ICUにおいて特に長期になると四肢が痩せてきたなあ、と感じることは少なくありません
感覚的には分かりますが、これを定量化するのは難しそうですよね
今回はCritical CareよりICUでの筋肉喪失率についての初めてのシステマティックレビューです
〈本論文の一言まとめ〉
ICUでの筋肉喪失量を計測するのは難しいが、最初の1週間で1日あたり2%の骨格筋が失われていく可能性がある
Crit Care. 2023 Jan 3;27(1):2.
The rate and assessment of muscle wasting during critical illness: a systematic review and meta-analysis
Brigitta Fazzini, Tobias Märkl, Christos Costas, et al.
PMID: 36597123
重症患者においては1週間で15%以上もの筋肉を失う可能性があると報告されています
しかし筋肉喪失量に対してのデータをまとめたものはなく、今回システマティックレビューが行われました
n=1773の患者の筋肉喪失率が調査され、筋肉量の評価は85%で超音波、15%でCTを用いていました
平均すると重症患者はICU入室の最初の1週間で1日あたり、骨格筋の約2%を喪失することが示唆されました
ICU acquired weakness(ICU-AW)のリスク因子としては臓器障害、敗血症、長期間の人工呼吸器管理、不動が挙げられています
ただICU-AWは包括的な用語であり、一連の神経筋障害に伴う筋力低下を表したもので病態生理は完全には解明されていません
ただ特徴としては免疫応答の亢進、エネルギー機能不全、タンパク質バランス変化、神経変性、筋肉喪失があります
重篤な病態では不動であったり、異化が亢進したりしてタンパク質が減少し筋肉が減少します
あるいは筋肉の機能不全も関与しており、それはATP産生低下に繋がる微小循環障害での酸素供給減少やミトコンドリア機能障害、イオンチャネルの障害などの複数の要因が影響しているようです
これらの複合的な機序からICU-AWは起きています
本研究はその筋肉の減少量を大腿直筋を測定することで評価しました
ただこの測定方法に応じての筋肉量の評価はかなり差がありそうで、システマティックレビューでの大きな欠点になりそうです
頻回のCTは非現実的で、エコーが良いのでしょう
ただ術者による検出力の差があり、そこが課題にもなりますね
日常臨床でも計測しても良いのですが、そのデータをどう活かすかが難しいですね
結局は離床・リハビリ推奨とはなってしまいそうです、もちろん臨床研究のテーマとしては面白そうですけれども
かなり奥深いテーマなのでまた掘り下げていきたいと思います
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