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腫瘍崩壊症候群 | Dr.Azukii's Blog

腫瘍崩壊症候群

論文関係

本日は腫瘍崩壊症候群(Tumor Lysis Syndrome)についてのreviewです

古いNEJMのものですが、ちょうど先日に診療する機会があったので振り返っておこうと思います

〈本日の論文の一言まとめ〉

腫瘍崩壊はリスクに応じて早期に透析やラスブリカーゼの投与で介入を検討する

特にAKI合併していれば要注意!

The tumor lysis syndrome

Scott C Howard, Deborah P Jones, Ching-Hon Pui

N Engl J Med. 2011 May 12;364(19):1844-54.

☆総論

腫瘍崩壊症候群は血液腫瘍を診療していて遭遇する最も一般的な緊急事態。非ホジキンリンパ腫または急性白血病の患者で頻度が多い。

腫瘍崩壊症候群は自然とあるいは治療に反応して、腫瘍細胞が内容物を血管内に放出し高尿酸血症、高K血症、高P血症、低Ca血症などの所見を示し、腎機能障害、不整脈、痙攣や臓器傷害による死をもたらすこともある。

☆定義

検査学的腫瘍崩壊症候群→治療開始前3日以内または治療開始後7日以内に、高尿酸血症、高K血症、高P血症、低Ca血症のうち2つ以上の代謝異常がある

臨床的腫瘍崩壊症候群→検査学的項目を満たしつつ、AKI、痙攣、不整脈や死亡を伴っている

☆病態生理

腫瘍細胞が溶解すると、K、P、核酸が放出され、ヒポキサンチン、キサンチンを経て最終代謝産物の尿酸になる

高Kで不整脈、高Pは二次的な低Ca血症を引き起こしテタニー、不整脈、痙攣を引き起こす可能性があり、また臓器(腎など)にリン酸カルシウムとして沈殿する

尿酸は腎内で結晶化するだけでなく、腎血管収縮、腎血流低下などの機序でもAKIを誘発する

腫瘍崩壊はサイトカイン放出によりSIRSをきたす

体のホメオタシスで腎排泄が鍵になり、尿酸、キサンチン、リンを除去する主要な手段だが、これが間に合わないと腫瘍崩壊症候群になる

☆疫学

腫瘍崩壊症候群の発生率と重症度は腫瘍の大きさや崩壊の度合いにより異なる

リスク因子としては

・腫瘍の大きさ

原発の大きさだけでなく、臓器浸潤で肝腫大や脾腫などがあるのもリスク

また骨髄は成人で1.4kgあり、骨髄が白血病細胞に置き換わっているとリスクが高い

・細胞増殖率が高い

LDHが高値であれば、増殖が速いのでリスクが上がる

・治療感受性

治療に対して感受性が高ければ、それだけ細胞溶解率が高い

・治療強度

初期治療の強度が高いほど腫瘍の溶解率が高くなる

例えばプレドニン単剤で1週間、などと緩めのレジメンで開始したほうがリスクは下がる

・全身状態

元々腎機能障害がある、脱水がある、血圧が低いなどがあると排泄が低下するためリスク上がる

☆リスク分類

腫瘍崩壊の起こるリスクを見極め、治療強度や予防のラスブリカーゼなど検討する

☆マネジメント

・AKIの予防

腎血流を保ち、アシデミア、乏尿を防ぐため、輸液を行う

リスク高い患者では利尿薬も併用することもある

アロプリノールやラスブリカーゼの使用による尿酸レベルの低下は腎機能を維持または改善し、二次的な効果として血清Pを低下させることができる

アロプリノールは尿酸の形成を防ぐが、既存の尿酸には効果が無い

そのため尿酸が下がるまで2日以上かかる場合があり、その遅延により尿酸腎症が発症することがある

あるいはアロプリノールによる治療にも関わらずキサンチンが蓄積し腎症をきたす可能性がある

ただキサンチン濃度は定期的に測定は出来ないので、影響は不明

一方でキサンチンの蓄積を防ぎ、尿酸を直接分解することにより、ラスブリカーゼはアロプリノールよりも腫瘍崩壊症候群の予防と治療に効果的

RCTでもラスブリカーゼの方が血清Pを低く留め、クレアチニン濃度の低下がみられた報告もある

尿のアルカリ化は尿酸の溶解度を増やすが、リン酸カルシウムの溶解度は低下する

高P血症は高尿酸血症より補正が難しいので、ラスブリカーゼ使えるような患者では尿のアルカリ化を避けるべき

ラスブリカーゼが使えない患者で尿アルカリ化が腎機能障害のリスクを下げるかは不明

少なくとも尿アルカリ化するなら高P血症が出現した際に中止する必要がある

ラスブリカーゼは腫瘍崩壊のリスクが高い患者で第一選択として推奨されているがリスクが中等度の患者ではコンセンサスの一致がない

・AKIの管理

腫瘍崩壊での腎代替両方の適応は通常のAKIと同じだが、Kの放出が急速に起こるため閾値は低めで良い

尿酸の透析クリアランスはあまり知られていないが、ラスブリカーゼが使える国なら透析適応となることはほぼ無い

・不整脈の予防

高Kは突然死のリスクがあり、摂取を制限し頻回なフォローを行う

低Caは高Pに続発するが、基本的には血清Pを制御することが治療になる

カルシウムの補充も行うが、最低限にとどめる

でないとリン酸カルシウムの結晶化がより進んでしまうため

なお無症候性の低Ca血症なら治療はしなくて良い

・モニタリング

尿量は特に重要なポイント、尿量と体液バランスは頻回に評価する

タイミングもレジメンにより異なる

・腫瘍溶解率の低下

リスクが高い患者では低強度の初期治療を受けることもある

細胞の溶解が遅くなると、代謝産物が蓄積して臓器損傷を起こす前に除去が間に合う

この戦略では進行したB細胞性非ホジキンリンパ腫またはバーキット白血病の場合、治療を開始する前の1週間低容量でのシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロンによる治療が行われた

同様に多くの小児のALL症例ではプレドニゾロン単剤療法を1週間受けている


ということで、腫瘍崩壊症候群についてでした

自施設のプラクティスでは透析必要性が無くとも少し早めにCHDFで緩やかに回しておき、必要時にhigh flowにしたり日中だけHD回したりという管理を行なっています

またラスブリカーゼ(ラスリテック®︎)は保険では投与期間は最大7日間とありますが、大体1回入るとかなりの効果になります

根本的なところに介入するので原則効かない人はいないはずで、数回投与で終わることが多いです

頻度の多い疾患ではないので、次にきた時にスムーズに対応できるよう勉強しておくこととします

今日はこの辺で、ではでは

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