ノルアドレナリン0.1Γって他のカテコラミンでどれくらいの量なの?換算出来ますか?

論文関係

今回はCritical Careより血管分布異常性ショックでの第一選択薬となるノルアドレナリンで、他の昇圧薬を力価換算し定量化することについてのレビューです

ちょうど昨今ではノルアドレナリンの供給不足(次はバソプレシン、、、)で騒がれ、おそらく各施設で代替薬の手配に奔走していた中で極めてタイムリーな話題でした

〈本論文の一言まとめ〉

頻用薬の力価はノルアドレナリンを1として、アドレナリン1、ドパミン0.01、フェニレフリン0.06(単位はいずれもΓ)

バソプレシンは力価2.5倍だが単位が違い、0.03U/minであれば0.075Γ相当

ただあくまでMAPしかみておらず、COやSVRなどによって大きく変わりうる指標ではある

論文はこちらです

Crit Care2023 Jan 20;27(1):29.

An updated “norepinephrine equivalent” score in intensive care as a marker of shock severity

Yuki Kotani, Annamaria Di Gioia, Giovanni Landoni, et al.

PMID: 36670410

血圧は通常、交感神経系、バソプレシン系、レニンアンギオテンシン系の3つの機序から維持されています

現在は昇圧剤の用量からショックの重症度を判断するのが一般的で、目標MAPに到達しない血管分布異常性ショックの場合にはノルアドレナリンが第一選択になります

そしてノルアドレナリンでダメなら、バソプレシンを追加で開始することが推奨されています

しかしアンギオテンシンⅡやメチレンブルーといった新規の昇圧薬の使用についての知見は乏しいままです

さらに結局様々な種類の昇圧薬を使っている中で、重症度の評価も難しくなりました

そこでNorepinephrine equivalence (NEE)という他の昇圧薬をノルアドレナリン換算し、定量化する尺度を作ろうとされていました

今回はそのレビューになります

こちらが過去の研究と本研究のサマリーです

研究によりかなり幅は大きそうです

やはり下垂体後葉からのバソプレシン分泌不足、アンギオテンシン受容体の不活化などの様々な機序によるところが影響しているのでしょう

あとは資金や在庫不足でノルアドレナリンが使用出来なくなった場合の定量化にも役立ちます(とてもタイムリーな話題ですね)

あるいは例えばノルアドレナリン0.4Γ以上をカットオフにした時に、ノルアドレナリン0.3Γ+バソプレシン0.03U/minは該当するのかという疑問に答えるのは難しいでしょう

そのため臨床試験を組む際にもこのNEEの概念は評価をされており、あるいはPaO2/FiO比のようにMAP/NEEと比にしてショックの尺度として使おうとする意見もあります

ただ課題もあります

例えばNEEはあくまでMAPを上げるための換算であり、血行動態については考えていません

そのため心拍出量や血管抵抗によってカテコラミン選択は大きく変わります

極端な例では超低心機能で機械的循環補助が入っていてドブタミンを使用している場合、ノルアドレナリンでMAPを上げるとしてもこの循環動態において影響はわずかでしょう

特にこのような心原性ショックの要素が加わってくる症例では、NEEの解釈はさらに難しくなりそうです

これらを踏まえてのNEEがこちらです

注意が必要なのは、指標をMAPにしている点ですね

この力価としてはノルアドレナリンとアドレナリンは同等になります

確かに研究をみるとほぼ同じですが、薬効としては強力なβ作用も併せ持つのがアドレナリンですので使い分けは必要ですね

また使用頻度の落ちているドパミンですが直接比較した大きいRCT(SOAPⅡ)を根拠に力価をノルアドレナリンの1/100としています

力価が低く実臨床ではショットで投与しやすいフェニレフリンですが、敗血症などの研究で0.06倍とされています

こちらはTable1をみてもかなり幅が大きいですね

実臨床でもかなり効く人と全然効かない人がいますし、なんだか納得です

やはりpure α刺激薬な点を反映しているのでしょう

ノルアドレナリンは少なからずマルチチャネル作用なので、その差は大きいですね

気になるのがバソプレシンですが、0.06U/minでノルアドレナリン0.15Γ相当とのことで、比率は2.5倍となっています

単位が違って分かりにくいのですが、いわゆる敗血症doseの0.03U/minでノルアドレナリン0.075Γってことですね

いずれにしても昇圧薬の種類が多様化する中で、このように定量化する尺度は極めて重要と考えられます

おそらく答えは出ておらず、これを持って厳密に換算とすることはまだ難しいと思います

実臨床でも心機能もそうですし、バソプレシンの枯渇が効いている人は今回の数字以上の恩恵を感じる場面も少なくありません

ただフェニレフリンを使う際の目安、といった感じでこの研究の意義は極めて大きいですね

自分が初期の頃に「ネオシネ?とりあえず1mlずつフラッシュ!」と指導され、言われるがままに行っていましたがこのような根拠を若手には提示してあげたいなーと思いました

何よりも世の中がちょうど供給不足のタイミングでpublishされているというのが本当に素晴らしい功績だなあと感動ですね

自分もいつかこのような業績を残せるようになりたいものです

ではでは

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