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心不全での内服薬 | Dr.Azukii's Blog

心不全での内服薬

論文関係

今日は心不全、特にHFrEFでの薬剤管理についてです

〈本論文の一言まとめ〉

HFrEFでの心保護薬はFantastic Fourの4剤(ARNi、βB、MRA、SGLT2i)がkey drug

少量でも良いのでなるべく早く、多くの種類を導入することを目指していく

Rapid evidence‐based sequencing of foundational drugs for heart failure and a reduced ejection fraction

Milton Packer, John J.V. McMurray 

Eur J Heart Fail. 2021 Jun; 23(6): 882–894.


HFrEFに対する薬剤管理は従来Conventional Sequencingと呼ばれ、まずACE阻害薬かARB、次にβ遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、アンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNi)、SGLT2阻害薬の順に追加されていった。

このアプローチではおおよそ6ヶ月程の期間を必要としていた。

一方で本論文ではRapid Sequencingと呼ばれβ遮断薬とSGLT2阻害薬の同時開始、続いて1-2週間後にACEi/ARBをARNiへ切り替え、さらに1-2週間後にMRAを導入する方法を提案している。

こちらでは4週間で導入することが出来る。

この4種類の薬剤がHFrEFの死亡率を減らすことが示されており、治療に耐えられるならば全ての薬剤を組み合わせて投与すべきとされている。

Conventional Sequencingは2つの原則に基づいていた。まず1つ目は臨床試験で効果が示された薬剤の順番通りに導入をしていた。

そのためACE阻害薬/ARB→β遮断薬→MRA→ACEi/ARBをARNiへ切り替え→SGLT2阻害薬という手順を踏んでいた。

2つ目に薬剤を追加する前に最高耐容量まで漸増してから、次の薬剤へ移行していた。

こちらでは時間がかかり、医師と患者に十分な関係性が無いと導入できずに終わってしまうことがあった。

そこでRapid Sequencingを推奨している。

こちらは4種類の薬剤をなるべく早く、4週間以内には開始することを目標としている。そして各薬剤の有効性は他の治療とは独立しているため、歴史的な順番は無視して有効性や安全性を考慮して優先順位を決定していく。優先されるのは4種類を導入することであり、個々の薬剤を漸増することではない。

その手順の推奨は以下の通り。

Step1:β遮断薬とSGLT2阻害薬の同時開始

何を優先すべきかで最も重篤な合併症は突然死であり、それを予防するにはβ遮断薬だろう。これは心室性不整脈を予防し、また4剤の中で左室リモデリングに最も好ましい効果を発揮する可能性が高く、低下した駆出率の改善をもたらす。しかしβ遮断薬を安全に開始するには、患者が臨床的に正常体液量であることを確認する。もし体液貯留がある場合には利尿薬を強化するべきである。

β遮断薬で体液貯留を引き起こす傾向があるため、SGLT2阻害薬と組み合わせることを支持する。SGLT2阻害薬は近位尿細管におけるナトリウムとグルコースの輸送に作用するため、浸透圧利尿を促進する。これは心不全イベントの悪化を軽減する利点となる。またSGLT2阻害薬は糸球体濾過率の低下を遅らせることから分かるよう、腎保護効果もある。他のARBやMRAなどは腎機能を悪化させることが多いため、腎保護的なこの効果は特に重要である。

その結果、これらの組み合わせの認容性は外来治療開始から2週間以内に判断できる。

Step2:ARNiの開始

ARNi(サクビトリル/バルサルタン)は左室の壁ストレスのバイオマーカーであるナトリウム利尿ペプチドを低下させる効果があり、心臓リモデリングに有益な効果をもたらす可能性がある。プラセボと比較するとサクビトリル/バルサルタンの生存効果の大きさはβ遮断薬と同等であった。

アンギオテンシン受容体拮抗薬にネプリライシン阻害薬を追加すると、従来のレニン-アンギオテンシン系阻害効果が増強されるとともに腎機能が悪化する可能性を最小限にすることができる。さらにARNiはMRAでみられる高K血症を防ぐことができる。

主な懸念点としては症候性低血圧で、これは低容量から導入することでリスクを最小限にする。

Step3:MRAも開始

スピロノラクトンとエプレレノンは死亡率を低下させる。しかしMRAによる治療は腎機能を悪化させ、高K血症を引き起こす可能性がある。

なおStep2とStep3の順序は降圧作用に耐えられないと思われる場合(sBP≦100mmHgなど)には、先にMRAを開始しても良い

このようなアプローチにより、迅速に4種類の薬剤を導入できる可能性があるだろう。


言わずと知れたfantastic fourについての説明です

この単語はこちらのeditorialで出された言葉で、アメコミヒーローのタイトルを文字ったユニークな命名になります

Eur Heart J. 2021 Feb 11;42(6):681-683.

これらの薬剤についての知見が集まり、HFrEFに対する有効性はある程度示されています

問題となるのはどのタイミングでどれから導入していくかです

本論文は主に外来での導入を想定しており、その点ではこれで良いかと思います

ただ重症度によってはβ遮断薬の導入がハイリスクであり、入れづらいこともあるでしょう

あるいは入院中の場合はどうでしょうか

おそらく多くの心不全入院は活動度も落ちていることでしょう

SGLT2阻害薬は尿路感染症を増やすとされており、尿道カテーテルはもちろんのこと「オムツをつけているレベル」なら入れたく無いという意見もあります

また食事摂取が不十分であればケトアシドーシスをきたすこともあるため、今回論文と違ってむしろ閾値が高くなる印象です

一方でMRAは懸念される高K血症などは比較的こまめにモニタリングできるため、むしろ閾値を低めに開始できるのでは無いでしょうか

自分の目の前の患者さんの状態に応じて、個別化した導入を図ることが重要ですね

本日はこの辺で、ではでは

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