全もACPの発症に関連している

さらに腹臥位療法で均一な換気が入ることで肺コンプライアンスが改善し、プラトー圧やdriving pressureを下げることも右心負荷の改善に繋がる

あるいは酸素化の改善により、PEEPを下げる事ができるのも右心負荷の改善になるためメリットになる

ただし、腹臥位療法で血行動態が悪化することもある

これは原因が右心負荷ではなく、敗血症に起因している場合に起こる

不安定な血行動態は腹臥位療法を避ける理由になるが、特に右心機能が低下しているかどうかが重要であるため仰臥位の時点でその評価を行うことが重要になる


興味深い内容でした

確かに腹臥位療法で循環悪くなる人もいますが、理論的には右心に良い事してるはずなのに、、、とは思ってました

原因が敗血症(要はcardiogenicではなくdistributive shock)であれば、IVCも潰すのでvenous returnも減るし体位変換の害が大きいという事ですね

次からは右心機能はどうだろう?という目で評価してから、腹臥位療法を導入してみるようにします

本日はこの辺りで、ではでは

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