今日は急性呼吸不全での横隔膜エコーについてです
聞いた事あるけど当てた事ない、って人が多いんしゃないですか?
〈本論文の一言まとめ〉
横隔膜エコーは簡単に当てられて横隔神経麻痺を判別するのに便利
呼吸器離脱や吸気努力の評価に関しては諸説ありそう
Diagnostics 2023, 13(3), 411;
Ultrasonographic Assessment of Diaphragmatic Function and Its Clinical Application in the Management of Patients with Acute Respiratory Failure
Marina Saad, Stefano Pini, Fiammetta Danzo, et al.
呼吸不全患者での横隔膜障害は重症患者にみられる事が知られてきている
この評価にはレントゲン、CT、MRI、エコーなどがある
エコーは非侵襲的で繰り返し行うことが可能なツールであり、横隔膜機能障害を迅速に評価することができる
横隔膜機能障害の重症度は疾患重症度と相関しており、ICU患者の転帰不良の予後因子と示された
横隔膜エコーは1960年代には指摘されていたが、臨床での存在感が出てきたのは1989年のWaitらの研究から
以降エコーで横隔膜の厚さを測定する手法が出てきた
高周波(10-15MHz)プローべを使い、前腋窩線の第7-9肋間で測定する
この測定の部位は検査の再現性という意味で不可欠な項目になる
横隔膜は3層構造で、高信号の壁側胸膜、低信号の筋肉、高信号の腹膜からなる
30代の健常者での横隔膜、最大吸気で最も肥厚する
図では1.6mmから4.2mmへ(Δ162%)
通常の厚さは3.3mmほどだが、身長や体重、姿勢、切り方で変わってくる
肥厚率(今回は4.2/1.6=2.62なので+162%)もばらつきが大きいが、60-200%ほどになる
この値から呼吸器離脱を予測しようとした研究もあるが、決定的なものは無い
あるいは低周波(2-6MHz)プローべで肝臓越しに見る方法もある
吸気努力との関連を研究したものもあるが、こちらも明確なデータは出ていない
実臨床で使えた症例は
①CABG+MVP+AVR後の呼吸器離脱困難
横隔神経損傷による右横隔膜麻痺
上が呼気終末、下が吸気終末
いずれもほとんど動きがない
②褐色細胞腫摘出術後の右横隔膜挙上
右横隔膜の呼気終末の厚さは2.9-4.7mmと保たれており、機能障害は除外された
その後、横隔膜筋電図でも横隔神経の損傷は否定され、過去入院のレントゲンで元からの変化であることが示された
このように横隔膜障害が死亡率の悪化、入院期間の延長、治療失敗につながる可能性が示されており臨床診療で積極的に行っていくべきだろう
エコーは本当に素晴らしいツールでgeneralistならば、特に詳しくなりたい領域です
横隔膜エコーも面白いのですが、いかんせん描出が見にくいのと人によっての差が大きいのが難点ですね
あとは結局、コンセンサスの強く得られたものは少ないので、明らかな所見でないとなかなか決定打にしずらい印象はあります
横隔神経麻痺の基準にはいくつかありますが、シンプルなものには横隔膜厚が吸気/呼気≦1.2で横隔神経麻痺とするものがありました
自分も正直不慣れではありますが、まずは当ててみるところからでしょうか
是非参考にしてみてください
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