敗血症でのAKI

論文関係

本日は敗血症に伴うAKIについてです

日常的によく出会う病態ですが、一体何が起きているのでしょうか

〈本論文の一言まとめ〉

敗血症関連急性腎障害(Sepsis-associated acute kidney injury :SA-AKI)に対して行える治療の基本は、適切な心拍出量や臓器灌流の維持

メイロンやアルブミンは患者層によってはデータがあるが、いずれも限られたエビデンス

Alexander Zarbock, Mitra K Nadim, Peter Pickkers, et al.

Sepsis-associated acute kidney injury: consensus report of the 28th Acute Disease Quality Initiative workgroup

Nat Rev Nephrol. 2023 Feb 23.

敗血症関連急性腎障害(Sepsis-associated acute kidney injury :SA-AKI)は重症患者によくみられ、CKD、心血管イベント、死亡リスク増加などの有害転帰と関連している

敗血症発症から7日以内のAKIをSA-AKIと定義することが多いが、広く知られたものはない

一般的には敗血症(Sepsis-3)とAKI(KDIGO)の定義を同時に満たすこととされている

Sepsis-induced AKI(SI-AKI)はSA-AKIの亜型であり、区別は難しい

間接的な結果として生じるAKIはこれらの概念から除く(抗菌薬誘発性腎障害、腹部コンパートメント症候群での腎障害など)

SA-AKIの発症機序には複数のものがある

例えば腎臓の炎症、補体の活性化、RAS系の調節障害、ミトコンドリア機能障害、微小なものも含む循環障害など

この不均一性が臨床試験での評価をより複雑にしている

PAMPsやDAMPsの放出が免疫系の調節不全の活性化に繋がる

非常に高用量のNADは微小循環を悪化させ、機能障害を引き起こす可能性がある

また組織耐性機序としてミトコンドリアのオートファジーなどはPAMPsやDAMPsなどの組織損傷から保護することができる

SA-AKIにおける管理

・体液管理

体液管理は、適切な心拍出量の維持のために重要

血行動態の指標としてのCVPの有用性は不明で、適度な相関しかない

最近発表されたCLASSIC trialではICUでの敗血症性ショック患者の転帰について輸液制限が優れていないことが示された

また他にもCLOVERS trialも結果が待たれる(こちらにて別途記事作成しています)ところ

・薬剤関連

あるいは敗血症での蘇生にアルブミンを投与することについてはデータは限られている

SAFE trialおよびALBIOUS trialにおいてサブグループ解析で、晶質液の追加としてのアルブミン投与が死亡率の低下と関連している可能性が示唆された

しかしこれは事後解析のため、解釈には注意が必要

現在、ALBumin Italian Outcome Septic Shock-BALANCED trial(ALBIOSS-BALANCED)が行われており、そちらの結果により敗血症患者での転帰を改善するか検討する

HESの使用については、晶質液と比較して死亡率上昇などの有害転帰に関連している

もはやEUでは使用が停止されており、SA-AKIでの蘇生にHESを使用することは推奨されない

BICAR-ICU trialではAKIを伴う重症の代謝性アシドーシス(pH<7.20)に対するメイロンの投与が主要な複合転帰および28日死亡率を改善させた

・血液浄化

血液浄化は酸塩基平衡や電解質異常、体液バランスを制御することで、多臓器不全の改善を可能とするかもしれない

機序としてはエンドトキシン、サイトカインなどの炎症性因子を除去することで、敗血症における免疫調節不全の制御を促進する可能性がある

ただ臨床試験の結果より、緊急透析の適応が無い状態で血液浄化を開始することの利点は示されていない

同様に血液吸着療法としてポリミキシンB吸着も生存利益を示すことは出来ていない


さて今回の論文はいかがでしたでしょうか

内容としては集中治療領域でよく言われる「基本的な循環管理に努め、余計な事は何もしないのが一番」というところに尽きます

これって凄い大事なことで、根拠のない不要な検査や処置は良い事した気持ちになりますが(自分はならないけど)、結局のところ副作用やら合併症やらで損する事がほとんどです

Less is more、choosing wiselyなんて概念も広まっていますが、まさにその通りですね

一方で敗血症での血液浄化なんて正直エビデンスはボロボロなんですが、存在意義を主張する際に言われるのが、「臨床研究に組み込めないような患者層に対して、生理学的に正しいことを進めたい」という内容です

部分的には正しいと思います

データを踏まえた上で、生理学的に患者を良い方向に向かわせる介入を行う

大事なのは頭を柔らかくして、エビデンス≠EBMの気持ちで目の前の症例に一つ一つ向き合うことですね

ただ大前提となる知識や明らかに間違っている、正しい介入についての理解は深めておきたいですね

ではでは

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