今日はNEJMより発表になったCLOVERS trialについてです
〈本論文の一言まとめ〉
敗血症性ショックの初期蘇生は必ずしも30ml/kg入れなくてもよさそう
患者に応じて輸液必要性みながら、適宜早めに昇圧薬を末梢から使おう
The National Heart, Lung, and Blood Institute Prevention and Early Treatment of Acute Lung Injury Clinical Trials Network
Early Restrictive or Liberal Fluid Management for Sepsis-Induced Hypotension
This article was published on January 21, 2023, at NEJM.org.
CLOVERS:Crystalloid Liberal or Vasopressors Early Resuscitation in Sepsis
敗血症性ショックでは血管内volumeの低下により循環障害をきたします
そのために輸液を行うことでマクロな循環(SVやCO)、微小循環(毛細血管灌流)を改善させます
しかし輸液により希釈性凝固障害や浮腫により臓器障害をきたすことも報告されています
そこで昇圧薬を使用しますが、逆に腸管虚血や心負荷、催不整脈性などが問題になります
そのため輸液と昇圧薬を併用してきましたが、この組み合わせに関しての最適解はまだ出ていません
初期蘇生として大量輸液をすることが一般的でしたが、こちらは次第に過剰輸液の害が報告されるようになり疑問視されるようになりました
SSCG2021でも30ml/kgの初期蘇生が推奨度strong recommendationからweak recommendationに格下げされたのも記憶に新しいですね
元々の根拠も観察研究レベルであり、絶対に30ml/kgは負荷しようというのは時代錯誤になりつつあります
PICOは以下の通りです
P:感染により1L以上の輸液後も血圧低下(sBP<100mmHg)がある成人患者
I:輸液制限群、輸液負荷が2Lを上限として適宜ノルアドレナリンを使用する、適宜レスキュー輸液は使用可
C:通常輸液群、ランダム化から3時間以内に2Lを負荷、以降も必要時には500ml負荷し、適宜レスキュー昇圧薬は使用可
O:90日後死亡
除外基準で時間が経っている(4時間以上)症例や輸液総量が3000mlを超えている症例があるのもポイントですね
最終的にはアメリカの60施設より合計1563人、輸液制限群が782人、通常輸液群が781人に割り付け
患者背景は60歳くらいで男性がやや多い、基礎疾患はやや制限群で心不全が多いですね
重症度は大きくは変わらなそうです
ランダム化前に約2L負荷されており、20%で昇圧薬が開始されていました
気になる輸液量ですが
6時間後には制限群では500ml、通常群では2300ml(Δ-1800ml)
24時間には制限群では1267ml、通常群では3400ml(Δ-2134ml)
結局ランダム化前も含めると制限群では3300ml、通常群では5400ml(Δ-2100ml)
ちなみに多かったのは乳酸リンゲルのようです
結果ですがprimary outcomeには差はつかず
Death before discharge home by day 90 (the primary outcome) occurred in 109 patients (14.0%) in the restrictive fluid group and in 116 patients (14.9%) in the liberal fluid group (estimated difference, −0.9 percentage points; 95% CI, −4.4 to 2.6; P = 0.61)
他のsecondary outcomeも差はなし
やはり輸液は制限される時代になるのでしょうか??
本研究で気になったのは輸液制限群の昇圧薬は第一選択がノルアドレナリン、第二選択がアドレナリンは実臨床に合わなそうですね
でもappendixみるとアドレナリンはほぼ使用ありませんでした、関係ないかもです
あとはレスキュー輸液についてですが、エコー項目にIVCもありますが最大径5mm以下とのことで「ベコベコ」の場合のみと配慮したのでしょうか
過去の研究で類似のものにClassic trialがあります
これも輸液制限群と標準輸液群で差がなかったRCTですね
こちらはランダム化前に3L負荷されてしまっていることで、結局day5でも二群での輸液負荷の差が800ml程度しかありませんでした
今回は輸液量に差が付いていますが、90日死亡には差はありません
一方で今回はそもそもの死亡率の低さが気になりますね
Classicでは42%ほど、今回は14%とかなり開きがあり、重症患者をきちんと拾い上げていたのかが疑問です
また結局通常輸液群も20%はランダム化前に昇圧薬が開始されており、輸液量が少なくすんでいる可能性もあります
sub groupで気になったのがESRDですね、差はありませんが制限群の方が良さそうな雰囲気、、、
おそらくvolume overしている患者が多かったのでしょうかね
結局のところは
・患者の背景疾患や経過に合わせて輸液必要性をみながら負荷していく
・その間に早期の昇圧薬使用(特に末梢から)は害にならない
ってところでしょうか
なので30ml/kgにこだわることは更に減っていきそうですね
必要なら入れる、シンプルな結論にはなりそうです
・・・それが難しいんですけどね笑
入れすぎ注意、入れなすぎ注意の精神で明日からも輸液していこうと思います
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