本日はStanford A型の大動脈解離とSTEMIが合併していた際に、先にPCIに行くべきかオペ室へ急ぐべきかについて話します
先日、このような症例があり議論になりました
やはりA解離であれば基本戦略は根治治療のため1秒でも早くオペ室へ向かうことです
しかしmalperfusionで冠動脈を噛んでいる場合、可能であれば先にPCIを先行させ心筋を救ってからの方が良いのでは?という議論です
確かに術後の立ち上がりを考えると、救えるなら心筋救いたいところですが、、、ガイドラインなどではどのような位置付けになっているのでしょう
☆AHA2010
特にcoronary malperfusionについての記載はなし
待てない状況なら即座にオペへ、そうでない場合には可能ならCADのリスクに応じてcoronary評価を検討
ただこれはmalperfusionとしての意味よりは既知の病変があれば、一緒にCABGしましょうってニュアンスですね
このあたりは実際の現場とかなり乖離していそうな印象です
☆ESC2022
malperfusionについては腸管虚血あればステント先行などでの血行再建もあり
coronaryについては記載ありませんでした
ただ「This strategy rapidly mitigates the risk of aortic rupture and corrects any associated coronary malperfusion, AR, and the sequelae of tamponade.」とあり、coronary malperfusionは位置付けが変わっていそうです
特にPCI先行などとの併記も見つけられませんでした
☆up to date
Prompt revascularization and myocardial protection are paramount in these patients.とありますが、具体的な方法は記載無しでした
☆2020年版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン
本邦ガイドラインには記載がありました
迅速な外科的介入が出来ない場合には先にPCIも考慮しても良いという事でした
「しかしながら、急性A型解離における術前冠動脈ステント留置は容易ではない。偽腔へのカテーテル迷入やフラップの動きによるカテーテル操作の制限により、治療が不成功に終わることもある。また術前に冠動脈ステント留置を先行すると、大動脈修復術を遅延することになり成績悪化にもつながる。冠動脈malperfusion合併例に対し、冠動脈ステント留置を先行させるか否かは各施設の状況により判断される。急性A型解離の存在に気づかずに、急性心筋梗塞の診断で緊急冠動脈造影検査が開始されることがある。この場合手術準備を開始すると同時に、その場で冠動脈ステント留置を行うことができれば、迅速かつ有効な治療が可能となる。」
と記載されており、やはり全例で行うのは危険でしょう
調べてみると本邦からの報告ではPCI先行症例も多く、このあたりはアクセスとハートチームの関係性が大きそうです
Gen Thorac Cardiovasc Surg.2018 Nov;66(11):621-625.
おそらく日本のカテーテルアクセスの良さがあるためでしょう
どちらを優先するかでショックで無ければ、先に生命予後を規定するmalperfusionの介入(coronaryやceliacなど)を考慮し、タンポになってきているなどであれば救命優先で最速でオペ室という流れが妥当な印象です
まとめると
心筋や腸管を救う処置を行う時間的余裕がある→PCI含めた処置の先行を検討
余裕が無い→1秒でも早くオペ室
という感じです
ただ「余裕がある」A解離とは一体、何を根拠に規定するのかが疑問ではありますが、、、
例えば病歴から発症より時間が経っている場合などでしょうか?
あるいはタンポになっていなければ良しとしてしまっていいのでしょうか?
スッキリした答えは出ませんが、本邦においては先にPCIという選択肢もあり得るという事で注意していこうと思います
本日はこの辺りで、ではでは
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