本日はCFPM脳症というテーマで話していこうと思います
使用頻度の高い抗菌薬ですが、使用する際の合併症に脳症があることに注意が必要です
どのような機序なのか、どれくらいの頻度なのかなどみていきます
〈本論文の一言まとめ〉
CFPMは腎機能障害がある場合に半減期が大きく延び、脳症をきたすリスクがある
特にICUではCFPMで治療された患者の最大15%にこのような副作用をきたす恐れがある
Cefepime-induced neurotoxicity: a systematic review
Lauren E Payne, David J Gagnon, Richard R Riker, et al.
Crit Care. 2017 Nov 14;21(1):276.
CFPM脳症は腎機能障害、重症患者でBBBが障害されていると起こりやすい
本当に必要な症例に絞ってのCFPM投与が好ましい
CFPMは血液脳関門を通過し、濃度依存的なGABA拮抗作用を示すことで神経毒性をきたす
症状には意識レベルの低下、脳症、失語症、ミオクローヌス、痙攣発作、昏睡が含まれる
CFPMで治療されたICU患者の最大15%がこのような副作用を経験し、腎機能障害や過剰投与、既にある脳損傷、血清CFPM濃度の上昇がリスク因子になる
FDAの投与推奨量はクレアチニンクリアランスに依存しているが、ICUでは腎機能障害の頻度が高く定量化が難しいことも誘因になる
また炎症状態に伴い、ICU患者はBBBの破綻をきたしやすく、中枢神経系へのCFPMの流入が大きくなる
通常は血清の約10%がBBBを通過するが、腎機能障害、蛋白結合の低下、有機酸蓄積の増加などにより、最大で45%にまで増加する可能性がある
今回はデータベースより1980年1月-2016年1月のデータを集めた
1つの前向きコホートを除き、他は全て後ろ向きの報告であり、123の文献が該当した
26%は適切に投与され、48%は過剰な投与になっていたが、適切な投与と考えられていた群で神経症状のあった患者は血中濃度が測定され全員高値であった(≧20mg/L)
CFPMによる神経症状は開始後中央値で4日(IQR 2-6day)で確認された
脳症患者は一般的に腎機能障害があり(80%)、意識レベルの低下(47%)、ミオクローヌス(42%)、錯乱(42%)、失語症(15%)、痙攣発作(13%)、興奮状態(11%)が一般的な症状だった
脳波検査の結果、施行した患者全員に異常所見がみられた
治療としてはCFPMの中止、抗痙攣薬の導入、血液透析があり、介入後中央値2日(IQR 1-3day)で改善した
これらを防ぐためにはリスク因子に応じた、早期発見が必要不可欠になる
CFPMの約85%は未変化のまま腎臓から排泄されるため、腎機能障害により半減期が劇的に増加する
血中濃度が20mg/Lを超えることで過剰なCFPM曝露と定義される
生物学的にはCFPMはGABA受容体に競合的に結合し、中枢性興奮を引き起こすとされるためベンゾジアゼピンなどのアゴニストにより治療できる
βラクタム系のてんかん発作誘発は広く知られているが、CFPMはMEPMより最大10倍もの神経毒性リスクがある
さて、いかがでしたでしょうか
臨床的にしばしば問題になりますが、定まった症状や診断基準はなく疑ったら中止するというのが一番の治療ですね
おそらく同定できていないだけでCFPMが入るような重症患者であれば意識も悪い方も多いですし、結構な患者数がいるんじゃないかと思っています
脳症リスクという観点から自分は少しでも意識レベルに懸念がある人や腎機能悪い人なら、目的がP.aeruginosaカバーの場合CFPMは避けてTAZ/PIPCを選択しています
CFPMの利点としてはEnterobacter、Citrobacter、Serratia、MorganellaなどでAmpC過剰産生した際には、治療の第一選択として使えるというところでしょう
ですので、自分の考えでは発熱性好中球減少症で意識は良いけど腸内細菌属のカバーが必要な場合などは、CFPMを積極的に選択します
ただ他はやはりCFPM脳症の懸念もあるので、使うことはありません
臨床的に問題になるのはCTRXなどの第3世代セフェムで、これらのAmpc過剰産生リスクが高い菌の治療をしているときに耐性化してしまった場合だけと言われています
↓こちらに詳しく書いてありますので、ぜひご参照ください
自分が知る範囲ではP.aeruginosaまではカバーしましょう、というものは多いですが、Ampcまでというのは知らないです(あったらごめんなさい)
なので重症患者でAmpcすら外せない、という人なら使いますが、そんな時はカルバペネムにしていますかね、、、
まとめると自分からCFPMを選ぶとしたら、カルバペネムまでは、、、と思うようなFNと緑膿菌カバーしたい院内肺炎の一部ですかね
ただ中にはこれらの菌が出たらルーチンでCFPMを選ぶというプラクティスもあるそうです
どちらを選ぶかのトレードオフですが、また調べてみようと思います
本日はこの辺で、ではでは
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